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2009年11月19日 (木)

平成21年版犯罪白書

 毎日新聞(11/19)「社説」から、
 見出しの文字は「規範意識が低下した」だ。昨年6月の白昼、休日の買い物客でにぎわう東京・秋葉原の交差点に男がトラックで突っ込み、次々と人々をナイフで刺し、7人が死亡、10人が負傷した通り魔事件は、今も記憶に新しい。

 08年の犯罪動向をまとめた今年の犯罪白書によると、凶器を使って人々を無差別に殺傷する通り魔事件が、秋葉原事件を含め14軒起きている。04年以後07年までの4年間が各3、6、4、8件だから、データは少ないものの急増ぶりが目立つ。

 一方、警視庁によると、今年に入り強盗や事務所荒らし、ひったくりが増加している。昨年9月のリーマン・ショック以後の経済・雇用情勢の悪化と一定の関連性があるみている。秋葉原事件の被告は、派遣社員として各地を転々とし、動機を「人生の鬱憤(うっぷん)が出てきて嫌になった」と供述した。経済の行き詰まりが凶悪事件に結びつく昨今の殺伐とした世相が浮かび上がってくる。

《何ともお粗末な理由づけだ。世の中の不景気に心身共に草臥れ果てているのは、ひとり犯罪に走る人間どもだけじゃない。苦しい中、必死に生きている、或いは生きようと戦っている人たちをどうみるのか。不景気が善も悪も分からない甘ったれの犯罪者を生む、と解説するのはメディアではないのか。それでは犯罪に正当性を与えているようなものだろう》。

《そういえば、300日問題にしろ、小1プロブレムや、延滞が増え続ける奨学金の問題にしろ、メディアの拠って立つ立場に疑問を抱くことが多くある。明らかに批判する相手を取り違えているとしか思えない論調が目立つのだ》。

 白書の数字では、検挙率が気にかかる。交通事故を除く刑法犯で、昭和時代(戦後)は50%を超えていた。それが01年に19・8%まで下落し、その後右肩上がりに回復して07年は31・8%だったが、昨年わずか(0・2ポイント)とはいえ低下したのだ。

 英国人女性の死体遺棄容疑で指名手配中だった市橋達也容疑者が2年7カ月の逃亡の末、民間からの通報をもとに逮捕された。もちろん警察の捜査能力が第一に問われるが、犯罪の多様化が進み、警察の力だけで検挙率を高め、治安を保つのが難しいことを象徴するできごとだ。

 どう民間の力を活かすか。安藤隆春警察庁長官は今月6日、日本記者クラブの講演で「日本の良好な治安を支えてきた国民の高い規範意識と、学校や地域などの共同体の存在感が共に低下しているのではないか」と懸念を示した。

 次は、各地の少年補導員に聞いたとして長官が披露した話だ。細菌の非行少年は、万引きをしても「皆がやっているのに、何で悪いのか」という反応が返ってくる。家庭や学校に居場所がなく、親の年齢や職業、自分の住所さえ知らない。一方の親は「代金を払えば済むのに、なぜ警察に通報したんだ」と店に食ってかかる、というのだ。

《長官ともあろうものが、今頃こんな事例を持ち出し、メディアも始めて聞いた話のように報道する。万引きの通報を世間から責められ、閉店の憂き目にあった京急線八丁畷の古書店、或いは千葉船橋の書店の例をすでに報道している。2008年10月20日の社説「微罪でかたづけられなくなった」でも「万引き」を取り上げたのは当の新聞社ではなかったのか。》

 いかにも寒々しい風景だ。若者が社会ルールを守る意識に乏しいのは親世代に責任があることを示す。この話の教訓として、防犯教育の必要性も指摘しておきたい。罪を犯せばペナルティーがある。例えば窃盗でも最高10年の懲役だ。また、被害に遭わないためにはどうするか。警察は学校と連携し一部で防犯教室を実施しているが、さらに積極的な展開が必要ではないか。

《ペナルティー、罰がくだることがわかっていても、おおかたは説諭で済まされる。この甘さが次の犯罪を生んでいるのだ。例えば、一般刑法犯と窃盗の再犯者率は過去40年で最高の数字を示し、一般刑法犯34万人のうち再犯が14万人で再犯率は42%、窃盗犯は17.5万人のうち7・5万人の43%に上っている》。

《親世代の責任については、私がブログを立ち上げた理由の最大の根拠になっている。敗戦後、昭和一桁以前の人間は、家庭を犠牲にして戦後の復興を目指して夜も昼もなく働き続けた人間と、国に捧げるはずの命を敗戦で虚しくして帰国した軍人たちの虚無が入り混じった流れの交錯する世相を形づくっていた。加えて新しい民主主義の思想が混じって三つ巴の様相を見せていた。古い価値観は悪として否定され、だからといって、それに代わる価値観も基準もすぐには見出せず、親たちには混沌の状態が続いた。

《親がしなければならない家庭内教育は、弁解させてもらえれば、現在以上に厳しい労働環境の中ではなおざりにならざるを得なかった。それが今の親たちの2世代,3世代前の親、大正、昭和一桁世代なのだ。その後の変遷については何編も書き連ねてきたので省略するが、核家族化も進み、本来親がしなければならない子への家庭内教育は共稼ぎが理由で外に向かい、国も「親は子を産む機械」で子育てや教育は社会がするもの、のような制度を整えようとする時代に突き進もうとしている。

《が、そうではないだろう。子はやはり親が全責任を持って育て人間教育をするものと私は考えている。当時の反省を含め流れに棹さす思いから、私なりの視点で、寄り道して下さる親たちの目を意識しながら日夜パソコンと向き合っている。》

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