午後10時には「強制退社」
毎日新聞(1/18)から、《 》内は私見。
東京・銀座に本社を構える化粧品最大手の資生堂がある。その本社ビル内は午後10時になると一斉に完全消灯する。仕事を終えられず、同時刻以降に退社する社員は通用口で警備員に呼び止められ、所属と名前を申告しなければならない。
このシステムは無駄な残業をなくそうと、同社が昨年4月に導入した「強制退社制度」だという。銀座のほか、汐留、五反田などの4事業所が実施している。「社員は周囲を気兼ねしあい、だらだらと仕事をしがち。ある程度の強制発動が必要と判断した」と人事部の本多由紀参事は語る。
《昨年4月からとは随分と経営に余裕があったとみえる。さすが最大手と言われる所以(ゆえん)だ。中小企業など、残業は帰社時のチェックなどでしていては無駄が生まれることを知っている。事務職とは違い、現場作業では、他人の進捗(しんちょく)状況を横目で見ながらでは仕事にならない。作業管理が行き届いているところでは、目標に対して所要時間を読み、自らが残業になるようなら前もって終了時間を申告する。
《一般事務職にできないわけがない。この会社、昨年4月まで、いかにのんびりと仕事していたかわかろうというものだ。昔から毎日、時間を稼ぐだけの残業をする人間がいなかったわけではない。特に家庭を持っていれば残業代で得られる収入が生活の足しになる。現在ではウインドウで見かけた洋服やブランドのカバン、宝石など「ああ,欲しい」、と1時間で処理できる内容でもそれ以上かけて働いてる振りをする。「今月は金がかかりそうだ、残業代で稼ごう」と残業を考える。
《敗戦後の復興期、一国の総理大臣が「貧乏人は麦を食え」と発言して物議をかもした時代があった。以前若い頃の職場の上司の説教を書いたことがある。100時間残業など当たり前の時代だった。だが、「高い材料を失敗して無駄にし会社に損害をかけ、やり直して残業になったから給料よこせとは虫がよすぎる」「コロッケしか食えない給料の奴が贅沢な肉なんか食うなよ」と。一つのコロッケでも余計に食べたい、と死にもの狂いで働かなければ生きて行けない時代だった。現在のように路上生活をしているとはいえ、着膨れする暖かそうな衣服や、立派なカバンをさげた人間を、政府や世間が金銭や宿泊施設まで手厚い保護をしてくれる時代ではなかった。それだけに、その手厚い保護に後足で砂をかけるような見下げ果てた根性の奴が出ることには心底腹が立つ。
《後日、改善された職場に残業制度が導入されたが私は手当がつかない役職についていた。この時から2度の定年退職を経験した会社勤めの間、ただの1度も残業代を手にすることがなかった。》
違反者は、居残りをした理由を記した始末書を所属長に提出しなければならない。月例の部門長会では部署ごとの違反件数も報告され、仕事の質が比較・検討されてしまう。申請すれば午後10時以降も行える仕事もあるが、時間を決めて行うシステム点検や、時差のある海外関連業務などに限られる。
就業時間を厳密に設定することで、効率的な仕事の配分が期待できる。制度に不慣れな導入当初は違反者が続出したが、現在は違反者はほとんどいないという。昨年11月の「ワーク・ライフ・バランス週間」には、強制退社時間を試験的に午後8時に繰り上げた。「服飾メーカーや証券会社には午後7時の例もある。まだまだ」(本多参事)
同社は前田新造社長の号令の下、仕事と家庭を両立できる環境づくりに取り組んできた。07年導入の「カンガルースタッフ制度」は、子育て中の美容部員の仕事をアルバイト職員が代行し、育児休業などを取得しやすくする内容で、出産退職をほぼ撲滅できた。今後は介護制度の充実が目標という。
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