子育てビジョン
毎日新聞(2/4)社説「幼保一元化に踏み込め」から、《 》内は私見。
子ども手当だけでは足りない。保育所の待機児童解消、安心して子どもを産み育てられる職場づくりを求める声は大きい。鳩山政権の「子ども・子育てビジョン」はそうした期待に応えることができるだろうか。
5年間で認可保育所の定員を計26万人増、延長保育を17万人増、休日保育を5万人増とするほか、小学1〜3年生が対象の児童クラブの定員も30万人増、認定子ども園も358カ所から2000カ所以上に増やす——などがビジョンの内容だ。
市町村の保育所の整備は年々進んでいるが、どれだけ整備しても対機児童が増える状況が続いている。長引く不況で家計が苦しくなり働かざるを得なくなった主婦が増えていることや、保育所の整備によって潜在的な就労意欲が掘り起こされているためという。特に3歳未満の乳幼児の保育ニーズは高く、現在の待機児童約2万5000人のうち約8割を占めている。ビジョンは3歳未満の子の4人に1人しか利用できない現状を、3人に1人が利用できるようにすることを目指している。財源は示されなかったが、十分な予算措置をしなければ絵に描いた餅になることは言うまでもない。
《知って驚くことだが、待機児童の大半が3歳未満の乳幼児で占められている事実を何と見るか。3歳未満の子を普通には児童と呼ばないだろう。この年齢の乳児、幼児たちに一番必要なのは母親の乳房や肌の温もりだ。保育所に預けることが可能だということは、生活に困窮し補助を受けなければならないレベルではないということだ。長引く不況といっても私たち世代からみれば、金銭を出して育児を他人に任せられるのはどちらかといえば贅沢な暮らしをしている家庭のレベルだ。確かに生活の水準が上がり、女性の労働意欲も向上したことはわかるが、しかし、せめて3歳までは母親が傍にいて育てるのが動物学的にも本道だろう。男性の育児参加はその後だ。そうすれば乳児を他人に預けておいて急な病気や怪我などが起きた時、「対応が悪い」などと他人に責任転嫁して責めることもなくなるだろう。私は基本的に女性の働くことに異議を差し挟んでいるのではない。》
《財源問題だって慌てることはない。子どもは産めるけれど産みたくない日本の女性(20、30代)の半数以上が、数年もすればすぐに空き部屋を増やしてくれる。今慌てて財源の心配をすることもないだろう。》
待機児童は一部の地域に偏在しており、少子化の進展によってはいずれ解消するとの見方もある。制度を抜本的に変え、建物の新設などハード面に過剰な予算を投入するよりも、今ある制度や資源を有効活用することを先ず考えるべきだ。実際、幼稚園の定員割れは進んでおり、小中学校の空き教室も増えている。
《その通りだ。今建物を造ったり、投資することは明らかに無駄なことをすることになる。そんな箱ものはすぐに閑古鳥が鳴くスペースに成り果てる。》
06年に制定された「認定こども園」は就学前の子どもの教育と保育を一体的に行うもので、非効率な利用状況の改善が期待されたが、思ったほど増えていない。乳児を預かるには専用のトイレや沐浴の設備、調乳・離乳食などに対応した給食設備などが必要だが、予算措置が不十分であることが原因といわれる。幼稚園と保育所では職員の資格や勤務時間が異なることもネックになっている。さらには文部科学省と厚生労働省に族議員も絡んだ縄張り争いが長年に亙り壁を作ってきた。
《今更過去の政党のことを愚痴っても意味はない。わが子を育てる以上に実のある仕事は企業の中にはない。一方、他人の子を預かる側には我が子のようには扱えない遠慮が存在する。特に自我が芽生える年齢になると、反抗期の現象が現れてくる。そこで必要な教育に、親と他人の違いが生まれ、他人にはできなくても、親なら自然な叱責、規制、強制など、成長して集団生活に必要な教育が与えられるのだ。昨今とみに顕著な学級崩壊など、小学校に上がるまでの家庭内教育の欠落こそその原因となっているのだ。》
政権交代によってしがらみや規制を排除できる環境が整った今こそ、幼保一元化へ大胆に踏み出すべきだ。夜間や病気などの緊急時の対応も重要だ。
《そうはいっても小児科、小児科医師の不足は一段と深刻だ。その要因の一つには医療ミスに対する不信があった。特に乳幼児相手になると尻込みするだろう。その対応の必要性は叫ばれてきたが、萎縮した医療機関や医師の側の再生を期待するには長い時間の経過が必要だろう。》
看護師資格を持ちながら離礁している人は地域に大勢いる。24時間体制で運営している高齢者や障害者福祉の事業所もある。さまざまな資源の活用を検討する価値はないだろうか。高齢者と乳幼児が一緒に過ごす小規模多機能型のデイサービスだってある。管轄する省が違うだけで子どもを分離して壁を作っている理由は最早ないのではないか。
| 固定リンク
最近のコメント