小児医療が崩壊する
全国的な医師不足、病院の診療科目から小児科が消えるなど小児医療の危機に直面している。
毎日新聞(4/23)埼玉版で小児医療の現状を取り上げている。
救急のための時間外(夜間・休日)小児救急に、熱や咳き程度の軽い症状の子どもたちが殺到し、全国で問題になっている。勤務医が子どもの患者の対応に疲弊して当直のない開業医に転向し、医師不足に陥った病院が、救急医療から撤退する悪循環だ。医師から見れば「大したことない」症状も、親には「子の一大事」。この両者のギャップを埋めることが大きな課題になっている。
3月、土曜夜の川口市立医療センター(川口市)に、子どもを抱いた親が次々と受付を訪れ、午後7時台は8人、8時台には17人に上った。小児科部長の下平医師は「インフルエンザが流行していない分、これでも少ない方」と明かした。朝まで患者は途切れず、この夜の当直医は午後6時〜翌朝9時まで1人で47人を診察した。そして翌日もそのまま通常勤務に入った。
県内の開業医は04〜06年で237人増加した。苛酷な労働環境から勤務医が開業医に転向するケースが増えているという。一方で、勤務医は日本小児科学会のモデル計画案を基にした試算で173人不足している。07年2〜3月、朝霞台中央綜合病院(朝霞市)など9病院が救急医療から撤退するなど、必要な救急体制が取れない地域も珍しくない。
小児科医を忙しくさせる大きな要因が「診療所や病院のコンビニ化」の進展だ。県の医療協議会によると、時間外の小児救急患者の96%は軽症だという。親が病院を24時間営業のコンビニエンスストアのように考え、「昼間より夜の方が空いている」、中には「テレビを見ていたら遅くなった」というふざけた理由で時間外に訪れるものもいる。
小児科対策として県内全市町村が競って導入している小児医療費の無料化も、安易な受診を助長する面がある。医師らには「タダだと思ってちょっとしたことで来る人が増えている」と不評だ。ただし、川口医療センターの下平医師は「専門知識がない親が軽症か重症かを判断することはできない」ともいう。2歳男児の母親(32)は「親なら、でいるなら専門の小児科医に診てもらいたいと思うもの」と気持ちを打ち明ける。県の小児救急電話相談員(64)は「親は孤独。相談する相手がいないみたい」と心配する。
《かつて1973年1月1日に施行され、70歳以上の老人医療費(自己負担)が無料の時代があった。10年続いて83年2月1日で廃止になったが、これは結果的には医療財政の悪化の一要因となったものだ。当時の病院の待ち合い室をレポートした記事の中には、大して悪くもない老人たちが、タダをよいことに、毎日毎日世間話をするために病院に通う、さながら待ち合い室は井戸端会議の場のよう、というような悪意をふくむものも混じった。
現在埼玉県が行なっている小児科医療は、タダの失敗を経験したはずの医療財政を、また繰り返そうとしているようにも見える。軽症患者の殺到に疲弊した医師からはすでに不満の声が上がっている。このような状況を招くようになったのは、家族制度の崩壊が大きく原因している。“家つきカー付きばばあ抜き”で姑との別居にこだわり、育児に関しても先人の知恵の継承が途絶えたことが大きな要因だ。
昭和一桁くらいまでは2世代3世代の同居は普通の家族構成だった。子どもの病気も放っておいてもいいものか、医者にかかる方がよいか舅姑たちが判断して、その基準となる所見を教えてくれたものだ。時として幼児の「ひきつけ」を目の前にすると、今の若い親なら「救急車、救急車」と大抵の親は死ぬほど驚くだろう。幼い身体を硬直させ、歯を食いしばり、白眼をむいて痙攣する。しかし、驚くことはない、落ちついて割り箸にガーゼか柔らかい布を巻いて咥えさせる。ほどなく幼児は落ちついて終わる。あとは流した汗を拭ってやり、静かに見守れば回復に向かう。
このようなことは子どもを育てたことのある人が傍にいてくれれば慌てずに対処できることなのだ。現在は“核家族”と“共稼ぎ”が言い訳になって全てが他人任せになっているのが実態だ。》
一方、新しい試みを始めたところがある。志木市立市民病因では志木市と近隣4市の医師でつくる朝霞地区医師会が4月から、小児科などの開業医40人を交代で派遣、軽症救急患者の診察を受け持っている。県は当直1回当たり1万円の報酬分を、医師会に支出している。川口市立医療センターでも昨年5月から、地域の開業医数人が当直に加わり始めた。「センターに重症の子を受入れてもらっているから」という事情がある。
また、親たちの手による親への働きかけも始まっている。兵庫県柏原市の母親たちは昨年4月、医師不足から診療中止の危機に陥った地元の県立病院小児科を救おうと、「小児科を守る会」を作った。母親たちに安易な受診を控えるよう呼び掛け、受診の目安を記したハンドブックを作成している。
東京都でもこの時期、「知ろう!小児医療 守ろう!子どもたちの会」を発足させ、小児医療の基礎を学ぶ勉強会を開いている。会を発足させた阿真京子さん(33)が、親子連れで満杯の救急病院の待合室と、疲れ切った医師を見たのが切っ掛けだったという。阿真さんは「子を思う母親の心配を減らすことが、結果的に医師の負担減になる」と話している。
小児救急の崩壊は、医師や医療機関だけの努力では食い止められない。親たちの協力と理解が必要だ。城西大の伊関友伸準教授(経営学)は「開業医が勤務医を助ける取り組みは評価するが、殺到する軽症患者を減らすことにはならない。親は、子どもの状態よりも自分が不安なので救急に駆け込みがちだ。子どもを良く観察し、症状を見極める知恵をつけることが求められる。医師の大変さを親が理解するためには、医師と親をつなぐ活動が必要だ」と語る。
《“少子化”“働く母親”が強迫観念のようになって、子どもや母親を甘やかすことが日常化している。なぜ、小児科の診療を無料化しなければならないのか。いずれ老人の医療対策とおなじように医療費の破綻することは目に見えている。政府の地域への補助金も取らぬ狸の・・・・、になるだろう。何よりも先に手掛けなければならないのは保護者の育児教育だ。テレビを見終わってから子どもを病院にでは母親失格だ。第1、夜の7時、8時は昔なら疾うに子どもはフトンの中の時間だ。》
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント