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2008年10月27日 (月)

学校選択制度は失敗だったか

「学校選択制」見直し - 2 - 08/10/23

上は、東京都江東区の小学校で、来年度からの歩いて通える通学区域への入学を原則とする見直しと、前橋市の小学校での入学生徒数の偏りなどを理由に、11年度からは原則学校選択制度の廃止を決めた経緯を書いた。

学校選択制度は、全自治体の約1割が導入
規制緩和のため97年に旧文部省が通学区域の弾力的運用を認める通知を出し、各地に広まった。06年の文部科学省調査では、全国で約1割の自治体が導入している。28市区が導入する東京都内では、学校を自由に選べる制度をとる自治体が多く、学校間の人数の偏りが顕在化している。入学率(校区内で住民登録している就学者数に対する入学者数の割合)に大きな差が出ている。

毎日新聞(10/27)から 要約 《》内は私見
23日に続いて前橋市の学校選択制度廃止までの経緯がレポートされた。
前橋市は全国で初めて、学校選択制度を廃止する。導入から僅か4年半のことだ。特定の中学校に生徒が集まり、生徒数の偏りが無視できなくなったからだ。地域との関係が薄れ、メリットより課題が大きくなったゆえの決断だった。

ある市立中学では04年の選択制導入後、生徒が150人も減った。「野球部に9人揃わなくなり、試合に陸上部の選手を借りたこともある。今年は近くの中学と合同練習を始め、統一チームで試合に臨んだけれど士気は今一つでした」と校長は振り返った。

10年ほど前に荒れた時期があったためか、年々入学者が減った。部活動は停滞し、野球好きの男子は近隣の中学に流れた。授業への幤今日もある。生徒の減少に伴って教員も減らされた。複数の教員が教えるチームティーチングで、技術の先生が数学の教室に入ることもあった。保護者からは「専門ではないのに」との苦情も出た。1年生は2クラスがやっとの人数だ。「本当は4クラスが理想。毎年のクラス替えで新しい人間関係を作りたいけれど・・・」と校長は溜息をついた。

《他らしい人間関係のためのクラス替えも教育現場としてはいいが、モンスターペアレントがいてはままならないことと重なって人数と併せて頭痛の種だろう。》

風評を抑え、ありのままの姿を地域に伝えたいと、考えた校長は学校通信を地域の回覧板に載せた。全国学力テストの成績は学校評議員に知らせた。県平均を上回る科目が多かった。農家の協力で大根作りを授業に取り入れるなど、地域との連携も重視している。生徒指導では毎朝、靴箱を見回り、来ていない子にすぐ連絡を取る。不登校はない。校長は切々と訴えた。「あの学校はよくないと言われるが、どこが悪いのか。ちゃんと見た上で言って欲しい」と。

《現在の、自分さえ良ければそれでいいと思う反面、人と同じでなければ安心できない日本人特有の付和雷同の保護者のレベルでは、選択基準、選択指標に不足し、風評に振り回されて、特定の学校に対する関心が集まることは想定できることだ。また、廃止の原因ともなった地域と保護者、子ども自身の連帯感が希薄化することも生じてくる。》

一方、生徒数が3割増えた市立第五中もある。市の中心部の静かな住宅街にあり、交通の便も良い。陸上部は県トップレベルで、卓球部も関東大会に出場、全国学力テストの成績も県平均より上にある。教室にはぎっしっりと生徒が詰まる。1年生女子は「伝統校だからいいと思った。友達もつくりやすい」という。学区外から選択制で入学した生徒の割合は、3年生で21%、2年生で24%、1年生で30%と年々増えている。桐生直校長は「自転車通学が多く、安全面が少し不安」と話す。「新しいマンションも近くに建ち、さらに生徒が増えそう。少人数授業で二つ分の教室を使う教科もあるので、教室不足が心配」だという。

前橋市の学校選択制の利用者は年々増え、1年目の160人から今年度は421人に達した。一方、特定の中学で生徒数の増減が著しくなり、改革を重ねても減少を食い止められなくなった。

別の学区に通う子が地元の行事に顔を出しにくくなる現象も生じ、自治体から苦情も届き始めた。同市五閑町で自治会長を務める村田良治さん(57)は「お墓で肝試しをする夏祭りや、神輿を担ぐ秋の農業祭もあるのに、顔見知りの子が出られず可哀そう。中学校に貸した田んぼで田植えなどをするが、地元の子が農村部ならではの体験をできないのも寂しい」と話す。

こうした状況から市は「学校にとって地域の果たす役割は大きい」と、10年4月入学者を最後に廃止を決めた。市教委の清水弘己・学校教育課長は「多人数の学校は校庭が狭くなりプールも順番待ち。大きいならではの悩みもある」と語る。選択制の良い点は各校がカリキュラムに工夫を凝らすようになったことだという。しかし「読書やドリルに力を入れても、それで選ばれることはほとんどないのです」と清水課長は苦笑したという。

《風評が学校選択の指標になり、学校独自の特色作りをしても報われることがないのが実情のようだ。学校選択制度のスタートから実情を調べている専修大学の嶺井正也教授は次のように話す。》

「公教育の質を上げるために導入されたが、教育内容で選択する人は少なく、目的と実態がずれている。また、選ばれる学校とそうでない学校が固定化され、逆転は難しい。文教地区にあり部活も盛んな伝統校が好まれ、小規模校は避けられることが多い。選択基準は東京でも金沢市や広島市でも同じ傾向だ。荒れなどの噂は、昔のことだったり実態がない場合も多いが、教員の努力で拭い去るのは難しい。」

「先生たちは学校の特色作りに懸命だが、その努力は報われにくい。品川区の教員は、新校舎で人気の小学校の近くで苦労しており「校舎やグラウンドを整備して条件を均一にしてほしい」とぼやいていた。地元に住んでいない子どもへの家庭訪問や生徒指導も苦労が多いと思う。」

「自由に選べる方がいい、という世の中の風潮があり、存続を望む保護者は多いと思う。しかし、極端な人数の偏りは好ましくない。前橋市は現実をよく見据えた英断をしたと思う」と。

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