改正移植法、親族優先初適用
毎日新聞(5/22)から、《 》内は私見。
日本アイバンク協会は22日、聖路加国際病院(東京都中央区)に胃癌で入院し、死亡した50代男性が妻に角膜を提供することになったと発表した。改正臓器移植法で今年1月に施行された親族優先提供の規定が適用されるのは初めてだ。
同協会によると、男性は今年4月、同協会に眼球提供と親族優先提供の意思を登録。提供意思表示カード「献眼登録票」を持ち、同病院に伝えていた。59代の妻は角膜ヘルペスで、同協会に待機者として登録していた。
男性は今月21日午後5時半に心停止し、同午後8時に眼球の摘出手術が終了した。感染症などがないか検査し、医学的に移植可能と確認されると、31日〜6月2日に移植手術が行われる。
妻への移植は片方の眼球の角膜で、もう片方の眼球はその他の待機者に移植される。同協会によると、3月31日現在の待機者は2604人。改正臓器移植法の運用指針で親族は配偶者と親子に限られる。
《妻への隻眼提供は、夫の意思だったのだろうか。私に置き換えれば両眼を妻に移植が願いだが、移植を執行する医師の判断なのだろうか。『臓器提供登録票』には、提供者の意思表示はどこまで認められるのだろうか。カードと共に遺言書を添えて両眼を妻に提供、と書いた場合はどのように裁量されるのだろうか。》
【解説】河内敏康
改正移植臓器法に盛り込まれた臓器提供者(ドナー)から親族への臓器の優先提供は、移植医療への国民の関心を高め、海外に比べて圧倒的に少ないドナーの数を増やすきっかけにもなると期待されている。一方、ドナーの意思で優先提供できる国は日本だけだ。臓器移植の前提である移植機会の公平性を損なう恐れがあり、今後の検証が求められる。
《資力や財力があり、海外での高額な移植治療が受けられたり、コネが使われたりすることへの不信が拭われない限り、その公平性を疑う余地があるようでは移植の「前提」を持ち出しても公平性の説得力は薄い。まして親族優先が海外にはない日本独自のものであることを問題視しても、だから不公平ということになるものではない。日本人には日本人の思想信条、国民性がある。完全無欠の公平性を実行するには海外渡航しての移植を禁じ、金持ちも貧乏人も、それこそ同等で公平な治療が受けられる体制が採られることが必要だ。死に行く人の最後に願う妻の開眼願望を踏みにじるような隻眼でも見えないよりはましだろう、では死者の尊厳を損なうものだ。》
日本では97年に臓器移植法が施行され、国内で脳死での臓器提供ができるようになった。だが、13年間でわずか84例しか実施されていない。09年は脳死での提供が7例、心停止後は98例の計105例だったのに対し、米国では脳死や心停止後のドナーは09年1〜10月で6740例に上った。
《「死」に関しては、日本人の得意な付和雷同とはいかないようだ。》
こうした状況を受け、改正臓器移植法が昨年7月に成立。低迷する国内の移植医療で、せめて親子や配偶者に臓器を提供したいという家族の真情をくむ意味合いの他、移植に国民の関心を向けて普及を図ろうとする狙いから親族優先提供の規定も盛り込まれた。しかし、親族優先提供が盛んになれば、移植医療の根幹ともいえる移植を受ける機会の公平性が揺らぐ恐れがあり、危惧する専門家も多い。
《親子、配偶者間と決められている移植治療に、それ以上の公平性が揺らぐ恐れとは何だ。待機者は家族のいる死んだ人から提供を受けるのだ。もしも死んだ人の家族に移植を待ち望んでいる人がいれば、その家族が優先されるのは当然のことだ。公平性を云々するより先に、親子,夫婦の愛情が先に立って不思議はない。医者の思惑など何の意味もない。心の狭い私には、人に誇れるような博愛の精神など持ち合わせがない。反対に人様からの臓器もいらない。天命を受容して生きるだけだ。》
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