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2009年7月 8日 (水)

赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」の法的問題

 参照 赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」 06/11 《ここで、私はポスト開設に反対の意見を述べた。》

 毎日新聞(7/7)から、 要約と、《 》内は私見。
 熊本市の慈恵病院がポストを開設してから2年が過ぎ、運営上の問題や親の実情が浮き彫りになってきた。入れられた子どもの「健やかに育つ権利」「出自を知る権利」そして「親権」。何を優先させ、他の権利をどう補うか、国と熊本県、市はともに検討し、先送りしてきた法的な問題に速やかに判断を示すべきだ。

 赤ちゃんポストは現行法が想定していない施設で、国は刑法や児童福祉法に照らし「直ちに違法とはいえない」とし、「見切り発車」したのが実情であった。
▽子どもへの対応は、次のような内容で異なる。
 1、ポストに入れる前の事前相談
 2、ポストに入れられ身元が判明
 3、ポストに入れられ身元が分からない

 1、の場合、病院と親たちで相談しながら後のことを決められる。特別養子縁組を斡旋する団体に引き継ぐこともできる。
 2、と3、は児童相談所が対応する。2、なら、親の居住地の児相に引き継ぎ、原則的には親元に戻るのを推す支援がなされる。

 問題は3、のケースで、「新しい家族」を得られるかは現状では不透明だ。通常の「捨て子」は、警察が保護責任者遺棄容疑で捜査する。身元が分からない場合、捜査を論拠に家庭裁判所が「実父母に養育意思があると確認できない」と特別養子縁組を認めるケースがある。だが、ポストの場合、捜査は明らかに虐待を受けている場合などにとどまる。親が後に名乗り出る可能性も捨て切れず、家裁が同様の判断をする論拠がない。判例などから特別養子縁組は難しいと県は分析している。

 このため、病院は08年度から、「匿名での受け入れ」という大前提を覆した。建物の外側から赤ちゃんを入れ扉を閉めると、扉に鍵がかかってアラームが鳴り、駆けつけた職員が赤ちゃんを保護するのに加え、アラームと同時に建物の外に回る職員を配置した。入れたと思われる人を捜し、車のナンバーを記録した例もある。身持ちが分かった子どもは、07年度は入れられた17人のうち10人だったが、08年度は25人中22人。判明率は大幅に伸びた。

 身元の分からない10人は、今も乳児院などや里親の元で育っている。しかし、里親にしても児童福祉法の規定で原則18歳までの期限付きで、「新しい家族を与える」という当初の理念とは異なる。

《もともと“生まれた子には罪はない”捨てられる子どもが哀れという人道的な立場だけで開設したポストで、法的な問題をクリアした上でのことではない。》

 慈恵病院の蓮田理事長は昨年、一定期間連絡がなければ養子縁組の手続きを進めるような内容の告知をするよう検討した。「親権」より「健やかに育つ権利」を優先させようとしたわけだ。だが、親権停止を宣告するような行動は、民法で家庭裁判所がすると定めており、一病院の判断ではできない。「国が決めること」と、1月に小渕少子化担当相に、特別養子縁組の緩和を要請したという。しかし、今現在、国にも目立った動きはない。

 「想定外」は、他の公表結果からもうかがえる。大学教授や医師らによる熊本県の中期的検証会議の中間報告(08年9月)で、ポストに子どもを入れにきた人物は07年度、母親1人のケースが約2割と判明。熊本市が公表した08年度の利用状況でも、父親が係わったケース、祖父母が係わった例が各5件あった。「1人で悩み、追いつめられた母親が利用」という見込みからはほど遠かった。

《このことは日本の現状の性モラルのなさ、男女関係の乱れなどからも、生まれた子は邪魔だから捨てるだけになることは開設時点で予測はついていた。ただ、蓮田理事長のカトリックの博愛の精神から、心情的な配慮としてでたことには同情できた。また、父の急死による票田を引き継いだだけのお穣ちゃま担当相には、何かを提案、提起したところでメッセンジャーガールの役割しかもっていないだろう。》

 だが、市も県も自ら分析することすら拒んでいる。「検証会議が議論することになっており、現時点で評価は出来ない」という。問題がはっきりしてきた以上、これですませられるわけはない。特別養子縁組に取り組みにせよ、申請できるのは6歳未満などの条件があり、ポストに入れられた子どもたちにはそんなに時間的余裕はない。身元の分からない子どもたちの成育環境を可能な限り保障できるよう、早急に詰めるべきだ。

 そのためには、どの権利を優先させるべきか、まず明確にすべきだと思う。同様の制度を持つ米カリフォルニア州では「望まぬ妊娠をした母親が出産直後の動転で赤ちゃんを殺す・捨てる事件を防ぐ」と目的をはっきりさせ、「出自を知る権利は保障できないが、命と新しい家庭を得られることを優先した」と、失う権利にも向き合っていた。

 ポストが使われない社会は理想だが、これだけの利用がある以上、運用中止は問題の解決にならない。運用を続けながら、身元の分からない子どもたちが自らを肯定して生きて行けるよう取り組むことが、「社会で育てる」ことにつながると思う。

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