赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」3年
ラナンキュラス(黄、白) おだまき
参照 赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」06/11
この問題を反対の立場から取り上げてから、5月ではや3年が経過する。当初から懸念していたとおり、性モラルなき日本の現実は、心配したように捨てるためにあるポストなどない方がよいことのようだ。
毎日新聞(4/9)から、要約と《 》内は私見。
預けられた子は昨年9月までで51人に上る。捨てられていたかもしれない命を救ってきた一方で、ポストに入れられた子を育てていく支援の乏しさも見えてきた。熊本県や市は「一自治体で解決できる問題ではない」と、国に妊娠、出産、育児にかかわる制度の見直しを求めている。
熊本県の検証会議が昨年11月にまとめた最終報告によると、ポストに入れられた子は、07年度17人、08年度25人、09年度9人。1歳以上も2人いて、少なくとも1人は自分がポストに入れられた記憶があるという。身元が分かった子は39人。親の住所は関東以南の全国に散らばるが、地元・熊本県はゼロだった。親にポストを使った主な理由を聞いたところ、「戸籍に入れたくない」が最多の8件で、生活困窮7件、不倫5件と続く。子どもたちは児童相談所の保護下に置かれ、児童養護施設に送られる。現在も施設で暮らす子は31人。12人は里親に育てられ、7人は親元に帰った。
《生まれた子に罪はないのは確かだろうが、生んだ親たちの無責任さはあまりに勝手すぎる。社会不安を理由に同情せよ、の声もあろうが私には責任なき自由の結果としか映らない。》
病院は当初、同様制度のある諸外国のように、ポストに入れられた子どもが新しい家庭の養子になることを想定していた。だが、養子縁組みが成立した子は51人中1人しかいない。日本の養子制度には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の二つがある。実親が育てられなくなった場合、家裁の審判を経て戸籍上も養親の実子になるのが後者だ。しかし、特別養子縁組は原則として実親の同意が必要になる。虐待や育児放棄などの場合は例外的に不要だが、ポストに子を入れると言う行為には明確な基準がない。後から親が名乗り出てくる可能性もあり、審判の申し立てに至っていないのが実情だ。
《慈恵病院の蓮田理事長がカトリックの博愛精神からスタートしたのはいいが、日本の政治、法律などに無知のままお構いなしに始めたことが後になって問題を大きくした。養子問題や子の出自にからむ問題など、どう考えても準備不足の感があったのは否めない。そのために遠く県外からこれ幸いと捨てにくる親が続いた。背景がこれだから、好き好んで養子にしようと考える人間などいるはずはない。1人でもいたことは幸いだ。》
このため、病院は2年目から方針を大きく変えた。ポスト周辺で利用者らしき人がいれば積極的に声をかけ、ホームページからは「匿名で預かる」との文言を削除した。09年1月には扉の表示を「赤ちゃんになにかをのこしてあげて」から「開ける前に、インターホンを鳴らして相談してください」に改めた。
利用前に相談してもらえらば、公的機関への引き継ぎや養子縁組みの案内など、選択肢が広がる。親が判明すると、養子縁組みが成立する可能性も高まる。「ゆりかごよりも相談を」。同院の蓮田理事長が繰り返し訴えてきた言葉は、切実さを増している。
検証会議の最終報告は「ポストを使わないで済む制度」を国に強く求めた。その一つが匿名で妊娠相談を受け、出産や子の保護も引き受けるシェルターの整備だ。従来の行政相談では緊急対応までは難しいとして、各地の産科病院に設置して国が連携や質の確保を担うことを提案した。
《根回しも不十分、国への働きかけよりも先に、理事長個人の思想信条から出発したが、ことが大きくなり過ぎて手にお負えなくなったから、国よ、何とかしろでは勝手すぎる。》
また、母子手帖交付や出生届と別に、医療機関が扱った妊娠や出産を保健所に報告する制度の検討も始めた。
《事前の調査や準備が不十分だから運行中には齟齬も破綻も生まれる。そのたびに、あれもこれもしてくれ、ということになる。》
51人の過半数は医療機関で生まれたとみられる。病院などから出産の報告があったのに出生届が来ない例を行政が把握できれば、ポストを使わずに支援できるのでは、との思いが関係者にはある。
だが、国の動きは緩慢だ。2月には蒲島郁夫知事らが関係省庁に要請文を渡したが、国側は「国としてやれることを検討したい」(山井和則厚生労働政務官)など慎重姿勢に終始した。窓口がはっきりしないのも対策が進まない一因とみられる。県と市は法制上の問題点の整理など、国の関与を求めている。
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