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2008年10月19日 (日)

おらが国 次々と落選

今年7月、平泉が落選した折に、世界遺産の候補地に関しては、世界に開かれていなかった時代の狭い島国日本国内の歴史や文化では、訴える力は決して強いものではない、よくよく考えた上で単なる観光客集めの「おらが国」自慢にならないようにするべきことを書いた。

文化庁も、ぞろぞろと出される「おらが国」に食傷気味で、平泉の二の舞いになることを恐れ、事前審査を厳しくすることを決め、改めて候補の審査を行なっていたが、9月に入って26日、「世界文化遺産」暫定リストを発表した。

毎日新聞(9/29)から、 要約と 《》内は私見
世界文化遺産に国内から推薦する候補を記載する「暫定リスト」に「金と銀の島、佐渡」(新潟県)など5件を追加すると発表した。他に提案されていた27件は見送った。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産委員会が登録抑制傾向にあることなどを踏まえ、自治体からの公募は打ち切ることになった。観光振興を狙った自治体などの「世界遺産ブーム」も区切りを迎えそうだ。

自然遺産を含めリスト記載は計14件となる。追加5件のうち、百舌鳥(もず)・古市古墳群(大阪府)は、構成資産の陵墓を宮内庁が管理し、文化財指定されていない。文化庁は国指定文化財であることを推薦の条件にしてきたため同等と看做すことに問題がないかどうか確認後、記載することとする。他4件は年内にも記載し、同委員会に提出するという。

ただ文化庁は5件について「記載済みの候補と比べ、国際的評価を得るまでの道のりは相当遠い」と厳しく評価する。佐渡は「鉱山遺跡を中心に、世界遺産の石見銀山(島根県)と統合した形での登録を目指すべきだ」とし、北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道、青森県、岩手県、秋田県)は「4道県以外の遺産と組み合わせるのが推薦の条件」とした。

《北海道、青森、岩手、秋田とそれ以外との組み合わせとなると、これもまた、変なことになりそうだ。日本中には遺跡群は結構の数ある。甚だしくは、北は北海道から南は沖縄まで日本中の遺跡群が、なんらかのつながりで隈なく結びつけば、日本の国全体が遺跡群のまとまりになってしまう。それにもまた、何らかの手枷を嵌めなければならないだろう。ということで、埼玉県が候補に提出していた「埼玉古墳群」は評価としては最低のカテゴリーに組み込まれてしまったようだ。》

  ♦世界文化遺産推薦候補
   (暫定リスト)審議結果
▼暫定リストに記載
 北海道・北東北の縄文遺跡群
     (北海道、青森、岩手、秋田)
 金と銀の島、佐渡(新潟)
 九州・山口の近代化産業遺産群
     (福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、山口)
 宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡)
 百舌鳥・古市古墳群(大阪)
▼暫定リスト記載見送り
  <カテゴリー1a>
 最上川の文化的景観(山形)
 四国八十八カ所霊場と遍路道
     (徳島、高知、愛媛、香川)
 阿蘇(熊本)
 天橋立(京都)
 錦帯橋と岩国の町割(山口)
  <カテゴリー1b>
 萩(山口)
 城下町金沢の文化遺産群と文化的景観(石川)
 松本城(長野)
    →以上3件は「近世の城郭と城下町関連の文化遺産」
     として統合を推奨
 善光寺と門前町(長野)
    →「近世の寺社とその門前町関連の文化遺産」として
     他の寺社や門前町との統合を推奨
 足利学校と足利氏の遺産(栃木)
 水戸藩の学問・教育関連遺産群(茨城)
 近世岡山の文化・土木遺産群(岡山)
    →以上3件のうち足利学校、弘道館(茨城)、
     閑谷学校(岡山)を「近世の教育資産」として
     統合することを推奨
 妻籠宿・馬籠塾と中山道(長野、岐阜)
    →「近世の街道と宿場町関連の文化遺産」として
     他の街道や宿場町との統合を推奨
  <カテゴリー2>
 北海道東部の窪みで残る大規模竪穴住居跡群
 松島(宮城)
 水戸藩の学問・教育関連遺産群(茨城)
 足利学校と足利氏の遺産(栃木)
 足尾銅山(同)
 埼玉古墳群(埼玉)
 近世高岡の文化遺産群(富山)
 立山・黒部(同)
 霊峰白山と山麓の文化的景観(石川、福井、岐阜)
 若狭の社寺建造物群と文化的景観(福井)
 岡谷の日本製糸業近代化遺産(長野)
 飛騨高山の町並みと祭礼の場(岐阜)
 近世岡山の文化・土木遺産群(岡山)
 三徳山(鳥取)
 山口に花開いた大内文化の遺産(山口)
 宇佐・国東(大分)
 竹富島・波照間島の文化的景観(沖縄)

《すでに世界遺産の登録を受けている県からも次々に候補が顔を出したり、一つの県から4件の候補を出したり複数であったり、まるで叩き売り商品のような乱雑さだ。それぞれに歴史や文化を築いてきたものだが、あくまでも日本国内の価値、評価こそ優れてはいても、果して現在もてはやされて、口の端に上るグローバルな価値のものかを考えた上で、候補に選定したものなのか考えさせられる。》

《錦帯橋などは、遺産と呼ぶには余りにも新しい。1950(昭和25)年のキジア颱風で流失し、再建されてからまだ、55年が経過したにすぎない。あまりに欲張りすぎる候補選定だ。》

記載を見送った27件のうち、阿蘇(熊本県)など5件は「カテゴリー1a」に分類。「価値の証明作業が相当程度進展した段階で改めて審議すべきだ」とした。「1b」の4組8件は他候補と統合して登録を目指すよう求めた。「カテゴリー2」の17件は「現状テーマのままでは記載できない」との位置づけだ。足利学校と足利氏の遺産(栃木県)など3件は、学校だけを抜き出して「1b」に入れた。

国内候補は当初、文化庁が独自に選定していたが、06年度に公募方式が始まった。世界各国の暫定リストには計約1470件の候補が記載されている。

世界遺産登録を目指す自治体などの反応は悲喜こもごもだ。推奨候補に選ばれた「佐渡」では、佐渡市の高野宏一郎市長は「県と市、民間が一体になった活動と努力が実った」と語った。同市の旧相川町では、ちょうちん行列が行なわれるなどお祭りムード。一方、落選した「松島」では、宮城県教委文化財保護課は「我々が考えたコンセプト自体が認められず、残念」とし、「平泉が落選したことで、審査が厳しくなったのではないか」と分析する。

同じく落選の「天橋立」(京都府)は、天橋立観光協会元副会長の小田彰彦さん(64)は「登録への活動を通して故郷を見直す切っ掛けになった。今後の記載に期待したい」と気を取り直した。

《各自治体に選ばせたことが、統一されない価値観と基準の元で選定され、玉石とは言わないまでも首を傾げる候補選びになったようだ。今回の文化庁の審議結果を受けて、「おらが国」騒動は一応、一段落するものと期待する。》

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