ローン払えず 自宅競売が増加
毎日新聞(6/24、25)から、要約と《》内は私見。
不況による収入減で住宅ローンを返済できず、競売にかけられるケースが急増しているという。虎の子のマイホームを手放さざるを得ない人はさらに増えるのだろうか。トヨタ自動車グループなどの地元企業の業績悪化の直撃を受けている愛知県では、戸建て住宅の競売が07年に比べて08年には約7倍に増えている。
東京都新宿区の40歳代の男性会社員に昨年末、住宅金融支援機構(旧受託金融公庫)から封書が届いた。「2週間以内に住宅ローンを一括返済できなければ競売に移行する」というものだった。妻と小学生の娘の3人暮し。00年に3700万円で2LDKのマンションを購入した。返済は月10万円。給料は月50万円を超え、余裕があったが、昨年夏から一変した。
勤務先の建築会社の業績悪化で給料は30万円台に。妻が体調を崩し、治療費などで消費者金融から400万円を借りたが、住宅ローンが払えなくなった。
男性は競売後に離婚し、手元に残ったのは1800万円のローン。自己破産を申請し、今は狭いアパートに住んでいる。「無理してでもマイホームは維持したかったが、まさかこんな不景気になるとは」と話す。
《昔の男は一生の大事業として、自分の家を持つことが夢であった。そのためには営々として働き、勤め上げて手にする退職金と苦労して貯えてきた貯蓄を加えて念願の家(終の住処)を用意し、その後の家族と過ごす人生の拠り所としたものだった。
《昔(敗戦後の半世紀ほど前の話だ)は現在以上に格差社会であった。金持ちと貧乏人という。金持ちが手に入れる贅沢品とまで行かなくても、貧乏人には日常品さえ手にすることには不自由することが多くあった。苦しい生活を助けてくれる貧乏人の味方が質屋であり、月賦販売であった。「おう、それラムネか?」一張羅の背広を着て出社する同僚に、友人が声をかける。世界でも有数の高給取りとなった現在のサラリーマンと違って、当時の世界屈指の安月給の貧乏サラリーマンには背広一着は分割でなければ手に入れることは難しかった。「ラムネ」を飲めばゲップが出る、そのゲップを月賦にかけて自虐的に使っていた言葉だ。
《○1○1の丸井が月賦百貨店で繁昌していた時代のことだ。その丸井がラムネをクレジットという洒落た名前を付けて分割払いを定着化して行った。ローンの本質がここにあることを忘れてはならない。大枚をはたいて何千万、何億のマンションを購入できる金持ちと、わずか2、3千万円を20年、30年、いやそれ以上掛けて支払って行く層とはおのずと金銭感覚が違っていていいはずだ。
《ところが、現在、自宅購入は男だけで手に入れるものではなくなった。女性に収入が生じ、資金は夫婦合算で計画が立てられる時代になった。ローンの落し穴がそこにあるのだ。今では結婚は親を捨てることから始まる。差し迫っては住む家を準備しなければならない。退職金を待つことなど絶対に不可能だ。合算したところで若い二人には有り余る資金になるわけではない。働くこと以上に楽しむことも求め、それを優先する。なくてもいい乗用車を必需品と考える、年に数回の旅行(国内外)も外せない、外食は当たり前になる、携帯電話は使い放題、そのため購入したマイホームのローンの支払いは、月々の出費を抑えてボーナスでまとめて充当する計画をたてる。ところがボーナスは企業の業績配分だ。企業に利益が生まれなければボーナスは極端な話支払われなくても仕方のないものだ。そこに発生したのがこの度のリストラにボーナス削減だ。
国内の住宅ローン残高の約2割を占める住宅金融支援機構によると、08年度に競売に持ち込んだ件数は前年度比35%増の1万6577件。今年3月は昨年9月の約2倍の1830件に上った。
東京都中央区のNPO法人、競売債務者支援協会(岡野雄一郎理事長)には現在、競売を迫られた人の相談が1日10〜20件寄せられる。以前は不況の影響を受けやすい中小企業の経営者が多かったが、最近は「給与削減でローンが払えない」と訴える大企業の社員が目立ってきたという。
金融機関が競売を通知しても、裁判所が競売にかける前に、不動産業者が仲介する「任意売却」も多い。売却額が競売よりもやや高いからだ。岡野理事長によると「競売の相談のうち4割は任意売却」。ただ、地価下落で任意売却も不調に終わり、競売に移行するケースが増えているという。
一方、ボーナス削減で 住宅ローンを払えなくなる事態続出を警戒し、金融機関も対応に乗り出している。大手銀行は各支店に住宅ローン相談にきめ細かく応じるよう指示を出した。東邦銀行(福島県)は、返済期間の延長を、従来は借入日から最長35年しか認めていなかったが、最長50年に延ばした。
住宅支援機構も主力の「フラット35」(最長35年の長期固定金利住宅ローン)で返済期間の延長やボーナス払いの減額などが利用できる制度を用意。「競売は最後の手段。とにかく早めの相談を」と呼び掛ける。
政府は09年度補正予算で「フラット35」を預金ゼロでも利用できる財政支援を盛り込んだ。従来は頭金が借入額の1割以上必要だった。
ファイナンシャルプランナーの西澤京子は「経済の先行きが不透明な中、返済できなくなるリスクが高いことも認識すべきだ」と指摘する。当初は返済を抑えたが、後に払い切れなくなって社会問題化した「ゆとりローン」や米サブプライムローンの二の舞になりかねず、西澤は「完済までの家計の長期計画を立て、慎重に利用すべきだ」と話す。
経済評論家の石井勝利もいう。これからマイホームを求めてローンを組む人は、とくに不安定な「ボーナス払い」の割合は大きく減らして、月々の返済でも可能な範囲での借入を優先すべきだ。マイホームを求めるのはいいが、返済の継続に見通しが立たないなら考え方を変えなければならない。右肩上がりの経済ではない現実を見据え、慎重に判断すべきだ、と。
《苦しんで購入するだけが家ではない。借り物の家でも一家で楽しく食卓を囲んで団欒のできるスペースがあればそれに越したことはない。》
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コメント
こうべいさんこんにちは。
実は私もローン返済に苦しんでる真っ最中です。
子ども達が巣立っても帰る場所があればというのが、家の購入を決めた理由だった気がします。
でもローンってすごいんですよね。
支払い総額にすると半分が金利ですから。大変低金利の時に購入したのにこれですから(^^;
競売に出すより返済期間を長くしても支払い続けてくれたほうが銀行や支援機構も良いはずなので、そういう提案も増えているようですね。
投稿: BEM | 2009年7月10日 (金) 10時16分
こんにちは、BEMさん
私もローンで建てた家に住んでいます。「持ち家制度」を利用しましたが、会社の制度導入が遅かったため、在職中に払い切れず、退職金の殆どで残金の一括支払いにしました。
現在は、年金だけの生活ですが、住居費の支出がない分助かっています。
投稿: 小言こうべい | 2009年7月10日 (金) 23時47分