カプセルトイ誤飲事故判決
今年2月、東京地裁で9年前の割り箸事故の判決があった。綿菓子の棒が4歳の男児の喉に刺さって死亡した事故だが、判決は、病院と医師に対する賠償を求めた両親の訴えを棄却するものだった。
今回の鹿児島県の事件も6年前の事故だ。02年8月、世間ではガチャガチャなどと呼ばれている玩具入りのカプセル(直径40ミリ)を男児が鹿児島市の自宅で誤飲し、喉に詰まらせ約30分後に除去したが、低酸素状態などによる脳障害で自力で身体を動かせない重度の障害を負った。男児(当時2歳10ヶ月)の両親らが、製造物責任法(PL法)に基づき、製造元のバンダイナムコゲームス(東京都)に約1億800万円の損害賠償を求めた訴訟で、鹿児島地裁(高野裕裁判長)は20日、同社に約2626万円の支払いを命じた。同裁判長は「安全性を欠いていた」と構造上の欠陥を認定した。
同社は、日本玩具協会作成の安全基準が3歳未満対象の場合に直径31・8ミリ以上と規定していることを挙げたが、同裁判長は「カプセルは、3歳未満の幼児がおもちゃとして使用することが通常予見された」述べ、「事故防止には基準の直径では不十分」と指摘した。
玩具の大きさを定めた業界団体の基準見直しを迫る判決となったが、原告側弁護士も驚いたように、玩具の誤飲でメーカーに製造物責任を認める判決は異例だという。弁護士が驚くのも無理はない、裁判長が口にし、語るに落ちた「幼児がおもちゃとして使用することが通常予見された」は、メーカー側への説明ではなく、保護者である両親への説諭でなければならない。子どもを育てたことがあれば誰でも恐い思いをしているであろう。幼児は畳の上であろうと、床の上であろうと、手当り次第に何でも手にし、口に入れようとする。親なら幼児には格好の口に入れると思われるカプセルを、手の届く所に放っておいたり、親が見ないところで持たせて遊ばせる事が最初から間違っている。この事故も先の「割り箸事故」と同じ、親の監督責任、事故防止の注意義務を果たさなかったことが原因だ。
メーカーが言うように、基準と比べてもその直径は安全係数を26%も大きくして製造されている。メーカーにはミスはないと言っていい。まして07年、1年間に作られたカプセルの数は1400万個もあって、1998年の発売以来(単純に×10ではないが)膨大な数の中で事故は今回のただ1件だけだ。弁護士さえまさかの棚からぼた餅の判決であったろう。
まさしく教育の場で流行しているモンスター・ペアレントもどきだ。鹿児島地裁も幼児が絡むことで萎縮して温情判決とならざるを得なかったのだろう。親の責任7割、メーカーの責任3割の2626万円とした。これからは正月、高齢者が餅を喉に詰まらせて死亡する事故は、餅を搗いたメーカーが賠償命令を下されることになるのか。バンダイナムコゲームスも泣き寝入りすることはない。「判決文をよく読んだ上で控訴するかどうか、検討する」ことになるようだ。
この程度の裁判でいいのなら、国民参加の裁判員制度も案外楽なものかも知れない。
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