日本、クラスター爆弾全廃へ
毎日新聞(11/20)から 《 》内は私見
《紙面の文字を見て目を疑った。あれほどのらりくらりと廃止に二の足踏んでいた日本が、一気に全廃にまで進むとは思いもしなかった。続いて「最新型も保持せず」とある。だが、しかしだ、子爆弾は撒き散らさないが、これからはでっかい単体弾頭の爆弾を集めることになるということだ。どっち道殺人兵器であることには変わりはない》。
不発弾が市民に被害を与えているクラスター爆弾について、政府は、現有爆弾を全廃したうえで、欧州諸国が維持する「最新型」のクラスター爆弾も今後、導入しない方針を固めた。これで日本はあらゆるクラスター爆弾を保持しないことになる。人道面を重視したためで、代わりに子爆弾を蒔き散らさない単弾頭の爆弾を整備するため、約73億円を09年度予算に計上することになる。
《どのような爆弾にしたところで人を殺傷することには変りない。クラスター爆弾が開発される前から無辜の民の殺傷は、戦(いくさ)の度に繰り返されて来た。人道的というのなら、戦などないに越したことはない。夢想家と言われようが、武器の優劣、強弱で動いているような世界には、永遠に平和などくることはないだろう》。
日本は、子爆弾を数百個撒き散らし、不発率が極めて高い「旧型」や「改良型」のクラスター爆弾を4種類保有している。政府は12月3日、クラスター爆弾禁止条約に署名する予定で、09年度から廃棄方法の調査を始める。批准後は8年以内に廃棄する義務を負う。
ただ、禁止条約案では、子爆弾が数個と少なく不発率が極めて低い「最新型」は例外として保有が認められた。独仏などが生産しており、欧州諸国が導入するとみられる。
政府は人道上、不発弾による「副次的被害を避ける」ことを重視。最新型でも不発弾による被害が完全になくなる保証がなく、コストも嵩むため、導入を見送り、子爆弾による被害の根絶を目指す方針を固めた。同時に条約の規制による影響を「極小化」する方策を模索。今後、子爆弾を持たずGPS(全地球測位システム)によって正確に目標に誘導し、より遠距離から狭い範囲を攻撃するロケット弾などを導入することになりそうだ。
日本は、海岸線から上陸する敵の「着上陸侵攻」を、大量の子爆弾を蒔くことで「面的に制圧」するため、クラスター爆弾を配備してきた。条約案の採択後、防衛省や自民党内の一部から「廃棄する旧型に代え最新型を導入すべきだ」との声が相次いだ。しかし、現在は着上陸侵攻の可能性が考えにくく、「面的制圧」の効果を疑問視する見方もあり、必要性が低いと判断した。
《理由は他にもあるだろう。「面的制圧」で使用するクラスター爆弾が、不発弾混じりで国土の海岸線に住まう住民の上にも降り注ぐ危険性を孕んでいる。敵の上陸を防ぐためには、国民がリスクを負って死ぬこともやむを得ないと考えるのなら、「最新型」も必要になるのかも知れない。》
《敵の着上陸侵攻の可能性が低いのは今に始まったことではない。敵とは仮想敵の北朝鮮のことだろう。例えばテポドンを打ち上げれば日本に向けて撃ち、日本海に落ちたという。その実は北朝鮮は自国の沿岸からロシア沿岸方向に撃ったものだ。日本に向けたものは皆無に等しい。だが日本は、仮想敵を作っておかなければ自衛隊に予算をつけることができない。メディアも一緒になって今日にでもテポドンが飛んで来るように騒いだ》。
一方、欧州連合(EU)の欧州議会は20日、フランス東部ストラスブールで開いた本会議で、不発弾による民間人被害が深刻なクラスター爆弾を禁止する条約案に、EU加盟27カ国を含むすべての国が署名するよう求める決議案を採択した。「すべての国」に禁止条約案の早期署名、批准、履行を呼びかけ、条約発行から禁止措置を取るよう促している。
禁止条約案は、英仏独、イタリア、スペインなどEU主要国や日本の賛成で採択された。オスロ・プロセスには同爆弾を大量に持つ米露中などは参加していない。
欧州議会によると、EU加盟国の中では、フィンランドが禁止条約案に署名しないと公言しているほか、ポーランド、ルーマニア、ギリシャ、エストニア、キプロス、スロバキアが署名の意向をまだ表明していない。欧州議会の決議に法的拘束力はないが、これらの国に政治的圧力をかける狙いがある。
《自衛隊は、日本全土に仮想敵対策の迎撃基地を次々に作り始めた。今でも着上陸の可能性は低いといながら、クラスター爆弾に代わるロケット基地の整備は必要だと言う》。
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