国立公園「立山」で外来種増加
毎日新聞(8/16)から
北アルプスを貫く山岳観光道「立山黒部アルペンルート」(約90キロ)周辺の立山連峰で、繁殖力の強い外来植物が増加し、在来の高山植物や昆虫、それらを食べる国の特別天然記念物・雷鳥など特有の生態系が脅かされている。富山県は除草剤による駆除を計画したが、一帯は国立公園で、環境省側は「前例がない」と反発している。他の国立公園でも同様の問題が起きており、結論が注目される。
《同じことは川や池、田や湖などでも起きていて、日本固有の生物が、外来種によって絶滅の危惧さえ抱かせられる懸念まである。だが、100年や200年の短いスパーンで固有、外来を区分していいのだろうか。地球が生まれて40億年、大陸そのものが分離から成り立ち、生物も海から陸へ上がったものもある。現在までの永い歴史のなか、数え切れない生物が消えて行った。
人類が海へ出るようになって地域特有の生物が次々に発見され、分類され系統だてられて行った。幼稚な航海術での往来は、往来の頻度も含めてさほど地域特有の生物の移動は目立たなかった。しかし、丸木舟は産業の発達に伴って物資や人を運ぶ大型船になり、物流の道が開かれた。地域特有のものはそれだけで価値を持ち、輸出入の流れが確立されてきた。
その流れの中から、意図しなくても結果として「害」となるものの地域間の移動が発生する。それは魚であったり、動物であったり、植物であったり細菌であったりする。丸木舟の時代ではない。より高速で移動が可能な空を飛ぶ乗り物まで出現した時代だ。当然のことで、人に付着して持ち込むことになり、輸入物品に含まれて入り込むことが容易になる。慌てて“泥棒見て縄”で法律を作って防止を試みても、もう取り返しはつかない。
植物や動物だけに限らない。人類でも固有種の侵害は歴史の教えるところだ。アメリカ大陸にもともといた先住民たちは海を渡って入り込んできたイギリスからの移民(それも本国を追放された犯罪人たち)たちによって迫害を受け、白人の増加と共に土地を取り上げられ居留地という狭い限られた土地に詰め込まれることになる。いわゆる固有種の絶滅の危機さえ危惧された。その時進んで外来種を、奴隷制度という彼らには便利な法律まで作って取り込んでいるのだ。日本だって変らない。海を渡ってきた北方民族が日本列島を北上し、もともとの日本の先住民族を北海道まで追い詰めた。
しかし、人間は勝手な動物だと思う。植物や動物には厳しいが、固有民族の種を守ることには全く無関心だ。いや、逆に固有は却って邪魔なようだ。特に現在の日本では外来種との混血に魅力さえ持つものさえ多くいる。人間には外来、固有の考えは必要ないのか。》
富山、長野両県にまたがる同ルートは71年に全線開通した。標高2000メートル前後の一帯は中部山岳国立公園内にあり、植物採集などを禁じた特別保護区も多い。春のルート開通で現れる高さ20メートル近い雪壁「雪の大谷」などが人気を集め、国内外から年間100万人近い観光客が訪れる。
外来種が増え始めたのは70年代後半。観光客の靴や観光バスのタイヤ、弁当などによってフランスギクやプチトマトなどの種子が入り込んだ。05年までにシロツメクサなど62種が確認され、セイヨウタンポポなど在来種との交雑種を作るものも多い。アジアからの観光客増に伴い、近年は熱帯原産の種子も見つかっている。
このため富山県などは10年以上前から手作業で抜き取りを実施。ボランティアは毎年延べ300人以上に上るが、歯止めはかからない。立山一帯の世界遺産(文化遺産)化も目指す県は「手作業では限界」と判断し、除草剤を噴霧して駆除する案を示した。
しかし、環境省立山自然保護官事務所は「国立公園内で除草剤の使用例は聞いたことがない。他の動植物への影響も不明だ」と強く反発する。県は提案を撤回し、9月までに2度の現地調査を行ない、改めて協議することにした。外来植物の増加は、日光(栃木県)、白山(石川県)などの国立公園でも問題化している、という。
《10万年、100万年スパーンでこの問題をとらえれば、100年や200年間に起こった外来・固有の問題など同化され、100万年先のその時代では、それが固有種といわれていることになるやも分からないちっぽけな問題だ。それよりも気になるのは、今回の富山県の問題提起は、種の問題に名を借りた世界遺産の肩書き欲しさのようにしか感じられないのだが。》
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