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2009年9月29日 (火)

ケータイで試される親の力 - 2 -

 ケータイでインターネットができるようなったのは1999年。NTTドコモの「iモード」が草分けだ。ライバル会社も追随し、07年には国内1億台を突破して、今では1人1台時代を向かえている。ただし、こうした華々しさには“影”が付きまとう。下田(NPO法人「青少年メディア研究会」理事長)は企業の姿勢を厳しく批判する。

 「携帯電話会社は99年当初から、ケータイがインターネットの端末だとしっかり説明し、フィルタリング機能を備えた上で販売すべきでした。なのに何もせず、高校生たちにどんどん普及させた。今もフィルタリングが徹底したとは言えず、商売を犠牲にしてまで子どもを救おうと思っていないのは明らかです」。フィルタリングは親権者が申し出れば、加入しなくても済む。

《何を今頃寝ぼけたことを言ってるんだ。そうなってしまった現在、何をすべきかを考えるのが偉そうな肩書きの「メディア研究会理事長」の仕事だろう。嘆き節で考えを述べても失笑を買うだけだ。例えば18歳未満の購入者には、フィルタリング付きのものでないと販売しないとか、小中学生には電話機能以外の機種は売らないとか、もっと遡っては危ないサイトを厳しく取り締まる規制をかけるための働きかけをするとか、あるだろう。だが、最重要なのは、現在全く無関心な親たちに、子を守るのは親、保護者であることと、その保護監督責任を認識させるために、具体的にどう働きかければいいのか、暖簾に腕押しだろうが、せめて提案ぐらいすればどうか。》

 高校時代からケータイに慣れ親しんだ世代も、既に子を持つ親だ。「私のNPOにいる若い母親たちは、最近のケータイサイトを見て、なんで自分の裸を載せたりするのか分からないというんですよ。ネット遊びの変化は速い。ケータイは世代間の断絶を生むメディアでもあります」

《母親がそんな問題意識がなくてどうする。小学生ですらあることだ、ひょっとしてわが子が裸の写真を送っている可能性だってあることに、思いを巡らせることぐらいしたらどうだろうか。》

 現状に危機感を持つ専門家は他にもいる。「ウェブ人間退化論」などの図書がある京都大霊長類研究助教授、正高信男(54)だ。「若者は家出もケータイを使い、それこそ24時間、誰とでもつながってしまう。しかも、親はまったく知らないまま。今や、一つ屋根の下に暮らしていても、家族が一緒であることの保証にはなりません。親子関係はケータイで崩壊したと言ってもいいでしょう」

《ごくありふれたことなのだろうか。紙面にあるイラストでは、女子高生らしき女が、片手に箸、片手にケータイを持って親と向かい合わせで食事中だが、組んだ足をぶらぶらさせながら、見入るケータイの画面には、「下着の写メ高く買います」と写っている。》

 正高教授は、この「誰とでもつながる」ところに、日本のお国柄を見て取る。「日本では縁を大事にする。合ったことのない人同士で、ウェブ上で盛り上がれるのは、地縁・血縁ならぬ『ネット縁』です。社会のIT化はこうした日本の文化的風土を顕著にしたように思います」教授は普段はサルの行動を研究している立場から、「人間は考えることで道具を開発し、サルから脱皮しましたが、ケータイは便利過ぎて、使う側に考えることを放棄させてしまう。賢く使わないと、ケータイは人間をサルに退化させかねない」と指摘する。

《「退化させかねない」ではない、すでに退化は進んでいる。肩書きだけは大卒だが、小中レベルのまま卒業してくる。そのくせ隠語作りだけは抜きん出ている。》

 一方、中央大教授(社会学専攻)の松田美佐(40)は「今起きていることは、ネット外でこれまで行われていたことの延長。ケータイだけでなく、子ども自身の生きにくさや家庭環境、学校環境の問題です」と語る。

 2児の母でもある松田教授は、小学5年生の長男には、塾通いの際の連絡手段としてケータイを持たせ、友だちとメールをしたがる小2の長女にはたまにケータイを貸しているという。「私も高校生の頃、長電話をしては親に怒られました。友だちとつながっていたかったんです。きっと今の子どもも一緒。ケータイを多用しているのは中高生です。親子で使い方のルールを話し合い、作っていくのが大切だと思います」。

《この程度のアドバイスならすでに言い古されている。そのアドバイスがどうすれば親の耳に、胸に届くかが問題なのだ。》

 こうして親子のコミュニケーションを重視するのは、「隠語」について解説してくれた安川(昨日の「ケータイで試される親の力」)も同じだ。「まずは親が子どもを説得して、フィルタリングをかけることが大切です。拒否されても、折れてはいけません。まさに『親力』が試されているのです。フィルタリングは万全ではないが、それくらい意思の疎通ができれば、親は子どもの異変も気づけます」

《親なら強制して無理矢理にでもまず、フィルタリングをかけること。子どもの成長には強制することも大切なことだ。強制がなければ子どもは大人にはなれない。》

 小さなサイズとは裏腹に、絶大な存在感を誇るようになったケータイ。サイトの持つ“影”からも、目を逸らすわけにはいかないだろう。今こそ、大人の真剣さが問われている。

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コメント

過保護じゃないんですか?
危ないことはだめなんですか
考えすぎです

投稿: | 2010年6月27日 (日) 22時56分

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