「みんなで渡れば怖くない」
「赤信号みんなで渡れば怖くない」お笑いの舞台でツービート時代のビートたけしが口にし、一世を風靡したギャグだ。大げさに言えば、このギャグを境にしてどうにか持ちこたえていた日本の世の中の常識や道徳が一気に崩壊していった。昔からあったが日本人特有の付和雷同が一層加速され、どこでもここでも何事につけ、合い言葉のように「みんなで渡れば怖くない」が蔓延して行った。
今の世の中で、眉をしかめたくなるような現象の多くはこの合い言葉に集約される。「赤信号」絡みでいうならば、歩行者、自転車、乗用車の文字通りの信号無視にスピード違反、運転しながらの携帯や食事、違法駐車に酔っぱらい運転などのルール違反。
日本でもタレントや大学生らに見られる大麻汚染。また、海の向こうの大リーグの薬物汚染は凄まじいばかりだ。これも同じ「みんなでやれば怖くない」心理なのだろう。
毎日新聞(8/4)から、
米大リーグはシーズンを折り返したが、いまだに薬物スキャンダルが続いている。先月30日にはレッドソックスの主砲、デービッド・オルティスが03年のドーピング(禁止薬物使用)検査で陽性反応を示していたことを認めた。相次ぐスーパースターの薬物使用の発覚や疑惑に、米球界の反応は複雑だ。
今年の米球界を揺るがしているのが、03年に大リーグが初めて実施したドーピング検査の結果だ。試験的な導入だったため、大リーグ機構と選手会の合意で、陽性反応の104人の名前は非公開とされていた。その封印された暗部が、メディアの手で次々と明らかにされたのだ。
最初は今年2月、米スポーツ専門誌スポーツイラストレーテッドが、球界最高年俸のアレックス・ロドリゲス(ヤンキース)が筋肉増強剤に陽性反応を示していたと報道。これを受けてロドリゲスは、レンジャーズに在籍した01〜03年に禁止薬物の筋肉増強剤を使用したと告白した。
6月にはニューヨーク・タイムズ紙が「検査結果を知る弁護士」の証言として、歴代6位の通算609本塁打の記録を持つサミー・ソーサ(元カブスなど)が陽性だったと報道したが、ソーサは沈黙を守った。そして7月30日、再びNYタイムズが弁護士の証言として、オルティスと、03年当時はオルティスの同僚だったマニー・ラミレス(現ドジャース)が陽性だったと報じた。オルティスは「驚いている。どの薬物に違反したかを調べたい」との声明を発表。一方、5月に禁止薬物の使用が発覚して50試合の出場停止処分を受けていたラミレスは、「選手会に聞いてくれ」とけむにまいた。
大リーグが罰則を導入して本格的な薬物根絶に乗り出したのは04年から。つまり03年検査の結果は、道義的責任は問われても違反ではない。にも拘わらず蒸し返されている状況に、ホワイトソックスのギーエン監督は「このおかしなリストをどこかにやってくれないか。厄介だ」と、現場のいら立ちを表現した。
一方、球場を包む雰囲気は、薬物に対する厳しい風当たりから、ほど遠い。ロドリゲスは過去の過ちを認めたことで、今ではファンに拍手で迎えられている。6月27日にロドリゲスに563本の通算本塁打記録を塗り替えられた往年の名選手、レジー・ジャクソン氏も「彼が間違いを認めてくれたことを本当に感謝している。私にわだかまわりはない」と受け入れた。レ軍もオルティスを「支援する」としている。ラミレスは罰則導入後の違反だけに風当たりの強さが予想されたが、地元ファンは復帰を歓迎した。そんな空気をエンゼルスのゾーシア監督は「我々は(罪や失敗などに)寛容な社会に生きている」と解説した。
米メディアには「スキャンダルに疲れ果て、無関心になっている」との論調もある。
《まさに、みんなで渡れば怖くないの真骨頂だ。また、現時点では陽性104人だというが、この数が増え、出場停止選手の数によっては、今後、大リーグの開催さえ危ぶまれる懸念もある。》
しかし、世界のスポーツ界全体が薬物使用に厳しい視線を向ける時代だけに、経営サイドの危機感は強い。大リーグ機構のコミッショナー、バド・セリグ氏はオールスターゲームの際の記者会見で、ラミレス復帰の反応について、「興味深かった。もっと厳しい反応で驚かされると思ったからだ」と首をかしげた。セリグ氏は、機構と選手会がドーピング検査制度の改正を話し合う2011年に「(制度を)変える必要があると思っている」と話しており、より罰則が厳しくなる可能性もある。
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