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2009年11月16日 (月)

家賃滞納履歴のデータベース化

 滞納、取り立て、夜逃げ、錠前交換など世知辛いニュースがテレビを賑わす。これらを記録し、業者間で情報が共有される「家賃滞納履歴のデータベース化」。家賃保証会社9社がつくる社団法人「全国賃貸保証業協会」が来年2月から情報収集を始めることを決め。悪質な滞納者への対策としているが、差別につながるとの反対論もあり、民間賃貸住宅市場への影響はどうなるのだろうか。

 毎日新聞(11/14)から、要約と 《 》内は私見。
 異なる2者の意見を聞いてみよう。先ず、NPO自立生活サポートセンター・もやい代表理事、稲葉剛(40)から。
 家賃の滞納にはさまざまな理由がある。もやいは設立から8年間で1500世帯の保証人を引き受けているが、緊急入院して集中治療室に入っていたケースもった。会社の倒産や解雇などやむを得ない事情で滞納する人も多い。データベース化されれば記録が残り、次の住まい探しの妨げになる。現状でも民間賃貸住宅にはさまざまな差別が存在し、高齢者や外国人、母子家庭などは大家から敬遠されやすい。家賃滞納歴がブラックリスト化し、新たな差別を生むことになりかねない。

《いきなり、集中治療室に入った哀れな人の話を持ち出し、読む人の同情を引きつける。うんと遡って私が上京直後の頃(1954〜1960)の東京は、簡素な木造の安アパートが多く見つかる時代だった。外食には切符が配布されていた時代、それでも生活を切り詰めるために自炊し、銭湯には月に2、3度しか行けず、散髪は半年間にたった1度、米だけは何としてでも確保し、惣菜は当時の最低の1個5円のコロッケか鯨の脂身の最低のベーコン(当時アメリカは食糧難の日本のために南氷洋での捕鯨を認めていた)のどちらか1品、それも買えない時には醤油だけをご飯にかけて凌いでいた。それでもアパートの家賃だけは遅らせることなく、払い続けた。》

《毛髪や着るものは、周りが迷惑するような臭いを発散していたと思う。着替えなど買う金はない。夏に汗あばんでそこだけ色落ちして背中いっぱいの丸いシミを造り、変色して誰が見ても間違いなく本人と分かるような容貌だった。恥ずかしい話、落ちているものでも口に入るものは熱湯をかけて消毒し食しもした。勿論、テレビ、携帯電話など無く通信代はたまに出す封書かはがき程度の時代だ。部屋は極力狭い安い部屋を探した。当時木造アパートには三畳敷き、押し入れ半間付きの部屋があった。それでも家賃は払うことが当然の約束事だ。苦しくても交わした契約を違えることはなかった。戦中、戦後、耐えることを凌いできた貧乏人の知恵と、明治生まれの父の頑固なまでの実直に生きることの教えをうけた賜物だった。》

《民間賃貸住宅は慈善事業でやっているのではない。支払って当然の家賃で得られる利益がなければ継続できない。》

 家賃滞納リスクの要員は、貧困層の拡大という社会情勢の変化にある。年収200万以下のワーキンブプアは06年に1000万人を突破し、増え続けている。そこから収入が不安定で家賃が払えず、安定した住まいを持てない「ハウジングプア(住まいの貧困)」が生まれている。データベース化は滞納者にその責任を押し付け、民間賃貸住宅市場から閉め出してしまおうとするものだ。

《払えない、払わないのが当然のような論理には組するわけにはいかない。》

 暴力的な家賃取り立てを行う「追い出し屋」と呼ばれる悪質な家賃保証会社や管理業者が増えている。低所得者を対象に「うちなら貸しますよ」と足元を見て劣悪なサービスを提供する貧困無事ネスだ。市場から閉め出される人が増えればこうしたビジネスがますます広がる。

《滞納者から見れば「追い出し屋」は悪質な会社や業者だが、反対に賃貸契約で部屋を貸した側からは、「滞納者」が悪質となる。》

 住宅は生活の基盤であり、ほかの商品と同列に市場原理で論じられるものではない。もともと民間賃貸住宅に住む人は持ち家層より低所得者が多い。ハウジングプアをなくすには、公共住宅の拡充も必要だが、市場自体が「住まいは基本的人権」という居住福祉の観点を持つ必要がある。市場の外にセーフティーネットを造ればいいというのはかつての一億層中流時代の発想だ。いま求められているのは公的な家賃保証制度の確立や、空き部屋を行政が借り上げるなど、低家賃の民間賃貸住宅をセーフティーネットに活用する施策だ。データーベース化は、それと正反対の方向を目指すことであり、断じて容認できない。

《私の上京時、まだまだ東京にも時代劇風の10軒ほどが連なる長屋があった。ただ、土壁に穴を開けて、隣と行き来するほどの時代がかったものだったかは不明だ。だが、直ぐにこの長屋を1軒ずつ切り離して都(市)営住宅と呼ばれる低所得者向けの住宅が生まれて行った。しかし、高度成長の波に乗ってコンクリート作りの集合住宅に変化し、今になってスラム街のようになった団地が郊外に広がった。人は皆、永遠に続くと思っていた中流意識の中で豊穣の世を謳歌していたところへ今回の奈落が待ち受けていた。世間は1度浮かび上がった中流から落ちることを恐れて苦しんでいるのが現状だ。  ー つづく ー

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