「パラリンピック」、成績に用具の優劣
先にSPEEDO社の水着が話題になったように、6日開会のパラリンピックに於いても使用する用具の公平性が疑問視されているようだ。
水着の使用を薬物使用と同列に断じようとする動きもあったようだが、私は棒高跳びの用具(ポール)の歴史を参考に、竹から鉄、そして現在のグラスファイバーになったように、薬物のドーピングとは全く次元の異なるものだと判断してSPEEDO社の水着使用を支持した。しかし、パラリンピックのアスリートたちが使用しようとする用具に関しては、水着と同様とはいかない要因が含まれているようだ。また、棒高跳びのポールの素材はグラスファイバーで全員が同じものを使用するが、ポールの長短は使用者の好みで決められる。
毎日新聞(9/5)から
両足が不自由な人と片足が不自由な人。ともにトップ選手が義足を使って走ればどちらが速いか。国際パラリンピック委員会公認の陸上男子400メートルの世界記録では「両足」クラスの世界記録が南アフリカのピストリウスの47秒92。「片足」クラスでは米国選手が持つ51秒24。100、200メートルでの両クラスの世界記録は同タイムで、両足が義足のピストリウスは両種目でも世界記録を持っている。
日本選手の競技用義足の製作を手掛ける沖野敦郎は、ピストリウスの走りの特徴を「弾力性のあるカーボン繊維製義足が生む反発力を、上手に前に進む力へ変えている」と指摘する。このピストリウスの義足は「板バネ状」と呼ばれる独特の形状のカーボン部分の部品だけで40万円すると言われる。両足でカーボン部分だけでも80万円する。欧米や国内でも、トップ選手の義足は100万円前後と高額だ。
また、五輪やその選考レース等での世界記録続発に「貢献」した英スピード社製の新型水着「レーザー・レーサー」を、多くのパラリンプック選手も使用する予定だという。この水着も従来の同社製競技水着の2〜3倍の価額はする。好記録や好成績に高価な用具が不可欠となっている事情は健常者と変らない。
その状況を「障害者とスポーツ」などの著書のある大阪市障害者スポーツセンターの高橋明・スポーツ課長は「10年ほど前から欧州では、用具の優劣による結果の差を『器具によるドーピングではないか』と問題視する声はある」と語る。発展途上国では最先端の競技用義足が、年収の何年分にもなるケースもある。高橋課長は「公平性や平等性の観点から、用具についての一定の規制も考えなければならない時期が来ているかもしれない」と指摘する。
ロンドン郊外の王立病院で1948年に、第二次世界大戦の負傷兵士らの治療の一環として開かれたアーチェリー大会が、パラリンピックの原点だという。しかし、運営等での「五輪との一体化」を図る中で、より一層の「競技としてのパラリンピック」を求める声が高まり、それに伴うさまざな課題も浮上してきた。
《徒手空拳の相撲の世界にはまだ残っているが、柔(小)よく剛(大)を制す、といわれた柔道。しかし、根本的には身体の大きな西洋人が柔道を身につければ、小さな日本人が叶わないことが理解され、オリンピックの柔道に体重別のクラス分けが導入された。
生身の身体にグローブだけを着ければボクシングになる。薬物など不要だ、このグローブに金属の使用が許されれば立ちどころに死人の山ができる。使用する用具の開発とはいっても、使用するにはおのずと限界がある。車椅子や背中にジェットエンジンは付けられまい。
その生身の身体に障害を持つ人たちの競技だ。今回参加のアテネ7冠の女子競泳、成田真由美が1ランク軽い障害に分けられたように、障害度合いの区分そのものに問題はないのか。また、健常者でも1人で着用が困難なスピード社の水着を用いることにどれだけの意味があるのか。
富める国と、途上国との差からくる用具の差をさして、『器具によるドーピング』とは思わないが、用具についての一定の規制が必要なのは確かだろう。》
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