携帯とフィルタリング
毎日新聞(10/6)から。 要約と 《私見》
今年6月、有害サイト規制法が成立し、携帯各社にフィルタリングサービスの提供が義務づけられた。
携帯電話大手3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル)は9月12日、18歳未満の契約者については既存・新規を問わず来年1〜2月以降、保護者の同意がない限りフィルタリングサービスを全員に適用すると発表した。
携帯サイトの有害情報から子どもを守る有力な対策として、有害サイトへの接続を制限するフィルタリングサービスが義務づけられたものだ。サイト運営会社も問題のある書き込みを24時間態勢で監視するが、どのくらい有効なのだろうか。
有害サイトかどうかは、携帯各社が判断する。対象には
アダルトサイト
出会い系サイト
自殺サイト
コミュニティサイト(日記やプロフィルを書き込んで誰とでも交流できる)などが有害サイトとして位置づけられている。
最近、書き込み内容を巡る子どもの事件やトラブルが続出しているためだが、こうしたサイトの利用者は大半が10代のため、サイト運営業者にとって、フィルタリングの強化策は携帯各社にとって生き残るための死活問題となっている。
しかし、有害サイトの対象から外れる道があるのだ。民間団体「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)*」から「認定サイト」のお墨付きをもらえば済むのだ。
* EMA -- (Content Evaluation and Monitoring Association)は、モバイルコンテンツの健全な発展と、青少年の発達段階に応じた主体性を確保しつつ違法・有害情報から保護することを目的として2008年4月に発足した第三者期間。
<EMAの主な活動>
1. 青少年の利用に配慮したモバイルサイトの審査・認定及び運用監視業務
2. 青少年保護と健全育成を目的としたフィルタリングの検討と推進
3. ICT(情報通信技術)リテラシー**の啓発・教育活動
** Literacy -- 読み書きの能力。ある分野に関する知識、教養、能力
EMAの認定を受けるには、取り敢えず
▽運営業者による常時監視
▽青少年に配慮した広告掲載基準の策定
▽利用者の年齢管理
など22項目の基準をすべてクリアしなければいけない。
9月16日、「モバゲータウン(モバゲー)」が認定サイトになった。モバゲーは無料でゲームができたり、色々な人とメッセージが交換できる。06年2月の開設からわずか2年半で会員数は1164万人に達し、うち8割は10代と20代が占めている。EMAに認められた監視体制はどんなものか、モバゲーを運営する「ディー・エヌ・エー」(東京都渋谷区)の監視室を覗いた。
約260平方メートルのフロアに、百数十台のパソコンが並んでいる。 24悲観態勢で常時100人前後の監視員(アルバイトと契約社員)が目を光らせる。監視室は新潟県にもあり、東京と合わせ420人態勢。監視費用は年間約8億円に上り、殆どが人件費だという。
監視員は、いじめを示唆するなどの不適切な表現がないか、サイト内の検索を繰り返す。問題と判断すれば削除したり、警告したりする。電話番号やメールアドレスなど、会員同士がサイト外で連絡を取ることにつながる内容も監視の対象になっている。トラブルにつながる恐れがあるためだという。
書き込みは毎日400万件近くに上るため、自動検索で「危険度」が高いと判断された順に監視員が書き込みの内容を1件ずつ読んでチェックして行く。しかし、最近になって、監視網をすり抜けようと隠語を使うケースも増えてきて、いたちごっこの様相を見せ始めているという。
携帯電話の番号はそのまま数字で書くと削除される。そこで、090は「ぜぐぜ」、080は「ぜはぜ」。メールアドレスの中に出て来る携帯電話会社も「こども(ドコモ)」「やわらか現行(ソフトバンク)」英雄(au)」となる。また「死ね」は「氏ね」と書くようになる。同社広報担当は「常に『隠語』情報を更新していかなくてはいけない」と話す。
「死ね」「うざい」という言葉が多く使われていても、本意と冗談の見極めが難しいケースも少なくない。単に日常会話レベルの場合もある。前後のやり取りを注視しながら判断するという。
認定を受けた後でもEMAの監視下に置かれ、22項目の認定基準に違反が見つかった場合は改善指導を受けることになる。
