A級戦犯、靖国から東郷神社へ引っ越しとなるか
妙な話になってきた。昨年話題になった昭和天皇が1978年以後、靖国神社参拝をしなくなったことについて、東條や板垣などA級戦犯の合祀に対する不快感があったことを、昭和天皇最後の侍従であった卜部日記が裏付けていることで、それまで持ち上がっていた分祀、或いは別の国立祭祀かの論議は沈静化したと思っていたが、ひょんな所からまたまた復活する気配が見えてきた。
毎日新聞(5/25)から <要約>
現在、靖国で眠っているA級戦犯を、旧海軍ゆかりの東郷神社*(東京都渋谷区)に分祀すべきだ。と、東郷神社前宮司の松橋暉男氏が来月出版する著書「幻の揮毫」(毎日ワンズ)で、神社関係者では異例の提言を行うという。
全国8万神社をまとめる神社本庁は「分祀は神道の教義上できない」との見解をとっているが、傘下の有力神社の「A級戦犯受け入れ」表明は、分祀論議に拍車を掛けそうだ。
* 東郷神社 - 日露戦争の日本海海戦で勝利した連合艦隊司令長官の東郷平八郎元帥を軍神として祀る。戦前、靖国神社と同格の別格官幤社に列せられることが決まっていたが、1945年に空襲で本殿が焼失したため、取りやめになった。現在、崇敬会「東郷会」の名誉会長は旧皇族の東久邇信彦氏。
《1945年に本殿が消失するまで、靖国神社と同格の別格官幤社と見なされていた東郷神社ということは、名前が靖国から東郷へ変わるだけで、本質的には軍神として引っ越すことだ。戦犯が軍神では可笑しかろう。》
松橋の書は、A級戦犯合祀が中国などの反発を招いた問題は、首相参拝が行われなくても解決しないと指摘。論争が収まった「今こそ真剣に取り組むべき」と訴えている。そのために、東郷神社境内の「海の宮」にA級戦犯を合祀するよう提唱。神社本庁などの主張通り靖国神社に「御霊」が残っても、東郷神社に「移った」と見なして「ご遺族は心置きなく新しい座にお参りすることができる」ようになるとしている。中国などにも「誠意ある対応をしたことになる。靖国参拝のカードは有効でなくなる」ため、外交問題を沈静化できるという。
《勝手な思惑だ。松橋という宮司、こんなお為ごかしで誠意がある対応と考えるのだろうか。中国へのごまかしのために移ってもらおう、というだけのことではないか。遺族が心置きなく焼香できるだって? それが望みなら、遺族がそれぞれ自分たちの「家の墓」に引き取るほうが、余程心置きなく花も供えられるだろうし、線香もくゆらせることができるだろう。それも毎日だって可能なことに。
一方、死ね、と命じられて命を捨てた多くの兵士の遺族たちが、神のままで別宅さながらに引っ越すA級戦犯たちを許すとでも思っているのだろうか。それに多くの国民は、東條や板垣たちA級戦犯を神とは思ってもいないことを知るべきだ。戦争の痛みを抱えたまま生きている人たちはまだまだ数多く存命なのだ。それら遺族たちには戦争はまだ終わってもいないんだ。》
松崎は「私は靖国神社に代わる新たな国立追悼施設建設には反対の立場で、神社本庁と一致している。後任の東郷神社現宮司も私の考えをわかってくれると思う」と話していいる。
松崎は小泉元首相の参拝が問題になった05年にも分祀論を試みたが、神社本庁から「発言を慎むように」と注意され断念したという。07年4月に名誉宮司に退き、提言に踏み切った。旧知の南部利昭・靖国神社宮司にも分祀の必要性を説いているという。分祀論は、日本遺族会の古賀誠会長も賛同。遺族会は07年5月に検討の勉強会を設けている。
《どこに持って行こうが、A級戦犯を神のままにしておいては問題の解決にはならない。靖国神社とも東郷神社とも関係のないのがA級戦犯たちだ。分祀の必要もない。おのおのの先祖代々の墓が一番安眠できる場所だろう。》
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