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2010年4月 7日 (水)

ロシア版「子ども手当」

Dscf0116a 毎日新聞(4/5)から、要約と《 》内は私見。

 深刻な人口減少に直面しているロシアが、今年からロシア版の「子ども手当」とも言える母親への出産奨励策(通称・母親手当)の本格導入を開始したという。だが使途が限定されており、受給者の母親からは「利便性に欠ける」と不満も漏れている。政府が目指す「人口増」への切り札となりうるのか、実情を探った。

【母親手当】
 ロシア政府が、07年1月1日から16年12月31日までの間に第2子以降の子どもを出産した母親に資金援助する制度。受給は1度だけで、使途には制約がある。当初25万ルーブル(約75万円)だったが、物価上昇などを勘案し34万3278ルーブル(約100万円)に。09年から「住宅購入資金」に限り前倒しで支援が始まった。手当の正式名称は「母親資産」。長期的な展望に立って使う資金、という意味を込めたものという。

 ロシアの人口は92年の1億4856万人をピークに減少傾向が続いている。出生数は99年を底に基本的に増加しているが、92年以降、出生を上回る死者が出ている。平均寿命は男性61・8歳、女性74・2歳。特に男性は、70代が多い欧米諸国に比べて極端に短い。ソ連崩壊後の社会の混乱や過度のアルコール摂取、医療水準の低さなどが原因とみられている。

 09年の人口は1億4192万人で、前年より約2万人増加し、94年以来15年ぶりの前年比プラスに転じた。だが、09年の死者は出生数を25万人近く上回った。それでも人口が微増したのは、移民などの新規人口が自然人口減をわずかに上回ったためであり、「統計上のあやに過ぎない」(人口問題の専門家)という。政府は90年代、旧ソ連諸国のロシア系住民の帰還を促したが、近年は人口対策の一環として、非ロシア系住民も積極的に受け入れている。

《2008年の日本の平均寿命は、男性79・29歳、女性86・05歳と比べ、特にロシアの男性の寿命は短い。日本の女性が平均して男性の死後6・75年の余生であるのに対し、ロシアの女性のそれは12・4年に亙る孤独な生活が待っている。ロシア政府が母親資産として「住宅購入資金」を前倒しで支援するのは、夫の死後の長いやもめ暮らしを配慮してのことと考えていいのだろう。共産主義時代には考えられなかった私有財産が認められたのだろうか。一方の中国では土地の私有は認められていないが、地上権はあるようで、その権利を売買することに公ではないが目をつむっているようだ。

【閑話休題】
 雪が解け始めた3月末のモスクワの中心部で、2歳半の長女を連れて子ども用の衣料店で買い物をしていた母親(22)は「自宅を買い替えたいし、2人目の子どもが欲しい」と話し、母親手当を「ありがたい」と歓迎した。

 ロシアでは08年、女性一人当たりの生涯出生率が1・49となり、88年の2・13から大幅に低下した。少子化はロシアの人口減少の要因の一つだ。06年、当時のプーチン大統領(現首相)は多産化を奨励する狙いで母親手当を議会に提案し、同年に成立した。第2子以降の子どもを出産した母親に対し、約34万ルーブル(約100万円)を支援する。

 制度導入を推進したオクサナ・ドミトリエワ下院議員(52)=与党系「公正ロシア」所属=は「一般市民にとって相当な額の手当であり、住宅購入の頭金などに役立つはずだ」と説明した。

 1月からの本格運用に対し、既に200万人以上が手続きを始めたという。もともとロシアには「児童手当」があるが、支給額は親の所得に応じて制限があり、国民の間に不満が少なくなかった。例えば、モスクワ市民の平均的な月給3万7000ルーブル(約11万円)では、月額50ルーブル(約150円)と雀の涙ほどしかない。母親手当は、こうした児童手当の穴埋めにも、と導入された。

 また、2歳の長女をモスクワ市内の保育園に迎えにきていた政府機関職員の母親(33)は、先日、長女は高熱で病院にかかったばかりで、何かと出費が絶えないと嘆く。そして、児童手当について「中身のない紙切れよ」と冷ややかな反応を示した。

 母親手当は、子どもが3歳を迎えた後、「住宅購入資金」「大学や専門学校の学費」「母親の年金としての積み立て」の中からいずれか一つを選ぶ仕組みだという。年金積み立てを除けば、支出が生じた時点で申請手続きをすれば、年金機構が住宅販売会社や教育機関に支払いをする。プーチンは使途について「(浪費する可能性があり)母親のためにもならない」と説明している。

《日本で始まる公立高校の授業料無償化も同じように、保護者の浪費を懸念しての政策だろう。授業料は親に支給するものではなく、国が運営する都道府県などに直接交付する仕組みだ。》

 先の児童手当はただの紙切れと言う政府機関職員の33歳の母親は、年金の場合を除いて現金を直接手にすることはないからだ。年金の場合も、もれまでロシアの年金制度はさまざまに改正されてきたことから制度への信頼度は高くなく、本当に将来「還元」されるのか、懸念の声が少なくないのだという。

 高等経済大のセルゲイ・ザハロフ人口問題研究所副所長(50)は母親手当について、「母親たちに幻想を与えているに過ぎない」と指摘する。バラマキよりも働く母親の育児環境の整備こそ優先的に取り組むべきだと主張した。モスクワなどでは保育所が不足し、「待機児童」の問題も日本と同じように深刻なのだ。

《日本でも現政権のバラマキについて似たようなことを指摘するメディアもあり、評論家もいる。》

 こうした中、母親手当を手っ取り早く現金で受け取る「違法行為」が広がりつつあるという。「悪徳業者」が住宅販売会社と結託し、主にインターネット上で勧誘した母親に対し、偽の住宅購入証明書の作成を代行。年金機構に申請し、悪徳業者は受け取った金を母親と山分けするという。

 政府はモラルハザード(道徳的な危機)を警戒し、住宅リフォームにも手当の使途を広げるなど修正を繰り返しているという。

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