高齢者虐待12%増加
世界屈指の長寿国日本、半面少子化が進んだ国は「子どもは国の宝」とさかんに予算を過剰なまでに子どもや子どものいる家庭のために注ぐ政策を続ける。ちやほやされるだけの子どもたちは、老人の存在は年に1回か2回、お年玉や小遣いをくれる便利なお金を生む存在でしかなくなった。お年寄りを大事にしようという言葉さえ日常会話の中であまり聞かれなくなった。高齢者虐待の底辺には、このような国民感情が渦巻いているとみていい。介護労働力は海外からの労働者を必要としなければならないほど不足する半面、労働環境の厳しい介護の現場には、国内で介護職を目指す人の数は細々とした状況にある。
毎日新聞(11/21)から、 《 》内は私見。
厚生労働省は20日、08年度に高齢者が家族や介護職員らから虐待された件数が1万4959件に上り、前年度に比べ1624件(12・2%)増加したと発表した。このうち家庭内虐待は1万4889件(前年度比1616件、12・2%増)に上り、増加した件数のほとんどを占め、死亡の24人(同3人減)も家庭内だった。家庭内虐待の約7割は、介護が必要な高齢者で、在宅介護を巡る虐待の深刻さが浮かび上がった。
調査は、06年施行の高齢者虐待防止法に基づき市区町村と都道府県を対象に実施し、今回が3回目。
虐待件数は2年連続増で、増減率は前年度(5・6%増)の倍以上となった。介護施設内での職員らによる虐待は70件で、前年度比8件増にとどまった。
虐待件数の増加について、厚労省は「(市区町村への通報義務などを規定した)防止法が一層周知されてきた」と分析する。また、家庭内虐待被害者の68・2%が要介護認定を受けており、「介護疲れも大きな要因ではないか」とみている。
《反対に、4月27日、母を残して父の墓前で自殺した元タレント清水由紀子の悲しい事件も起った。車いすに載せた母を道連れにするはずであったと思われるが、母の命を絶つに忍びず、後を妹に託して自らが自殺する道を選んでいる。》
家庭内虐待の被害者のうち、77・8%が女性だった。加害者との同居率は86・0%で、加害者の続柄は息子40・2%、夫17・3%、娘15・1%など。いずれも前年度とほぼ同じ割合だった。
市区町村の対応は、加害者と分離させたケースが3分の1を占めた。特別養護老人ホームに入所させるなどの「介護保険サービスの利用」が38・8%で最も多く、次いで「医療機関への一時入院」が20・8%だった。
《子どもがこれからの国の宝なら、老人は成長期の日本を支えてきた国の宝だ。子どもへの投資も必要だが、老人をなおざりにしていいはずがない。日本人が、自分の親や夫、妻の介護ができないのなら、海外からの労働力をもっと多く期待することが必要だろう。それに在宅介護には限界がある。地方や民間に任せっきりにしないで、国としてデータだけ集めるのではなく、介護の問題にもっと真剣に取り組むべきだ。》
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