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2009年5月 6日 (水)

「宇宙基本計画」案、警戒衛星は必要か

毎日新聞、『社説』(5/6)から、《 》内は私見。
 政府の宇宙開発戦略本部が、初の「宇宙基本計画」案をまとめた。国民の意見を募る「パブリックコメント」を経て今月下旬に決定する。計画案には、ミサイル発射をいち早く探知できる早期警戒衛星の導入に向けたセンサー研究が盛り込まれている。しかし、同衛星の開発・保有には巨額の費用がかかることや、衛星の必要性そのものを巡って政府・与党内にも議論がある。ただちに導入の方向を打ち出すのは疑問だ。

《北朝鮮のミサイル騒動のように、自ら仮想敵を作り、国民を「あの国は、怖いぞ、怖いぞ」と煽り立て、日本中に防衛基地を作っているような政策が、ほんとうに日本を守ることになるのか。或いは、どこの国が日本を侵略しようと企んでいるというのか。南北朝鮮は、今を去る100年も前の1910(明治43)年、日本は西洋列強に肩を並べるように、朝鮮を併合、日本の植民地とした。言論の制限や結社を禁止し、独立運動を警戒し、日本国天皇への忠誠を誓わる皇民化教育を布き、1945年、日本が大戦に敗れるまで侵略していた。仮想敵とするのは、その頃の報復を恐れてのことなのか。その後米ソの冷戦に巻き込まれるようにして朝鮮は、北と南に分断された。》

《冷戦下の日本の仮想敵は、第1には旧ソ連であったが、1990年代、ソ連の崩壊を聞くや否や政府は一転して仮想敵を北朝鮮に移し換えた。旧ソ連を『アカ』と嫌った日本人は、同じアカの北朝鮮を第1の仮想的として国民の心に北朝鮮を仮想敵とする為政者たちの施策にまんまと引っ掛かったのだ。同じような色合いの中国を、仮想敵的な感情で受け取る日本人は数えるに困らないだけの数いることになるのだ。》

 早期警戒衛星は、米国のDSP(国防支援計画)衛星やロシアのコスモス衛星の一部がこれにあたり、弾道ミサイル発射などの熱源を赤外線センサーで探知する。ミサイル防衛(MD)には欠かせないとされる。

 昨年、宇宙空間の軍事(防衛)利用に道を開く宇宙基本法が成立し、政府は早期警戒衛星導入を視野に入れてきた。4月の北朝鮮のミサイル発射では日本は米国衛星の情報を入手したが、政府・与党内に独自保有の意見が一気に盛り上がった。北朝鮮のミサイルは日本の脅威であり、これを理由にした衛星保有の主張はわかりやすい。

《社説も「アカ」に毒されている。北朝鮮のミサイルは、彼らに言わせれば過去の日本が「侵略国家だったことは濡れ衣だ」という元航空幕僚長の田母神論理で言うなら、北朝鮮はミサイルを打ち上げても同じ言葉で言って返すだろう、「我々の国が、侵略を望んでいるというのは濡れ衣だ」と。》

 しかし、事はそう単純ではない。まず費用対効果の問題である。

《問題は、銭金で考えることではあるまい。》

 DSP衛星は大陸間弾道ミサイルには有効だが、日本にとって脅威である北朝鮮の「ノドン」など中距離弾道ミサイルに対しては監視能力が落ちると言われる。これを改善するため米国が開発中の新衛星は低高度軌道であるため、日本周辺だけを監視対象としても数基の衛星が必要となる。日本が開発・保有し、しかも独自の解析能力を持つには数兆円がかかるとされる。

《これらはあくまでも北朝鮮が日本を攻撃乃至は侵略してくることが前提だ。社説を書いた人間も、為政者も、そんなことが現実にあり得ることと考えているのだろうか。》

 政府・与党内に費用面で懸念の声が上がっているのは当然だ。北朝鮮などの脅威には、日米同盟の役割分担と両国の連携の中で対応する姿勢を放棄してはならないだろう。

 また、オバマ米政権のMD政策も見極める必要がある。ゲーツ国防長官は10会計年度でMD予算の削減を表明した。日本が配備する既存システムについては増額され、当面日本のMD政策には影響ないとみられるが、国防政策全体の中でMDの比重は低下する。ブッシュ前政権と違ってMDの共同開発を日米安保の柱と位置づけているわけでもない。今後のオバマ政権の方向次第で、日本の安全保障政策に影響する可能性があることも念頭に置かなければならない。

《少なくともブッシュのような他国への侵略以外に施策を持てなかった無能な大統領とは違うことを、オバマは「軍縮」の方向へ舵を切ることで示そうしているようだ。この時に、日本が慌てふためいて軍事衛星の必要性を「アカ」に敏感な国民に問うことは避けるべきだろう。》

 社説のまとめも慎重だ。さらに、外交面では、早期警戒衛星の導入によるMDシステム強化が引き起こす隣国の中国、ロシアの反応についての分析も必要だ。早期警戒衛星の導入は、今年末に決める防衛計画大綱、中期防衛力整備計画の改定作業の論点の一つとなる。慎重な対応が求められる、と。

 

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