日本は眼中にない米、「北朝鮮テロ指定」解除
毎日新聞(6/25〜29)から <要約> と《私見》
北朝鮮は26日、核問題をめぐる6カ国協議合意に基づき、核放棄に向けた「第2段階措置」として義務づけられていた核計画の申告書を議長国・中国に提出した。この見返り措置としてブッシュ米大統領が北朝鮮に対するテロ支援国家の指定解除を議会に通告した。指定解除は通告翌日から「45日後」に発効する。
しかし、申告書の内容は北朝鮮が約束していたはずの「完全かつ正確な申告」とは到底言えず、核兵器などに関する情報は盛り込まれず、先送りされる。申告書は40〜50ページとされ、
1)抽出したプルトニウムの量(30数キロ程度?)
2)抽出のために使った核施設の稼動実績
3)核活動関連施設のリスト
別文書:高濃縮ウランによる核開発とシリア核協力疑惑。米国が指摘し、北朝鮮が認知。
などが記載されているものとみられる。
福田首相は申告書提出のニュースに先がけて24日、首相官邸で記者団に対して米国が26日にも北朝鮮のテロ支援国家指定解除の手続きに入ることに関し、「北朝鮮の核問題が解決する方向に進むのであれば、歓迎すべきことだ」と述べ、解除の前提となる北朝鮮の核申告を前向きに評価した上で、指定解除を容認する考えを示した。首相は「わが国は拉致問題も解決を果さなくてはいけない。日米が緊密な連絡を取り合うことが必要だ」とも述べた。
ブッシュ米大統領は26日、ホワイトハウスで記者会見し、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除を決定したと表明。北朝鮮が「敵視政策の象徴」と見なしてきたテロ支援国家解除に、米国が動いたことで、北朝鮮の核問題と米朝関係は新たな局面に入った。指定解除に慎重に対処するよう主張してきた日本は拉致問題解決に向け、厳しい現実を迫られそうだ。
大統領は会見で、北朝鮮の核申告は「正しい方向への第一歩」と述べる一方、「北朝鮮が国際社会の懸念に適切に対処しなければ、相応の結末が待っている」と北朝鮮を牽制した。
さらに日本人拉致について「絶対に忘れない。日本と協力し、北朝鮮に圧力をかける」と語り、日本への配慮を示した。
《ブッシュはいつまで大統領でいられるつもりなんだろうか。「拉致された日本人がいたことを忘れない」は大統領でなくなっても忘れないでいられる。大統領でいる間に北朝鮮に対してどのような圧力をかけることができるのかが問題だ。ただ、ことのついでに触れただけのこの言辞を信じる人間がいればお目出度い。また、日本政府も「拉致問題が解決しなければ、国交正常化はありえない」と息巻いているが、振返ってみれば、日本政府自体、拉致問題には大した関心を持たなかった過去がある。
国会で拉致問題が本格的に取り扱われたのは1988(昭和63)年だ。1月の衆議院本会議で民社党の長塚委員が、3月に参議院予算委員会で日本共産党の橋本委員がそれぞれ質問を行ない、政府に糺したがそれだけで終わっていた。その後国会においては1997年まで「国交正常化」の話題が出る度に懸案問題として出る程度であった。
政府が拉致を認めることになったのは、1977年に拉致された横田めぐみさんの実名報道があってからだ。国会でも取り上げられ、1997年、政府が初めて7件10人の拉致被害者を認めたのだ。》
とは言え北朝鮮の核、ミサイル開発とともに、日本にとって重要なのは拉致問題だ。今回の米国の妥協で、日米で圧力をかけるというカードが失われるのではとの懸念があるのは確かだ。日本にとっては痛手である。しかし今回、北朝鮮が日本との公式協議に9カ月ぶりに応じたのも米国の働きかけがあったため、ということも考えられる。
その意味で注目されるのは、北朝鮮が「拉致問題は解決済み」とのこれまでの姿勢を変えて約束した拉致問題の再調査だ。どんな再調査になるのか、早急に詰める必要があるが、この再調査を生かして打開を図るべきだろう。
《北朝鮮の調査には煮え湯を飲まされた記憶が新しい。誰の骨か分からない人骨を、本人のものと偽って持ち帰らせた事実がある。調査には日本から調査団の参加を認めるよう北朝鮮に働きかけることも必要ではないか。従来の種々不明朗な懸案事項が開明されて後、経済援助などを含む国交の正常化は行なわれるべきと考える》。
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