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2008年11月24日 (月)

激務の勤務医、離職続々

毎日小学生新聞に寄せられた質問に論説委員が回答するコーナーの本紙への転載(11/23)から。
『お医者さんが足りないって本当ですか』(横浜市 M・I:高2)への回答。

先月、東京都内の妊婦が都立墨東病院など8カ所の病院に受け入れを断わられ、脳出血で亡くなった。新聞などで連日大きく取り上げられたので知っている人も多いはず。当時、墨東病院には当直の産婦人科の医師が1人しかおらず、「対応が難しい」と診察を断わった。女性はその後も別の病院に次々に受け入れを断わられたが、結局、墨東病院で手術をし、赤ちゃんは無事産まれたが、女性は亡くなった。

墨東病院は、危険性の高い妊婦と赤ちゃんのトラブルに24時間対応する、東京都の「総合周産期母子医療センター」に指定されている。ところが、産科医が辞めて、穴埋めができていない状態であった。当日は土曜日で、本来なら2人の当直勤務が望ましいとされていたが、医師は1人しかいなかった。

《産科救急の「最後の砦」と位置づけられる全国75カ所の総合周産期母子医療センターのうち、夜間と土日の産科の当直医が1人しかいないセンターが計45施設と全体の6割に上ることが、厚生労働省の初の調査で分かったという。07年度中に母体の受け入れを一度でも断わったセンターは7割の53施設あった。受入れ拒否の理由に集中治療室の満床を挙げる施設が多い一方、診療可能な医師が不在とする施設も2割を超え、産科医不足が母体救命に支障をきたしている実態が裏づけられた。》

《厚労省は総合周産期センターの整備指針で産科医の24時間対応を求めており、MFICU(母体・胎児集中治療室)が7床以上なら「複数による対応が望ましい」としている。調査によると、MFICUが6床以下のセンター53施設のうち39施設で夜間と土日の当直が1人、7床以上でも22施設中6施設が指針に反して1人だけだった。》

《また、07年度に母体の受入れを断わった理由(複数回等)は「NICU(小児集中治療室)の満床」が93%と圧倒的で、56施設は年間の病床利用率が9割を超えていた。MFICU満床による受入れ不能は59%、医師の不在は23%だった。》

実は、医師不足は産科だけでない。小児科や麻酔科なども医師が足りないため、全国各地で病院が閉鎖されたり、診療科が廃止・縮小されている。

医師の足りないことの背景には
1)、国が、医師の数を抑える方針を長い間変えなかった
2)、2004年から始まった新人医師の臨床研修制度で、大学病院が人手不足になり、それまで医師を送りだしていた病院から医師を引き揚げた
3)、病院で働く医師(勤務医)の仕事がきつく、待遇がよくない
4)、女性医師が結婚や子育てで辞めていく
5)、医療事故で訴えられ、裁判になるケースが増えている
など、複雑な理由が絡み合っている。

日本の医師の数は、人口1000人当たり2・1人(06年)。ドイツ(3・5人)やアメリカ(2・4人)などに比べて少ない。このため、政府はようやく来年度の対策を打ち出し、大学の医学部の定員を今年度より693人増やし、過去最大の8486人とする計画を立てた。また、医師が辞めるのを防ぐための対応策などをまとめた。

《だが、8486人という医学部定員は、06年度(8602人)、07年度(8573人)、08年度(8535人)それぞれの医師国家試験受験者数と比較して、増員の実感はない。来年度の医学部の定員増加の対応が、必ずしも医師の増加につながるとは限らないだろう。因に上の各年度の試験合格率は90%、87・9%、90・6%となっている。》

《今年度の合格率は過去最高の数字であり、7733人の合格者のうち、
      合格者(人)構成比(%) 合格率(%)
  男性   5067   65・5    89・2
  女性   2666   34・5    93・3
女性の34・5%の合格率は、3人に1人以上が女医ということになる。その効果は、特に産科施設として女医だけの病院も現れ、女性の診療には喜ばしいことと言えるのだろう。》

《確かに、インターネットをほんの少し調べるだけで、婦人科、産科において女性が女医を求め、男性医師を避ける偏見に満ちている様子がいくらでも見て取れる。そのような空気の中で男性医師は勤務しているようだ。だがその反面、女性医師のネックもある。女性医師の研修時代やキャリアを形成する時期が、女医本人の結婚や出産・育児と重なり、第一線の職場からの離脱が発生する。それに加えて特に産科は日時や曜日、昼夜関係のないのが出産だ。女性医師にも自身の妊娠や出産だけではない。現在の男子医師でも堪え難い当直を含む過労勤務が待っている。体力の劣る女医がどこまで体力的に耐えられるかの問題が残る。》

いずれにしても、文科省、厚労省は早く対策を実行し、誰もが安心して暮らせるよう、手を打ってほしいものだ。

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