後をたたない海外での臓器移植
10日のブログで移植用の死体が足りないことから法改正の動きが続いていることを書いた。2年毎に行なわれる「臓器移植に関する世論調査」では、移植用の死体を増やすために、現行法で一切認めていない15歳未満の臓 臓器提供の制限を、15歳未満からも提供できるようにするべきだとの回答が69%であることなどをまとめた。(成人男女3000人中、1770人からの回答;回収率59%)。それでも死体の数に不安があるとみて、提供可能年齢を12歳以上に引き下げることや、「脳死を人の死」と定め、年齢、意思表示など無視して提供可能にしよう、との案が衆院厚生労働委員会で審議されている。
調査で69%の人が15歳未満の臓器提供を認めると回答していても、現状、臓器提供意思カードやシール、意思表示欄のある医療保険の被保険者証については、
「持っている」・・・ 8・4%
「持っていない」・・91・6%
となっており、思考と現実との見事な乖離を示していた。
昔なら、運命と諦めたものが、医学の進歩は何とかすれば助かるかもしれないとの望みを生み、日本国内だけでは足りない死体を求めて海を越え、海外へ渡るケースが止まない。
【閑話休題】
毎日新聞(11/12)から 《 》内は私見
中国人の臓器提供者を日本人に営利目的で斡旋した疑いが強まったとして、神奈川県警は12日、中国での臓器移植を仲介している「中国国際臓器移植支援センター」(遼寧省瀋陽市)の長瀬博之代表(52)=横浜市西区=を一両日中にも臓器移植法違反容疑で事情聴取する方針を固めた。警視庁は国際刑事警察機構(ICPO)を通じて中国政府に協力を要請、日中間の臓器移植ビジネスの実態解明を目指す。
《何としても臓器を得たい一心の臓器移植希望者を狙った営利目的の仲介だ。希望者にとっては悪徳だろうと何だろうと、命が助かれば誰の臓器だって構わない、金に糸目もつけない。法律を犯してでも助けたい。そこにあるのが移植法だ。地位や名声、金銭などで公平性が失われることがないように、移植医療の原則を法制化したものだ。》
調べなどによると、センターは04年ごろからインターネットのホームページ上で、日本人の臓器移植希望者を募集。中国人から提供された臓器を中国で有料で移植していた。04年1月〜05年12月に日本人計108人が移植手術を受けたとされる。長瀬代表は10月30日、移植の仲介件数を実際より多く宣伝したとして、瀋陽市中級人民法院(地裁)から「虚偽広告罪」で懲役1年2月と罰金10万元(約140万円)を言い渡され、国外退去処分で11日に帰国した。
♦臓器移植法
97年10月に施行された。移植のため臓器提供する場合に限って、脳死は人の死であると定め、脳死者からの臓器提供を可能とした。死体、生体を問わず、臓器提供の対価として利益の供与、提供、営利目的の斡旋などをしてはならないと規定。違反行為と知りながら臓器を摘出する行為も禁じている。違反した場合は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金。
神奈川県警は、中国側は臓器移植の仲介については、一つの事件を2度裁くことを禁じる「一事不再理」には当たらないと判断した。臓器移植法のどの条文を適用するかは事情聴取の上で判断することになる。
長瀬代表が事情聴取を受ける見通しになった問題の背景には、国内で、脳死臓器移植が年10件前後にとどまり、移植を希望する患者がなかなか移植を受けられないことがある。このため、海外で移植を受ける「渡航移植」に頼る患者が後を断たない。
厚生労働省研究班が実施した調査によると、日本から中国に渡航し、移植を受けた患者は腎移植で106人、肝移植で少なくとも14人に上る。同調査によると、主治医が海外の移植施設を紹介する心臓移植などと違い、腎、肝移植に関しては、斡旋者や紹介者が不明だったり回答がない例が目立った。患者同士のネットワークやウェブサイトで情報を得たり、中国国際臓器移植支援センターのような機関を頼り、個人で渡航する患者が多いとみられる。
日本の臓器移植法は、臓器提供が自発的であること、移植を受ける機会が公平であることを原則としている。臓器売買や営利目的の斡旋が認められると、低所得者などの弱者が暗に提供を強要されたり、金銭的に恵まれた人だけが移植を受けられることになり、移植医療の原則が揺らぐからだ。国際移植学会も今年5月、営利を目的にしたケースや渡航先の国民の移植機会を減らすような渡航移植を「移植ツーリズム」と位置づけ、禁止すべきだという宣言を公表した。
患者団体「日本移植者協議会」の鈴木正矩相談役は「業者が日本の法律を説明せず、仲介料だけ取っていたとすれば、苦しんでいる患者をだますことになるので許せない。国内の移植を推進するためにも、今回のような仲介業者は摘発していく必要がある」と話す。
一方、今回の問題について一定の理解を示す専門家もいる。中国の移植問題に詳しい栗屋剛・岡山大教授(生命倫理)は、長瀬代表とも面識があり、「(海外での斡旋は)法的には問題があるが、個人的には非難する気にはなれない。国内で移植ができずに困っている人がいるという現状がある」と話す。
《栗屋のいう、「国内で困っている人は多勢いて」も、移植を受けられる人は、大金を投入できる人に限られる。まして想定できるように、得られる臓器は海外の貧困層の人の命を賭した臓器の提供ということもあり得る。国内で臓器がなくて困っているから、支払う金があるからということで、移植を受けに渡航するものではないだろう。》
《06年5月に『臓器移植』に書いた。ずっと私の考えは変っていない。繰り返すことになるが我が妻、肉親への提供には命も惜しまないが、他人への臓器提供をするほども広い博愛心は持ちあわせていない。反対に我が身に臓器が必要な状況が発生したとしても、他人の臓器を望むことはないだろう。もし、そうなった時には我が運命は素直に受け入れる覚悟でいる。すべては生者必滅会者定離だ。》
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