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2009年3月27日 (金)

脳死移植10年で81件

毎日新聞(3/25、2/27)読者(主婦・39)投書から、要約と《 》内は私見。
 先日、愛知県春日井市で「みらいちゃん」の葬儀があった。生まれつき腸が働かない病で治療方法は臓器移植しかなく、募金(約1億5000万円)を集め、米国で手術を受け、一度は手術も成功したが、術後経過は芳しくなく、2歳あまりで亡くなった。日本の15歳未満の臓器提供が法律で認められておらず、彼女は外国で手術するしかなかった。しかし、世界保健機関(WHO)は臓器移植は「自給自足」とする動きが強まっている。そうなれば日本の子どもたちの治療法法がなくなる。国内には、今も臓器移植を待っている15歳未満の子どもたちは多勢いる。早急に問題点を整理し、法改正してほしい、というものだ。

《ただ、みらいちゃんに限って言えば、募金を食い物にするボランティアのあり方が問題視された面もあるようだ。すくう会の役員や事務局の人間のお揃いのユニフォーム、宿泊代、食費、新幹線を含む交通費など、200万円もの募金からの出費が問題になっている。本来ボランティア活動は、手弁当が当たり前の活動だ。阪神大震災の時の石原軍団や、その後長野県知事も務めた田中康夫氏は週1で東京からバイクを走らせて参加した。また多く集まったボランティアは自弁の参加だった。》

国内で移植を希望する患者は約1万3000人。厚生労働省研究班の調査によると、84年以降、海外で移植を受けたのは心臓が103人で、17歳以下が半数の54人を占めた。肝臓は221人、腎臓は198人。今も渡航する人は絶えない。米国では年間数千人のドナー(臓器提供者)が臓器を提供しているが、日本では年間10人前後で推移し広がりがない。

日本人が、金を積んで海外で移植手術を受けることについて、「臓器まで買い漁るのか」と不評だ。国際移植学会は08年5月、臓器売買など不正な渡航移植を防ぐ目的で移植臓器の「自給自足」を各国に求めた。臓器不足が世界的に深刻な状況にある中、WHOもこれを追認する方針で、15歳未満の臓器移植の門戸は、狭まるばかりだ。

法施行3年後をめどとする法改正も手がついていない。日本移植学会の寺岡慧理事長は1月、「渡航移植に頼ってきた小児の脳死移植ができなくなる」と改正を求めた。「時期尚早」と反対してきた日本小児科学会も見解の再検討に乗り出した。国会には「小児からの提供を認める」など3通りの改正案が議員提出されているが、まだ動きはない。厚労省は「国会審議を見守りたい」と静観している段階だ。

小林英司・自治医科大臓器置換研究部教授は、なぜ脳死移植がわが国で受入れづらいことなのかについて、一般社会のみならず医療従事者すら脳死に関心が薄いことを上げている。「脳死が人の死であること」「脳死ドナーとなることがいかに尊い行為か」について啓発が不十分だという。脳死ドナーの自己決定のためには、子どものころから生や死という心の問題を含む教育・啓発が必要だ。また、法改正をして早急に「脳死は人の死、家族の承諾で提供可能」という国際基準にすべきである、という。

《高い医療技術を持つ医師の立場からは、ドナーの数は多いほど喜ばしいことなのだろうが、心の教育がそう簡単に浸透しないことぐらい分かるはずだ。特に、自己主張ばかり強く利己主義にどっぷり浸かっている現在の日本人に、博愛を説いても“蛙の面にしょんべん”で、今までどおり一握りの人たちの善意に頼るしかないだろう。》

移植の専門家でつくる国際移植学会は移植臓器の強制的搾取や売買、海外の患者を受け入れることによる自国民への不利益などの問題に対し、ステアリング(かじ取り)委員会を組織した。検討を重ね昨年5月には、WHOと協力し、自給自足を呼び掛ける「イスタンブール宣言」を発したほどだ、という。

問題の解決には、ドナーの移植臓器に頼らない新たな医療の探究が急務となる。今、世界中で再生医学研究が盛んだ。この研究には、幹細胞が種々の細胞に分化して臓器に向かうメカニズムを明らかにしていく基礎研究と、その知識や技術を実際の医療に応用する研究がある。

わが国には、世界に先駆けて人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作った山中伸弥教授ら世界をリードする幹細胞研究者がいる。その幹細胞を種々の機能を持つ細胞に分化させて、実際に「移植可能な臓器を作り上げる」研究が、何年か或いは何十年か先に成功すれば、人というドナーに頼らない臓器移植が可能になるだろう。

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