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2008年6月22日 (日)

クラスター禁止条約案採決から3週間

毎日新聞(6/22)から (《》内は私見)
 不発弾が市民を殺傷するクラスター爆弾禁止運動をきっかけに、環境破壊や人権侵害など非倫理的な活動を行なう企業に対する投融資を自粛する動きが、欧州で広がっている。ベルギーの非政府組織(NGO)は、日本の大手金融機関も「非倫理的」投融資を実施していると指摘しており、今後対応を迫られそうだ。

クラスター爆弾製造企業や、環境破壊、人権侵害に深くかかわっているとされる企業に対する投融資の是非を問う潮流は、5月末のクラスター爆弾禁止条約案採択でよりいっそう強まりそうな動きが出てきた。

欧州では06年、ベルギーが同爆弾の製造を禁止する世界初の国内法を制定。同国は翌年、世界で初めて国内の金融機関に爆弾製造企業への融資も禁止した。これと歩調をあわせ欧州では、KBC(ベルギー)、コーペラティブ・バンク(英)、アクサ(仏)、ノルウェー、オランダの公的年金募金、などが爆弾製造企業への融資を禁止した。

これら金融機関は内部の「倫理委員会」の調査結果を踏まえ、環境破壊や兵器製造などを行なう問題企業への融資も自粛する。「倫理」を問う投融資対象は広がっている。ノルウェー年金基金は、クラスター爆弾製造企業約10社のほか、核兵器・対人地雷製造や環境汚染、人権侵害などを指摘される企業約10社への融資を中止。コーペラティブ・バンクは動物虐待を行なう企業への融資を中止した。

ベルギーのNGO「ネットワーク・フランデレン」の調査によると、03年以降日本を含む世界の金融機関が、少なくとも計約550億ドル(5兆8600億円)をクラスター製造、環境、人権問題に関連する企業に融資した。

同NGOによると、インド、アフリカなどで水資源汚染や森林伐採などを続ける複数の鉱山会社、▽ミャンマーなど軍事政権に軍用機を売却した航空機メーカー(中国)▽組合つぶしを行なうスーパー(米国)など、環境破壊や人権侵害にかかわる「最も悪質な企業」13社に対し、欧米日など24カ国の金融機関約120社が、03〜07年で約130億ドルを融資。04〜07年で社債など約280億ドルの発行を引受けた。邦銀では三菱UFJ、みずほ、三井住友の3グループが、計約8億ドル以上の融資などを指摘された。

13社のほとんどが多国籍企業で、人権団体や地元政府の批判を受けている。邦銀のうち1グループは融資の事実を認め「資金が環境汚染など、不当に使われないよう行内に監視規定がある。融資先に問題が出た場合、融資停止もある」と話す。同NGOの調べでは、クラスター爆弾製造企業6社への投融資は日本など13カ国68金融機関から約140億ドルに上っている。

《1945年、第2次世界大戦で敗戦国となり、GHQ(連合国軍最高司令官総指令部)により解体されるまで、日本の財閥、三井、三菱、住友、安田(金融財閥)などは軍需産業にかかわり、巨大な富みを築いてきた。敗戦で1945〜52年にかけて財閥解体が行なわれ、一見消滅したかに見えた財閥は、解体の対象から外された銀行を中心に再び企業グループを作り上げていくことになる。

金が集まれば投融資するのは巨大軍需産業の効率に優るものはない。旧財閥を見倣うことでますます巨大化していった。人類初の原子爆弾に見舞われ、悲惨をなめた戦後の経験を活かすことなど考えもせず、為政者たちと組んでクラスターの禁止条約案にもアメリカの顔色を読み続けた。最終的には福田首相の決断でしぶしぶ賛成票を投じることで世界への良心を辛うじて維持することができた。しかし、今回指摘を受けたのは、金融機関の投融資が条約の第1条に盛られているクラスター爆弾の製造への「援助」の禁止の条項に触れることにある。》

軍縮交渉「オスロ・プロセス」が採択した条約案は、クラスター爆弾の使用、開発、製造などを禁止し、その支援、誘導も禁じている。条約が批准されば、問題企業への資金提供を自粛する考えが進むのは間違いない。ただ「カネには色はつかない」として、融資自粛を拒む金融機関も多い。

《金の使い道は受け取る側の勝手、そこまで指図することはしないと。投融資の見返りは儲かれば良いということのようだ。》

例えば、各金融機関が融資を自粛した応酬航空防衛宇宙会社(EADS)の場合、条約案の定義で「クラスター爆弾」とされる兵器と同時に民間航空機も製造している。同社に融資を行なうある邦銀は「融資の使途が爆弾か航空機製造か線引きが難しい」として融資を継続する方針だという。また「条約は爆弾製造企業への『援助』を禁止しただけで、企業への投融資を明確に禁止していない」(ベルギー政府幹部)との指摘もある。

しかし、今後の条約発効が、「非倫理的」企業に対する投融資を続ける金融機関に、自浄を求める圧力になることを期待しよう。

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