アイヌ教育の充実を
昨年6月6日、衆参本会議は全会一致でアイヌは先住民族と認めることを採択した。昨年も書いたが、私はもう一歩進めて北方民族の渡来以前、関東以北で広い範囲に住んでいたアイヌ民族こそ原日本人と考えている。
毎日新聞(7/29)から、要約と《 》内は私見。
政府の「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」(座長・佐藤幸治京都大名誉教授)は29日、河村建夫官房長官に報告書を提出した。アイヌを「先住民族」と明記したうえで、新たな立法措置や国の審議機関、担当窓口の設置など政策推進体制の確立を求めた。根強い偏見や差別をなくすため、学習指導要領の改訂による学校教育の充実、生活・教育格差を解消する支援策も盛り込んでいる。
【アイヌ】
北海道や千島列島などに住む独自の文化、言語を持つ民族。かつては主に狩猟や漁労、山菜の採取に従事し、明治政府の同化政策で人口が激減したと言われている。道内に約2万4000人、都内に約2700人が居住する。北海道大の調査(昨年10月)によると、道内の生活保護受給率は5・2%(全国平均2・1%)、大学進学率は同世代の半数以下の20・2%にとどまっている。
報告書はアイヌを「日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族」と認定した。日本の近代化とともに生活の場を狭められ、独自の文化を禁止、同化を迫られた結果、「文化に深刻な打撃を受けた」と指摘。歴史的経緯から「国は文化の復興に配慮すべき強い責任がある」とした。
《報告書はアイヌを「日本列島北部周辺、とりわけ北海道」とするが、8世紀から9世紀にかけて大和朝廷が行った蝦夷征討《私の世代は征伐と教えられた》の地は陸奥国、房総、東国各国などの鎮圧だ。ここでいう蝦夷こそアイヌを指し、日本列島に広く生活していたことがうかがえる。
《近い歴史から推量しても、先住民の殺戮や狭い居住区への閉じ込めは歴史の教えるところだ(アメリカのインディアン、オーストラリアのアポリジニなど)。同じようにアイヌが北海道へと追いやられるのも歴史的にはごく自然な流れであったろう。》
報告書の具体的な政策には三つを掲げ、
1)国民の理解の促進
現在の学習指導要領によると、アイヌに関する記述は中学校の社会科で鎖国下の対外関係の一部のみにとどまっている。このため、歴史・文化などで十分な内容を盛り込むよう改訂を求めている。教職員への研修や指導法の研究を進め、義務教育段階で基礎的な知識が習得できるようにする。
また、アイヌを先住民族と認めることを政府に求めた、衆参両院の決議があった6月6日を「アイヌ民族の日」(仮称)とする。
2)広義の文化政策の推進
北海道苫小牧市周辺を候補地にアイヌの文化や歴史の教育・研究・展示施設や、各地の大学に保管されたアイヌ人骨を集め慰霊する公園を整備し、民族共生の象徴とする。来年度中に実態を調査し、奨学金などの生活支援策を全国で実施する。支援対象となるアイヌを特定する「個人認定」は、透明性・客観性のある手法で行う。
3)国の推進体制の整備
今秋にもアイヌの複数の代表も参加した審議機関を設置。アイヌ政策を企画・立案・推進するための期間を内閣官房などに新設するよう求めている。
懇談会は国会決意を受け昨年7月、官房長官が設置した。委員は学識経験者のほか、アイヌ団体「北海道アイヌ協会」の加藤忠理事長、高橋はるみ・北海道知事ら8人。アイヌ関係の政府懇談会は、96年に報告書を出した「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」に続き2度目。
一方、アイヌ側の責任も重くなる。審議機関には複数の代表が入り、政策づくりに参加することになる。しかし、最大組織の北海道アイヌ協会(会員3471人)は会員数の減少が続いており、首都圏のアイヌ団体も規模は小さい。全国の実態も詳しく分かっていない。アイヌの総意を酌み取る体制づくりが急務といえる。
《政府から、アイヌも琉球も知らない歴史認識の欠けた麻生が消える(きっと)。いい機会だ、皇国史観から離れたアイヌ先住民族の文化復興や生活・教育格差など、総合的な「先住民族」政策への転換が図られるとよい。》
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