ようやく始まった業界の自主規制だが、疑問や不安の声も少なくない。「決してフィルタリングは万能ではない」と指摘するのは、群馬県で保護者向けに携帯電話やインターネットの現状や問題点についての出張授業を行っている「子どもセーフネットインストラクター」の1人、吉田茂幸さん(44)。自身も高校生と中学生の2人の子を持つ親だ。「フィルタリングがかかっている子ども用の携帯電話でも実際はアダルトサイトが見られてしまう。サイト運営者が行う監視も限界がある。安心はできない」と話す。
EMAには今年7月の認定申請受付け開始以来、20数社のコミュニティーサイト運営業者から申し込みがあった。そのうちモバゲーなど7つのサイトが認定された。しかし、常時監視には多額の費用がかかる上、フィルタリングにも抜け穴があるとすれば、「逃げ得」業者が横行する可能性もある。
来年1月以降、18歳未満に一斉にかけられるフィルタリングも対象はあくまで契約者だ。子どもの場合、契約者は親であるケースが多い。その場合は親から「フィルタリング必要」との申し出がない限りは閲覧制限はかからない。ややこしいが、冒頭のフィルタリング全面適用はあくまでも、契約者が子どもの場合の話しだ。
各社とも請求書にパンフレットなどを同封してフィッルタリングサービスの周知を図っているが、どこまで浸透するかは不透明だ。
群馬県だけでなく鳥取県などで、保護者をネットや携帯電話に精通したインストラクターに養成する取り組みを実践している群馬大の下田博次特任教授(情報メディア論)は「最後は親がどこまで関心を持って監視できるかが鍵になる。『人間フィルタリング』が必要です」と話している。
《有害サイト規制法が企業の自主規制に決まったおり、とても自主では満足な規制にはならないことは明らかなことだと書いた。子どものことを考えてやるなら思い切って国の規制でやることが必要だと。携帯のフィルタリングと同じように、若年層に蔓延しているゲームの「年齢区分」について、親、保護者がどれだけ関心を持っているか、調査がある。》
テレビゲームソフトに、内容に応じてレーティング(年齢区分)が表示されているのを知っていますか—。レーティングの審査をしているNPOが、アンケート調査で全国のPTAや自治体などにこんな質問をしたところ、「知らない」が6割近くに上った。子どもへの影響を考慮して、年齢に応じた適切なゲームを選べるよう、02年10月から導入された制度だが、認知度が低く、十分機能していないことが分かった。
このレーティング制度も業界の自主規制で、NPO法人「コンピューターエンターテインメントレーティング機構(CERO)」(東京都千代田区)が販売前の新製品について審査を行い、
A ・・ 全年齢対象
B ・・ 12歳以上
C ・・ 15歳以上
D ・・ 17歳以上
Z ・・ 18歳以上
の、5種類に分ける仕組みだ。製品のパッケージや広告宣伝などに表示される。Zは他のゲームと別に陳列され、購入の際は年齢確認が必要となっている。愛知県や大阪府など12府県はZのゲームを「有害図書」に指定している。
調査は、現行制度を見直すために07年度に実施した。ゲームに関する苦情や相談が寄せられることが想定されるPTAや自治体、消費者団体など全国の500団体に質問紙を送り、142団体(回答率28・4%)から回答を得た。レーティングについては58・5%が「知らなかった」と回答。一方、70・4%が「必要だと思う」としており、認知度と必要性のギャップが目立った。
また、これとは別に保護者ら39人に実施したインタビュー調査でも「子どもに買い与える時に参考になる」「ダメだという理由を説明しやすい」など評価する声が目立つ一方で、「知り合いに聞くと知らない人が多い」「表示マークが目立たない」との指摘があった。認知度を高める方法については、ゲームソフトのテレビCMでの告知のほか、「学校などで児童や保護者に教えるべきだ」との意見もあった。CEROは「効果を上げるために、どういうことができるか詰めていきたい」と話している。
《インターネットにしろゲームにしろ、親や保護者への啓蒙は無駄だ。言いたいことは言っても聞く耳を持たない。何でも他人に丸投げして他人まかせだ。また、携帯にしろゲームにしろ、買い与えるだけであとは全く感知しない。フィルタリングも年齢区分もすでに何年も前から情報は世に出ているものだ。この低い認知度は驚き以外の何ものでもない。そして、この裏返しがモンスターであり、ヘリコプターと名付けられたペアレントたちだ。皮肉にも、放任と過干渉とで親たちは、危ない均衡が取れているのだろう。》
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