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2009年7月14日 (火)

「脳死は人の死」が成立

 むちゃくちゃだ。参議院でもろくに審議もせず、国会の会期末、衆院解散、総選挙とドタバタの舞台を、イタチの最後っぺのような結論で、別の法律に作り替えてしまった。こんなのは改正案じゃないことは、幾度も書いてきた。初めから結論ありき、お涙ちょうだいの田舎小屋の出し物の人情劇で、拙速を問われても仕方ない。

 毎日新聞(7/14)から、要約と《》内は私見。
 臓器移植法改正案は13日午後、参院本会議で裁決され、3法案のうち、脳死を一般的な人の死とする「A案」(衆院通過)が賛成138、反対82の賛成多数で可決、成立した。15歳未満の子どもの臓器提供を禁じた現行法の年齢制限を撤廃し、国内での子どもの移植に道を開くとともに、脳死を初めて法律で「人の死」と位置づけた。だが、死の定義変更には強い慎重論が残る。このため、A案提出者は審議の中で「『脳死は人の死』は、移植医療時に限定される」と答弁し、配慮を示した。

 ♦成立した法律の骨子♦
 1)、志望者の意思が不明で遺族が書面で承諾していれば、医師は死体(脳死した者の身体を含む)から臓器を摘出できる。
 2)、本人の意思が不明でも、家族が書面で承諾していれば医師は脳死判定できる。
 3)、親族に臓器を優先提供する意思を書面で表示できる。
 4)、政府は虐待児から臓器が提供されないようにする。

 人の死の定義を変えるだけではない。脳死と判定された場合に、臓器を提供するかどうかに本人の同意が不要となるのだ。本人が望めば《家族に必要な患者がいればの場合》親族に優先的に臓器を提供することさえ可能となる。《このことについては前回、私見で詳しく述べた。》

 13日に参院で可決され、成立した改正臓器移植法(A案)は、現行法とは理念が大きく異なる。《私が別の法案を作った、と表現したことだ。》本来なら、腰を落ち着け、これまでの事例や法改正による影響を、細部まで検討したうえで結論を出すべきだった。にも拘らず、衆参両院での審議は駆け足だった。

 人の命にかかわる法律として、拙速との印象が拭えない。衆院の解散時期をにらみ、理念よりも「廃案阻止」に動いたのだとすれば、無責任な態度との批判を免れない。

《理由を探しても、その時期のことが背景にあることは間違いない。今回のような結論が出ることを憂え、私は、廃案になることの方を選択するべきことを奨めた。助かる命よりも、助ける命の側に考えなければならない問題が存在することを指摘したかったからだ。

《子どもの頃に聞かされた。亡くなった人がお通夜の晩、棺桶の中から「生き返った」話だ。私だけではない、妻も同じような話を聞いていた。現在、「脳死」の宣告を受けた後も生き続けている60人のいのちがあることが分かっている。

 97年に現行法が成立するまでには、今回の改正法と同様の内容も含め、さまざまな考えが幅広く議論された。その結果、「脳死は人の死」と考えない人にも配慮した法律が制定された。

 それから12年で人々の考えは変ったのか。毎日新聞の6月の世論調査では、現行法通り「臓器提供の意思を示している人に限って脳死を人の死と認めるべきだ」と回答した人が過半数に上る。

 一方で、脳死状態となった15歳未満の子どもからの臓器摘出について、親の承諾を条件に「賛成」と答えた人も過半数に上った。「本人同意」を前提とする現行法では禁止されている行為だが、今回の改正法では可能となる。「病気の子どもを助けたい」という点では、人々の気持ちには沿っている。

 ただ、脳死移植の場合は「臓器摘出される子ども」にも配慮がいる。子どもの脳死判定は大人に比べ難しいといわれる。判定基準をどうするか。虐待で脳死になった子どもの臓器の提供を家族が承諾するケースもありうる。それをどう見極めるか。

 大人でも子どもでも、提供者側の支援の確保や、同意できる家族の範囲も今後の課題だ。臓器提供を前提としない場合、脳死判定で治療が打ち切られないかといった点も、改めて整理しておく必要がある。

 法律が施行される1年後までに、国民が納得できる運用指針などを定めるのは簡単な作業ではない。特に「親族優先」は、移植の公平性を損なうだけでなく、倫理的に問題のある移植を誘発する恐れさえあり、抜本的な再検討が欠かせない。

 今回の法改正の背景には世界保健機関(WHO)が渡航移植を制限するのではないかとの味方があった。これとは別に、WHOは生体移植や細胞・組織移植まで視野に入れており、法律には生体移植の規定を盛り込むもとも検討課題だ。

《脳死移植法改正の賛成派の意見で私が納得できる理由は見当たらない。自然界の摂理から考えれば人間も動物である以上、医学の介入がなければ弱いものが淘汰されるのは自然だ。私がユニセフの子ども基金の方に重きを置く理由もそこにある。彼らは彼ら自体が弱いのではなく、摂取しなければならない食料や、医薬品が足りないことに原因があるからだ。今回の法の作り替えはただ単純に、国内では10年で脳死移植が81件という足りない屍体(ドナー)の数を増やしたいだけの姑息な考えで、「死(命)」への冒涜でしかない。》

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