児童向けの姑息なケータイ
サクラソウ
「通話のみ」として売り出される児童向けの携帯は、実はロックを解(ほど)けば通常の携帯に早変わりする。今までの何の歯止め効果のないフィルタリング機能と何も変らないようなものを、児童向け新機種として売り出すつもりだ。ちょっと目先を変えただけの、どこまでもずる賢いメーカーの販売戦略だ。
毎日新聞(3/3)から、 《 》内は私見
小中学生(高校生を含めてもよい)には携帯は持たせないことが最良の策だ。だがもう、後戻りができないほど世情は乱れ切っている。いじめや個人情報の漏洩など、ネットがらみのトラブルが深刻化する中、主な機能は「通話」だけという子ども向けの携帯電話が2社から相次いで発売された。親が設定を変えない限り、メール機能は使えないしネットにも接続できない、というのが謳い文句。子どもたちを携帯トラブルから守る切り札になるのだろうか?
《メディアも随分のんびりとしたものだ。いろいろな機関で行なった幾つもの調査や、集められたデータからは歯止めをかける筈の親に、何の危機意識もないし、育児責任を感じている親もいない実態が明らかになっているのだ。今回発売の、このような中途半端なもので危険から子どもが守れないことは、はなから分かるはずだ。》
進学、進級を控えた3月は子ども向けの携帯が最も売れる。今シーズン、子ども向けの新機種としては、auのジュニアケータイ「KOO1」とNTTドコモのキッズケータイ「Fー05A」2種が店頭に並んだ。使用者に想定しているのは両機種とも小学生だ。
ドコモ携帯は最初からメールやネット機能にロックがかかっているのが特徴。「安全安心を前面に打ち出した。今後、子ども向けの携帯はすべてこの機種に切り替えていく」とドコモの担当者。またau携帯は、親が初めにメールやネットの利用制限をかける必要があるが「これまでの機種より操作が簡単」とアピールする。
つまり、メール、ネット機能が不備なのではなく、親が暗証番号を打ち込んでロックを解除すれば問題なくメールの送受信はできるし、ネットへの接続も可能だ。ドコモ、auともに「成長に合わせて長く使える」と胸を張るが「不完全だ」と不満も上がる。
《これまでもフィルタリングでも同じ言い分でメーカーは売ってきた。しかし、親の名義で購入するのが大部分ではないか。一方で、次から次に目新しくデザインを変更する。1年もすれば旧型になり、新しいデザインを持つ友人との比較の中で、買い換えの要求が芽生えることになる。また、成長に合わせてロックを解除すれば、ということだが、成長してから購入する友人との機種と比べ、デザインもそうだが、機能も見劣りがする型でも使用するほど子供達が事物を大事にする習慣を持ち合わせているとメーカーは考えているのだろうか。》
《それよりは、単価を極めて低く抑えた単機能タイプの機種にする方が余ほど成長に合わせた選択肢は増えるのではないか。小学生用には「糸電話」に毛の生えた玩具程度のもので十分だ。親が口にする子どもの安全を確認するということならそれで十分、それ以上のものは必要ない。メーカーが姑息にもロックを考えるのは、商売上の問題でしかない。1台当たりの単価を下げたくないことから、わざと余計なものを組み込み、子ども向けをアピールするためのこじつけをあれこれ宣伝マンに考えさせるだけの話だ。》
「売れないことを恐れたのだろうが、将来もネット接続できない機種にしてほしかった」と話すのは、政府の教育再生懇談会「携帯電話問題ワーキンググループ」リーダーを務めた元日経新聞記者で政治解説者の篠原文也さん。懇談会は昨年、携帯電話は小中学生に不要と提言し、通話限定の機種の開発を業者に迫った経緯がある。
《単なるコストの問題で、低価格の通話限定機種の製造など日本のメーカーの技術をもってすれば至って簡単なことだ。現状認識からは懇談会の提言は、これ以外には考えられないまともな提言だ。一歩踏み込んで、小中学生へのメール機能つきの携帯電話の販売には、罰則付きの禁止命令でも出さない限りだめだろう。》
親はどうみ見ているのか。東京都内の販売店で新機種を眺めていた母親(37)は「ベルギーで3年暮らして帰国してきたばかり。携帯絡みのいろんな問題が起きているのでびっくりした。小2の娘に持たせたいけど、メール機能は不要です」と語った。
一方、小4女児の母親(34)は「クラスの女児の携帯普及率は5割弱だが、持たない子も母親の携帯を借り、ほぼ全員が夜になるとメールで連絡を取り合っている。全員が通話だけの機種にすれば、効果があるかも知れませんが・・」と。
「子どもにねだられると親はネット解禁してしまう」(携帯電話事業者)。一部の小学生がメールにどっぷり浸かり、親も許容している実態を、事業者側は把握している。一方で、関係者からは「機能を純粋に通話だけに限定したら売れない」といった本音も漏れる。それはまた、携帯の使用率が小学生31・3%、中学生57・6%、高校生96%(内閣府07年調査)という急激な普及に、事業者自身の戸惑いがにじみ出ているようだ。
《いみじくもそういうことなのだ。「売れなくなる」が、それ以外には取る道がない。売れなくなることが最善の手立てなんだ。商業用、事業用、或いは大人の世界での携帯の必要性はわかるが、小中高生の日常に、携帯電話の必要性は全くない。戦前の日本の商人や会社、或いは上流家庭以外の一般家庭の大半には電話はなかったが、何の不自由もなく暮らしていけた。》
《時代が違う、は携帯が必要な理由にならない。小中高生たちは、1夜明ければ嫌でも次の日には学校で顔を合わせる。したければ腐るほどの会話をする時間はある。したくなければしなくていい。影でこそこそ交わす会話に碌なものはない。》
ITジャーナリストの村元正剛さんは、「本来は、どの携帯もネット接続不可にして、ネットは、親の管理するパソコンを使うのが理想」と指摘する。
《なぜ、ここまで問題が荒れるまでに早い段階で言えなかったのか。ジャーナリストの肩書きもない私のような年寄りでも、それくらいのことは前から分かって言ってきたのだが。》
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