メタボと血圧に新指針
毎日新聞(1/17、18)から、
《メタボ、メタボとうるさいことだ。後から触れるが、腹囲の問題も昨年6月、米紙に「膨大な腹囲を測る日本」(参照「メタボリック症候群、腹囲は基準にならず」)、と揶揄されたばかりだが、今度は世界保健機関(WHO)までが、アジア人には腹囲を基準にした方がよいということで、メタボの基準に腹囲を採用することになったようだ》。
日本高血圧学会(島本和明理事長)は16日、標準的な治療方法を示す「高血圧治療ガイドライン(指針)」を5年ぶりに改定した。やや高めだが高血圧の基準に達しない「正常高値」の人でも、糖尿病など他の危険因子があれば、高血圧患者と同様の生活習慣の改善や治療が必要だと指摘。治療対象を事実上広げる判断を示した。
現在、正常高値は最高血圧130〜139、最低血圧85〜89と定めている。しかし、最近の研究で低めの血圧でも脳卒中や心筋梗塞を起こす危険性が高いことが分かり、学会は見直しに着手した。
新指針によると、
若年・中年層(15〜64歳)の目標血圧は最高130、最低85未満とし、
高齢者(65歳以上)は最高140、最低90未満とした。
糖尿病や心筋梗塞の患者では最低血圧が80未満と厳しい目標にした。
また、正常高値の人でもメタボリック症候群や喫煙など血圧以外の危険因子が1〜2個ある人は「中等リスク」と位置づけた。危険因子が3個以上か糖尿病や慢性腎臓病など他の病気がある人は「高リスク」として、すぐに降圧薬による治療が必要だとした。
一方、医師が測ると高めになる「白衣高血圧」やストレスによる「職場高血圧」などを指摘。家庭で血圧を規則的に測ることが重要だと強調した。家庭血圧計は診察室より低くなるため、目標値は最高、最低とも5mmHgずつ低く設定した。朝食前と就寝前の1日2回測り、1週間の平均値で判断する。
一方、心臓病や糖尿病などになりやすい人を見つけるための新しい基準として、WHOが腹囲を採用することになった。WHOは従来、肥満度を示すBMI(体格指数)が25以上の「肥満」を高リスク集団としてきたが、アジア人にはBMIが低くても心臓病などで死亡する例が多い。新基準はアジア地域では「男性85センチ前後、女性75センチ前後」となる見込みで、導入されれば日本の「メタボ健診」の腹囲基準に影響を与える可能性がある。
WHO本部(スイス・ジュネーブ)で12月開かれた専門家会合で決まった。6月ごろ正式決定する。BMIは、体重を身長(メートル表示)の2乗で割った数値で、WHOはBMI25以上を「肥満」とし、心臓病や糖尿病、高血圧などの生活習慣病への注意を呼びかける基準としてきた。しかし、精度への疑問の声もあり、BMIに代わる新しい基準を検討していた。
同会合で約600の文献を検討した結果、アジアではBMIが25以下でも心臓病や糖尿病になる危険性が高く、BMIより腹囲を使った方が、より正確に高リスク集団を見つけられると判断した。
新基準は体格などの違いを考慮して3種類とする。
▽アジアなど、腹囲が細くても病気になりやすい人が多い地域
(男性85センチ前後、女性75センチ前後)
▽欧米など、腹囲が太いと病気になりやすい地域
(男性100センチ前後、女性90センチ前後)
▽中等などどちらでもない地域
(男性95センチ前後、女性80センチ前後)
とする方向で検討中だという。
日本では08年度、メタボリック症候群対策の特定健診(メタボ健診)が始まった。この場合の基準は「男性85センチ以上、女性90センチ以上」。WHOはこの新基準をメタボ健診の基準とは別の概念と位置づけており、特に健診制度や血液検査が普及していない発展途上国などでの活用を見込んでいる。
WHOが、生活習慣病の危険性を判断する目安として、肥満度をみるBMIに代わって腹囲を採用することになった背景には、「肥満でなければ生活習慣病にはかからない」という先入観が、予防や発見・治療を贈らせる例が少なくないことはある。
例えば日本の糖尿病患者は痩せていても発症する例が多い。WHOはこうしたアジア人の特性を考慮し、BMIより腹囲の方が、隠れた病気を見落とす可能性は低いと判断した。もちろん腹囲も肥満の人ほど大きい傾向はあるが、新基準はアジア人の基準を欧米など他地域より細めに設定し、高リスク集団を見つけることを目指す。
一方、日本のメタボ健診は、診断の第1条件に「腹部肥満」を据えたため「男性85センチ、女性90センチ」という数値が独り歩きし、「腹囲が基準以下なら健康」との先入観を受診者に広げた。同じ仕組みを採用している国際糖尿病連合は、腹囲をメタボ基準の必須項目から外す方向で検討中だ。
WHOの新基準をこのまま日本人にあてはめた場合、多勢の男女が該当したり、メタボ基準との並立で混乱を招く可能性もある。「科学的根拠に乏しい」と言われるメタボの腹囲基準の見直しも含めて、整理が必要だろう。基準を検討するWHOの専門家会合に出席した門脇孝東京大教授(糖尿病・代謝内科)は、「WHOの基準は病気の危険性に気づく目安として使ってもらえばいい。数値で一喜一憂するためのものではない」と説明する。
《日本人の痩せ願望は異常の極みだが、いずれにしても医者が100人いれば100の学説があるような世界だ。太り過ぎもいけないが、痩せ過ぎはもっと不健康だ。なにごとも中庸が一番いい》。
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