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2008年12月25日 (木)

学士力

『末は博士か大臣か』。その昔、“学士さま”と呼ばれた大卒者は、選りすぐりの秀才でなければ卒業はおろか、入学さえままならなかった。学士さまは社会からは一目(いちもく)もニ目も置かれるエリート集団だった。

敗戦を機に、新しい憲法、第3章第26条で、教育を受ける権利及び義務教育について規定され、その条文で
 1、すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
 2、すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。
と定められた。

その能力に応じてひとしく教育をうける権利は、高望みしなければ当然の理屈だが、それで済まなくなったのが片や幼い頃からの塾や予備校の花盛りの学歴社会であり、片や皆につられて大学だけは行っておこうかレベルの青春謳歌の男女交際が目的のような学園生活だ。

また、往々にして義務教育の甚だしい勘違いがあるが、親、保護者はわが子に教育を受けさせなければならない、というのが憲法でいう義務教育なのだが、それを都合良く、「これを無償とする」だけを取りあげて、全てを国や地域行政に求めようとする解釈がはびこり、モンスターペアレンツなどと呼ばれる怪物たちが跋扈する世情だ。

戦後、次々と数を増やして行った大学は、今ではピンからキリまで存在し、金さえあれば選り取り見取りで能力に応じて希望すれば誰でもが入学できるほどの数まで増えた。一方、すでにその数は飽和状態を超えて淘汰の段階に突入している多くの大学は、経営難から学生のレベルを問わず、資金集めだけの学生の頭数の確保でやっと破綻を免れている状態が続いている。そのために、年々学生の学力低下が目立ち、メディアなどで学力調査が発表されるたびに、大学とは名ばかりの中学生レベルの人間が集まるところまでになった大学もある。

毎日新聞(12/24)から、
 中央教育審議会は24日、大学の4年間で身につけるべき能力「学士力」を、国が指針として明示することなどを求める大学教育の改善策をまとめ、塩谷文部科学相に答申にした。「大学全入時代」を迎えて入学者の学力水準低下を懸念したうえで「各大学は安易に学生数確保を図るのでなく、入試のあり方を点検すべきだ」と指摘している。大学卒業の条件についても厳しくするよう求めた。答申を受け、文科省は各大学に改善を促す。

答申は、「学士力」を、
 専攻分野の基本的知識を体系的に理解する力。
 問題を発見し解決に必要な情報を収集、分析して解決できる力、などと定義。
「大学は学位を与える際の方針を具体的に示し、積極的に公開すべきだ」として、大学卒業の条件を厳しくするよう求めた。

また、「(入学者の学力向上のため)必要に応じて補習などの配慮を行なっていかなければならない」などと提言した。

一方、塩谷文科相は、フリーターや若年無業者の増加を踏まえ、高校や大学から社会に出る際の対応策となる「キャリア教育・職業教育のあり方」について同日、中教審に諮問した。


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