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2010年1月16日 (土)

改正臓器移植法が規定 親子、配偶者間に限定

 毎日新聞(1/14)から、《 》内は私見。
 改正臓器移植法が、明17日から一部施行され、臓器提供者(ドナー)から親族に臓器を優先提供できるようになる。親族の範囲や優先提供の意思表示の仕方など、主な変更点をまとめた(記事:河内 敏康)。

 Q 臓器提供の相手が選べるようになるのか

  ドナーが脳死や心停止になると、匿名の第三者に臓器を提供するのがこれまでのやり方だった。移植医療を国民に普及させるためにも、移植を受ける機会が偏らず、平等になるよう配慮された。今月17日からは、ドナーが書面で意思表示した場合、親族に優先提供できるようになる

 Q 海外にも同じ制度はあるのか

  ドナーの意思表示によって臓器の優先提供を認めている国は他にはない。韓国には、待機リストに親族がいると第1位の順位になる制度があるが、ドナー本人が優先提供を選ぶことはできない。

《これは、別表の最後に書かれているように、親や配偶者のため或いは大事な人のためにドナー本人が優先提供を目的に自殺することを防止するためだ。》

 Q どうして親族優先を始めるのか

  改正臓器移植法の審議で、提案者の議長から「命の受け渡しをした親子、配偶者の心情を考えて認める」という提案があったから。確かに臓器提供を受ける人(レシピエント)が親族にいて、自分がドナーになったら臓器をあげたいと思うのは心情として分かる気もする。一方で、移植を受ける機会の公平性を揺るがし、移植医療の普及を妨げる結果につながる危険性もある。優先提供の意思表示をする場合、この点をよく考える必要があるだろう。

《親子、配偶者に限らない、兄弟姉妹の誰にでも、赤の他人よりも、わが命に変えても優先提供したいのが普通の人間の心情だ。そこに平等だの公平性だのを持ち込んでも誰もが博愛精神を持っているわけではないだろう。他国にはないことだ、とおっしゃっても、他国は他国。風土、宗教、家族愛など根っからの日本人には割り切れる問題ではない。メスを片手に手ぐすね引いて待ちわびる医師たちには悪いが、法を改正したからって、ドナーはそうそう大量に増えることを期待しないがいい。》

 Q それで親族はどこまで認められるのか

  厚生労働省が作成中の運用指針(ガイドライン)では、親族は親子と配偶者に限っている。戸籍上も実の親との関係を絶つ特別養子縁組み以外の養子縁組みや、事実婚も認められていない。

 Q 兄弟姉妹はだめ?

  だめ。厚労省の審議会で、一部の委員から容認を求める声もあった。しかし、移植を受ける機会の公平性を保ち、臓器提供を行う際の実務上の混乱などを避けるため、限られた範囲で始めることになった。

《公平性、平等の精神といいながら、事務処理上などの混乱を避けるためとは片腹痛い話だ。》

 Q 優先提供の意思表示はどのようにするのか

  法律では書面による意思表示を求めている。国は、移植の斡旋などを行う日本臓器移植ネットワークの臓器提供意思登録システムの活用を薦めている。別人がなりすまして意思表示するのを避けるためだ。このシステムは、ネットワークのホームペジ上で生年月日や住所など個人情報を入力すると、ID入りの登録カードが送られ、それに基づいて手続きをするので、比較的安全な手法といえる。また、従来の意思表示カード(ドナーカード)や、意思表示シールを貼った保険証などの余白に「親族」「親族優先」などと書いても有効だ。日記などでもいいが、臓器提供時にすぐに見つからない場合があるので、他の確実な方法にした方がいいだろう

 Q 個人名を書くことは?

  大丈夫だ。ただし、特定の個人を指定しても、実際には親族への提供意思ツィて解釈される。例えば、A氏にB、Cの子どもがいて、2人とも同じ病気でレシピエント登録しているとする。A氏が生前、「Bへ」と優先提供の意思を書面で表示していたとしても、医学的に優先順位が高い子の方に臓器は提供される。そのためA氏の意思と異なり、Bではなく、Cに臓器が与えられるケースも考えられる。

 Q 親族だけにあげたいというのは?

  無効だ。まず第三者への提供の意思があって、その上で優先提供が認められるからだ。そのため臓器提供の意思表示の書き方には注意が必要だ。

《まだ疑問は残る。最近はやりの遺言書(法的に有効な)だ。自殺ではなくても自動車,飛行機や船舶、街路上でさえ、死亡することは十分考えられる。その人が臓器提供の意思表示に親族以外の提供を拒否、或いは特定の人の名を書いていれば、どのように処理するのだろうか。》

 臓器移植の主な変更点<親族優先提供)
1)親族の範囲は、配偶者と親子(養子と事実崑は除外、特別養子縁組みは容認)
2)親族への限定提供は無効
3)個人名での指定は、個人でなく、親族への提供として扱う
4)親族間での優先順位づけは、順位通りでなく、親族への提供として扱う
5)優先提供の意思表示ができる年齢は15歳以上
6)優先提供が受けられる年齢は特に制限なし
7)意思表示は書面で(日本臓器移植ネットワークの登録システムのほか、意思表示カードや、意思表示シールを貼った保険証などに「親族」などと書き込む
8)自殺したドナーからの優先提供は認めない

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