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2008年5月29日 (木)

無惨!! 高松塚古墳壁画

愚かな20世紀の人間に見つかったために、深い眠りを醒まされた上に、見るも無惨な姿に貶められる結果になってしまった飛鳥の美女たち。

ページを繰って開いた途端、あまりの惨(むご)たらしさに息が、そして胸が詰まった。毎日新聞5月28日2ページに亙るカラー写真(07年4月解体直後の撮影)だ。限られた人間たちだけが密室の出入りが許されているうちに、世間の汚れとともに石室の中まで汚濁に巻き込んでいった。発見された当時(72年)の華やかさは見る陰もなく失せ、黒カビに埋もれて、描かれた当時(7世紀末〜8世紀始め)の色彩を想像させてくれた見事な色は、探そうにも見い出すこともできなくなった。

31日から一般公開されることで、紙上お披露目となったようだが、6月8日までの9カ間、余りの無惨さに高ぶる感情で、例え地の利があったとしても見に行くことを躊躇したくなる。

壁画修理を統括している、東京文化財研究所保存修復科学センターの川野辺渉・副センター長は、
 ○壁画の状態は。
 解体(4〜8月まで)後、半年ほどかけて乾燥させた影響で、石の水分量は急速に変化した。漆喰の状態は、全体的に安定していが、現地では暗くて分からなかった部分で劣化が進んでいるところもある。壁面の大部分でゲル状物質(カビや細菌、酵母などの混合物)に覆われているほか、西壁女子群像の一部では、漆喰が裏側から浸蝕され、壁面に陥没が起こっているという。

 ○汚れの除去は可能か。
 黒いカビは取れるもの取れないものとがある。一方、ゲル状物質は、乾燥によって膜が固く張り、壁画を痛める恐れが出てきた。水分を与えても、現在の技術では完全には取り除けない。そのため、薬剤を使って化学反応を起し、ゲル状物質の分子を断ち切る実験などを繰り返している。

 ○壁画修理には約10年かかるという。今後のスケジュールは。
2011年ごろまでに天井と余白部分のクリーニングを終えられればと思っている。その間に、使用する薬剤が壁画の顔料に支障がないことが確かめられれば、13年ごろからの絵のある部分の修理を始められるだろう。15年ごろには、壁画の強化措置を終えたいと思う。その先は、壁画をどこでどのように保存していくかによって、修理の仕上げが変って来る。

《何とも情けないスケジュールだこと。られれば、られれば、られるだろう、そして最後には と思う、それでも最後には、修理の仕上げが変って来る、と来る。》

 ○修理の課題は。
試行錯誤の連続で、実験は余白部分を使って進めている。どこまできれいにしたら良いのか具体的な基準はない。実験でうまくいっても、実際には絵の上でやってみないとわからない。今、無理をするより、将来の人や技術に委ねる方が良い結果が出ることもある。無理せず地道に続けて、壁画に負担が少ない方法で、みんなが持っている壁画のイメージに近づけることができたら、と思う、と語った。

《現時点で決断して、対処したとしても、結果おかしなことになって責任を取らされるのはご免だ、とも聞こえる。そのうちには時間が過ぎてくれる、次の人がやってくれるだろう、と。

日本には、まだ宮内庁管轄下の天皇陵墓とされる対象がいくつもある。考古学会協会や古代史研究家など、学術調査を望んでいるが、例えば未盗掘とされる大阪堺市の仁徳天皇陵(大山古墳)に、調査隊が入ったとして、高松塚と同様のものが発見された場合、同じ過ちを繰り返す恐れが多分にある。そこでまた、られれば、られれば、・・・を繰り返すようでは困る。それよりは、当分の間陵墓或いは古墳には、一切、立ち入りを禁止するとした方が安全だろうとさえ思う。》

 

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