臓器移植法改正案 本格審議に
毎日新聞(4/21、22)から、要約と《 》内は私見。
議員立法で国会に提出されている三つの臓器移植法改正案について審議する衆院厚生労働委員会の小委員会が21日開かれ、専門家ら6人が参考人として意見を述べ、質疑応答を行なった。現行法では認められていない14歳以下の子どもの心臓移植など脳死移植の増加を求める一方、脳死判定の難しさや死生観を尊重する立場からの反論が出された。
【脳死】
脳の全機能が失われ、二度と回復しない状態。臓器移植法は臓器提供をする場合に限り、脳死を「人の死」とする。法的脳死判定基準(対象6歳以上)は、
1、深い昏睡
2、瞳孔が開いたまま
3、脳幹反射の消失
4、平坦能波
5、自発呼吸の消失
の5項目について、6時間以上の間隔で2回判定することを求める。6歳未満は旧厚生省研究班が2回の判定間隔を24時間以上とする基準をまとめている。一方、脳死判定後も1カ月以上心臓が停止しない患者もみられ、判定の難しさを指摘する声が出ている。
改正案は 1)、脳死を一律に人の死とし家族の同意があれば年齢を問わず臓器提供を容認(A案)
2)、提供年齢を現在の15歳以上から12歳以上へ引き下げる(B案)
3)、脳死の定義を厳格化(C案)
雨宮浩名誉センター長(国立小児医療研究センター)はA案を指示する立場から「(内閣府調査では)6割を超える人が本人の意思表示がなくても提供していいと考えている。家族の同意だけで提供できるのがグローバルスタンダード。国際事情で小児の提供は極めて困難になる」と述べた。
《何がグローバルスタンダードだ。何時、何処で行われた世界的国際会議でスタンダードとして一致して決められたものなのだ。医師として、小児の命を救いたい気持ちは理解できるが、内閣府調査だのグローバルだの、自分の信念、意見はないのか。権威を借りてしかものが言えないようじゃ、意見じゃない。》
一方、三石忠敬特別委嘱委員(日本弁護士連合会人権擁護委員会)は、「A案は多くのレシピエント(臓器を受ける患者)の利益のために少数のドナー(臓器提供者)の犠牲はやむを得ないという考え方に基づいている。日弁連はC案を支持する」と反論した。
《真っ当な考え方だ、「何歳でもいい、誰でもいい、早く死んでくれ。頼む、死人が沢山必要なんだ」では死者も浮かばれない。》
田中英高准教授(大阪医大・小児科学)は小児科医の立場から、脳死判定後も脳波が戻った長期脳死の例を紹介。「脳死判定をしても、100%脳機能が戻らないとは断言できない。意見表明ができない子どもの人権が損なわれる恐れがあり、A案には賛成できない」「小児科医は脳死判定を不安に思っている。判定には限界があることを国民に知ってもらった上で改正議論を進めてほしい」と訴えた。
斉藤謙次幹事(日本宗教連盟)は宗教界の立場でから、脳死移植は個々人の死生観にかかわる重要な問題。医療現場の状況だけでなく、宗教、文化などを総合して検討すべきだ。脳死を人の死としてはならない。脳死では心臓が動き、暖かい血液が流れている。日本人は心臓や呼吸が停止し、瞳孔が開くことを人の死として受容してきた。脳死を一律に人の死とする改正案は、将来に禍根を残す、と訴えた。
《これまでに何度も記事になった。世界保健機関も5月の総会で海外での移植を原則禁止にするガイドラインを示す可能性が高まっている。今まで頼ってきた海外での移植ができなくなれば、臓器移植が最大で年間13例の国内では、レシピエントたちの運命は自ずと見えてくる。辛かろうと現時点ではその運命に従うより道はない。》
一方、国会議員に法改正を働きかけてきた患者団体には、衆院解散・総選挙で議員の顔ぶれが変わることへの不安が根強い。今国会中の採決を強く求めるのもこのためだという。
自民党の笹川総務会長は21日の記者会見で「単に困っている人が移植できるから(法改正を)やれというのではなく、片方では尊い命が失われる現実をかみしめないといけない。投票で手が震えるぐらいの法案だ」と難しさを認めた。
《最も支持者が多いとみられているA案派は、「現行法は自己決定の思想が前提。それを捨てれば別の法案で、改正とはいえない」との三石氏の言葉をどう聞くのか。》
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