試用教員の退職315人
毎日新聞(11/5)から、要約
1年の「試用期間」のうちに、教壇を去った公立学校の新人教員が08年度は過去最多の315人(前年度比14人増)に上ったことが、文部科学省の調査で分かった。うち約3割の88人は精神疾患を理由に退職していた。文科省は「イメージと現実とのギャップで自信を喪失し、鬱病などになるケースがある」とし、相談相手となるべき先輩教員らの支えや目配りを求めている。
教員は、一般の地方公務員(半年)より長い1年の「条件付き採用期間」を経て正式採用が決まる。08年度は2万3920人が採用され、このうち1年後に正式採用に至らなかった315人は1・32%(前年度比0・06ポイント減)を占めた。10年前(98年度)は0・27%の37人で、8・5倍に達している。
315人のうち依願退職者は304人(前年度比11人増)。病気が理由だったのは93人で前年度より10人減ったが、5年前の10人、10年前の5人と比べると急増ぶりが際立つ。文科省が今回始めて精神疾患の人数を調べたところ、「病気」の95%を占めた。このほか、猥褻行為や飲酒運転を理由に懲戒免職となったのが5人。不採用決定を受けたのは4人。死亡退職は2人だった。
また、自ら望んで降任した教員も過去最多の179人(同73人増)に上った。主幹教諭からの降任が89人、副校長・教頭からの降任が84人。望んだ理由は、精神疾患を含む「健康上の問題」が95人と半数を超えた。
《精神疾患の内容が皆目不明だ。イメージと現実とのギャップというがその内容を把握してこそ教育現場での対応が可能なのではないか。単に文章で終わらせていては、毎年同じようなデータを採るだけの繰り返しだ。教諭個人の問題か、システムの問題か、授業を受ける側に問題はないのか、集計だけで終わらせない調査のあり方も検討する必要がありそうだ。》
また、同紙は社説で「指導力不足教員」を取り上げ、どちらの調査にも言えることだが統計数字の曖昧さを指摘して、もっと実態に踏み込めとしている。指導力不足と認定された公立学校教員は306人で前年度より65人減り、ピーク時の04年度から260人減った。一旦「指導力不足」と認定され、研修後に現場復帰し、再度認定された教員の8人も含まれる。文科省の言う「取り組みの成果」もあるとしても、80万人以上いる教員の中で状況が抜本的に改善されているのか、現場に根ざした検証が必要だ、という。
「学習計画が立てられない」「子どもとコミュニケーションが取れない」「間違いが多い」など「指導力不足」が見られる教員は通例校長が教育委員会に報告し、認定は専門家や保護者らの判定委員会の意見を踏まえて委員会が行う。原則1年以内の研修を受け、職場復帰や他職種への転任、依願退職などに分かれることになる。
《校長からの報告を受け、その判定に専門家が加わることは理解できても、保護者が「指導力不足」教員の判定委員として加わるというのは理解できない。教員の教育現場をどの程度把握し、その適不適の判定基準に何を持ってしているのか。保護者が教員に不適格の引導を渡すことができるほど、教育の現場を知り、高邁な教養を備えているのか。単なるモンスターペアレントの意見で終わる危険性だってあり得る。》
そこに至らなくとも「指導力に課題あり」と判断された教員は校内研修や授業支援などを受けたりすることになる。その人数などは分かっていない。指導力不足の認定可否を受ける前にこれを受け、改まらない教員につき判定へという手順が多いという。
一方、管理的職責が大きくなる校長、副校長、主幹教諭などから自ら望んで降りる「希望降任務」は年々増え、今回179人。増加は制度導入の教委が増えてきたことも反映しているが、この数字を過小評価するべきではない。現実とのギャップなどから正式採用前に辞める新人がいる問題と同様に、職務の過重さからこうした傾向はこれからも強まる可能性があるだろう。
文科省の教員勤務実態調査によると、1日の残業は約2時間で、教科指導だけでなく雑多な校内業務に追われる。また、いわゆる「モンスターペアレント」と呼ばれる保護者らへの対応など、心身の負担は増えている。中央教育審議会の議論でも「諸外国では多くの専門的・補助的スタッフが配置されているが、日本では教員が授業以外に広範な業務を担っている」問題が指摘された。
例えば、米国では進路指導や生徒指導なども教員以外のスタッフが一部担っており、すべてを背負うような日本の場合と異なる。
また希望降任は、家族の介護など私生活上の必要や事情を理由にしたものもある。私生活を大切に維持し、かつ降任したりせずに働ける余地はないか。教育現場こそ、多様な生活体験や事情を生かして教えることができる人材が必要なはずだ。
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