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2008年7月 8日 (火)

おらが国「平泉」世界遺産落選

6月のブログに書いた、このところしきりに口にする「グローバル」的視野から日本の浄土思想を理解させるのは至難のことだと。日本人でさえ、法然や親鸞を分かって平泉を訪ねているいる人たちがどれだけいるのかということも。

屋久島や白神山地などのように自然が対象でない場合、戦前から外国人にも特別によく知られた富士山や芸者は別にして、さくらとともに美しい風情の京都の神社仏閣、同じく奈良の数多い多重塔と仏閣など、或いは近年新しく登録された熊野古道や石見銀山など、思想を云々する以前に造型が歴史的世界遺産としての価値を訴える要素が大きい。その点から見た場合、平泉の造型的な印象はどうしても薄いと言わざるを得ない。従来から平泉は、観光地としての売りはポスターでも第1番には中尊寺金色堂だ。ところが写真ではきらびやかな金色堂は頑強なコンクリート作りの建造物(大阪城がエレベーター設備のある鉄筋コンクリートで建てられているのと同じで)の中にあって余りにも違和感が強い。木の文化を守るためとはいえ、歴史的には浄土思想を断ち切る致命的な欠陥だ。

また、平泉に限らないが、次から次に世界遺産への登録待ちが「おらが国」ブームのように犇めいているようだ。しかし、例えば石見銀山やこの度の平泉でも、申請を受けて書く政府の推薦文は、いかにも厳めしく、難しく、価値付けることになるが、登録物件のある観光地にしてみれば、いかに「おらが国」に多くの観光客が集まってくれて、財布の紐を解いてくれるのかが、最も重要なことで、その目玉になることこそ世界遺産の一番の目的でもあったのだ。丁度今、中国がオリンピックを契機に新しい国づくりを加速させようとしているのと同じで、それぞれが皆、お国自慢を競い合うように手ぐすねひいて候補地を選んでいるのが本当のところだろう。

平泉が認められた暁には次なる声をあげる予定だったのは「武家の古都・鎌倉」だそうだ。私の感覚ではこちらは当確だ。日本の歴史の流れの中で、鎌倉幕府の占める位置は平泉の藤原にくらべるとずっと大きい。八幡宮の佇まいも、長い石の階段も厳めしく美しい。日本人には馴染みだが、義経を偲んで静御前が舞った「舞殿」もある。準備万端整えて、日本政府は推薦すればいい。現在は中身よりも見た目が一番が流行っている。外国人の評価は得られるだろう。

とは言え、もっと醒めた目で見れば、何も世界遺産という権威に頼らなくても、『日本遺産』でも拵えて、指定を広げて行ってもいいじゃないのか。

毎日新聞(7/8)から 要約
カナダ・ケベックで開催中の国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で6日午後(日本時間7日午前)、日本政府が世界遺産に推薦していた「平泉の文化遺産」(岩手県)の登録延期が決まった。登録申請のあり方を巡り、政府や自治体に戦略の見直しが求められている。

次の登録のチャンスは最短でも2年後となる。世界遺産委員会の審査後、記者会見した近藤誠一・ユネスコ大使(62)は、「審査を厳しくするという傾向が加速している。気を引き締めて推薦書を作り直さなければ」と語った。

世界遺産委員会の会場には、次の推薦を狙う文化庁の「暫定リスト」に名を連ねる自治体の職員も姿を見せていた。「世界遺産登録を目指す仲間として、期待していただけに残念」。昨年1月に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が暫定リスト入りした長崎県の担当者は悔しがった。平泉の登録延期で、国内の審査スケジュールが遅れる事態も予想される。「今回の審議内容を分析し、できるだけ早い時期の登録を目指したい」と話した。

2007年10月現在、登録された世界遺産は851件。このうち386件を欧州が占める。国別の登録数(他国との共同登録を含む)でも、イタリア、スペインなど4カ国が上位5カ国に入る。これに対し、アジアは3位の中国を含めても、登録件数全体の2割にも満たない。

《必ずしも欧州、アジアでその数の優劣を比べても意味はないことと思う。2000年、3000年前の建造物が残っている歴史を持つ国と、異なる発達をしてきた文化の異なる国や地域を単純に比較するのはおかしい。》

渡海文部科学相は7日、候補地選定の方法を見直す考えを示した。2006年から国は毎年、都道府県から候補地を公募してきたが、公募の打ち切りを含め、文化審議会で議論する方針だ。平泉の事実上の落選で、他の候補地について推薦手続きの見通しが立たなくなったとの事情がある。

現在、国内候補地は平泉を含め8件ある。「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬)、「富士山」(静岡、山梨)、などが推薦の順番を待っている。他にも、候補地になろうと自治体が応募してきた名所旧跡が32件あり、今秋には新たな候補地が増える予定だが、文化庁はいたずらに膨らむのは望ましくないと判断したとみられる。

《自分が住んでいる国を貶めるつもりはないが、島国根性の「おらが故郷(くに)」自慢で、出るわ、出るわの安売りはみっともない。》

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