マリン・ルック
毎日新聞(4/1)から、
4月バカではないが、軽い話題をひとつ。
カラー写真で照会されているのがいわゆるマリン・ルックといういでたちなのか。ポパイの着ている例の横縞のシャツを言うらしい。そしてもう一つ、昔のアメリカ映画で見たが、太縞で上下揃えば囚人服でもある。
先ず写真の5人が写ってる若い女性たち、立ち姿のなんと不格好なこと。のっぽカメラマンが意地悪なのか、女たちが写真を撮られていることを意識してか、5人が5人、皆上から見下ろされて写っているから短い足が一層短くなり、特に大きく写っている2人は内股になっているせいで俗にいう醜いガニ股だ。普通、横縞は丈を短く見せることで胴長の日本女性には昔から好まれてきたが、カメラマンのせいで効果ゼロだ。
【閑話休題】
渡辺明日香(共立女子短大生活科学科専任講師)の話を聞いてみよう。
暖かさを感じるにつれて、マリン・ルックが若者たちの間に広まっている。ボーダー柄のカットソーやワンピース、金ボタンの付いた紺のジャケットやPコート、セーラー襟のブラウス、両脇にボタンのついたマリンパンツ、錨や船の舵輪、ヨットやカモメのモチーフ使い、マリンキャップやセーラーハットなどの帽子やデッキシューズ、そして紺Ⅹ白Ⅹ赤のトリコロール配色などなど。今では春夏シーズンの定番スタイルとなった。
マリンとは「海、海軍」の意味であり、マリン・ルックは、水夫や海軍の制服由来のスタイルを指す。なかでも若者に支持を集めてるのがボーダー柄。もともとは、フランスの船乗りが海上で目立つようにと考案されたジャージー素材の衣服がルーツである。これがファッション・アイテムとして広まったのは1920年代(大正の末ごろから昭和5年ごろ)。ココ・シャネルがバカンスで見かけた水夫の着こなしをヒントに女性のためのマリン・ルックを提案した。やがて、映画「勝手にしやがれ」(59年)でのジーン・セバーグのボーダーTシャツとショートヘアの影響や、60年代のイヴ・サンローランのエレガントなマリン・ルックなどにより一層浸透していった。
《ボーダーTシャツとショートヘア、これで分かった、何故写真の女たちが見すぼらしいのか。みっともなく伸ばしたロングヘアのせいだ。ボーダーにはショートヘアこそバランスが取れる髪型なのだ。(写真では1人だけがショートヘアだ。)》
日本では、70年代にトラッド・ファッションが流行したおり、港町・横浜発のハマトラ(横浜トラッドの略)が若い女性に支持されて以降、80年代に一大ブームが訪れる。「Olive」や「JJ」などの雑誌で特集が組まれ、原宿の「セーラーズ」などの人気ブランドが登場した。さらにチェッカーズなどの男性グループにもマリン・ルックの衣装が採用されて話題を呼んだ。アイテムは多岐にわたるが、マリン・ルックの魅力は、明快で爽やかなスタイルという点で共通している。
マリン・ルックのなかでも、日本で馴染みの深いものといえば、女子学生のセーラー服がある。イギリス海軍発祥のセーラー襟は、20年代に女子中高生の制服として導入された。ところが、セーラー服=制服という意識を覆したのは90年代の少女漫画の名作「美少女戦士セーラームーン」による。普通の女子高生がノースリーブ型上着にミニスカートのセーラー服を纏い、悪者と戦う物語が評判となった。2000年代に入ると、ブレザー型の制服の広まりの一方、私服として着る「なんちゃって制服」、コスプレ衣装としてのセーラー服なども登場し、制服のイメージから、ファッションとしてのセーラー襟が広まった。
本来は男性の作業服や、軍服や学校の制服だったものが、誕生から約90年を経て、今ではカジュアル、フェミニン、キャリア、ポップ、モードなど、着る人によってさまざまなテイストに変化している。だがマリン・ルックが与えるスポーティーで溌剌とした印象や、リゾートを彷彿させる爽やかさなどは、その爽やかさゆえ変わらずに、長い間受け継がれている。マリン・ルックを纏った人を見かけると、まるで街が衣替えをしたかのように季節が変化したことを感じさせる。
こうした普遍的な面と、時代の変化に対応できる幅の広さがあるからこそ、マリン・ルックは定番として、そして流行のスタイルとして、もてはやされているのだろう、と仰る。
《それにしても、街を行く若い女たち、どうして皆が皆といえるほど、ハの字にしたつま先で、ガニ股になって歩いているのだろう。》
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