まゆ毛を剃る男たち
つばき
《今から半世紀も前になるか。野武士軍団と恐れられ、九州の地に三原脩に率いられたプロ野球チーム西鉄ライオンズがあった。。稲尾和久、中西太、豊田泰光、仰木彬、高倉照彦らを擁してパ・リーグのみならず日本のプロ野球界に君臨していた。
その中の一人、常に厳しい評論で鳴らす豊田(73)が、最近のプロ野球選手の風体に辛口のコメントを発している。私のブログでも何度も取り上げてきたが、やはり、ほぼ同世代(私より4歳若い)の彼には、我慢ならないことのようだ。》
毎日新聞(3/3)から抜粋、要約
スポーツ選手は、自分の体を大事にしなくちゃならない。けがをしたら、結果を出せないからだ。ボクシングを見てみなよ。目の周りを傷つけている人が多いだろ。どんなに鍛えても強くできない場所なんだ。野球だって、ボールが顔に当ることは珍しくない。眉毛がクッションになる場合もあるだろうから、できるだけそのままにした方がいいはずだ。
現役時代、ショートを守っていて打球を追いかけ、目の前にフェンスが迫るのを恐れず、そのままぶつかる彼のプレーが「金網デスマッチ」と呼ばれたこともある。怪我を恐れないプレーに、観客は喜んだ。グラウンドで全力を出すように心掛けていた。試合前にまゆを剃るなんて発想はなかった。腹が立つというより呆れることだ。
最近の若い選手に清潔感が見られない。昔は「ひげは毎日剃りなさい」って言われたもんだ。帽子の下から髪の毛が出ていただけで「だらしない」と注意された。選手に必要なマナーだと思うよ。眉毛を整えるというのは、本人はかっこいいと思っているんだろうけれど、おれには不潔に見えるだけだ。
今の時代は女が強いし、男たちも女性化したのかもしれない。情けないよ。理解できない。ピアスをした選手もいたよな。やめとけって言いたいよ。いかにいい球を投げるか、いかにいいヒットを打てるかを考えてほしいよ。最近は解説のために球場に行っても、グラウンドまで下りて見てみたいという選手がめったにいない。女性にキャーキャー言われて、ニヤニヤする選手ばかりで。
現在の選手は個室が多くなっているが、以前は遠征のホテルでも寮でも殆どが相部屋だった。いいことばかりではなかったが、今はチームメートともあまり付き合わない。関心があるのは自分のことになる。部屋で鏡を見て、眉毛をいじる気になるのかも知れない。
西鉄の頃は、エラーをしたやつと味方が怒鳴りあったもんだ。ファンが期待するのは、そんな闘争心や荒々しさじゃないのか。整った眉毛なんかじゃない。試合終了の時にユニフォームが土で汚れた選手たちを。おれは見たいよ。
《眉毛と言えば前に取り上げた女優がいる。仲間由紀恵だ、彼女の飾らない眉毛は見ていて清々しい。そして、最近のことだが男性の眉で見事な眉を見た。王将戦を勝ち抜いた後日、NHKで対談した羽生善治の顔がクローズアップで何度も写し出された。生えたままの眉で全く手入れなどしていない。男らしくて太いきりりとしたまゆだ。痩身で、いかつい感じからは遠い男性の身体だが、あの眉にはっきりと勝負師の心根を見て取った。
豊田は眉毛を剃ったのを「整った」眉の選手など見たくないと表現するが、決して整えられた眉にはなっていない。ただ細いだけだ。中にはどうしようもなく不格好にゲジゲジの這ったようなものまで見かける。野球選手に限らない、サッカー選手、駅伝を走るアスリートたち、高校球児たちを始め若い男たちも、細い眉のオンパレードだ。》
これに対して、眉を整える?いいじゃない。とおっしゃる女性がいる。東大特任研究員、NTT病院心理士、松本聡子氏(32)だ。
おしゃれな男性というのは昔からいました。平安時代の貴族、経済的に裕福だったり、関心のある男性が楽しんだ。戦後しばらくしてから男性がおしゃれをするようになったことから分かるように、平和な時代に盛り上がるような気がします。
《と、おっしゃる。時代がそうさせると言うのだろうが、現代の眉を剃る男たちは、経済的に裕福だったり、おしゃれに関心のある男性だけがやっているのではない。平和ぼけしたぴんからきりまでの、懐具合の乏しい高校生たちにまで蔓延している流行になっているのだ。》
男らしさ、女らしさというような、「らしさ」の垣根がなくなり、役割意識は希薄になった。それがおしゃれにも影響しているのではないか。男性が女性的なおしゃれをすることに、社会が寛容になっています。どうして眉を気にするのでしょう。他人への印象は、顔の上半分で決まりやすいという研究報告もあります。最近では、男性も女性もお互いに相手を選ぶ時代。男性も女性から選ばれるためにきれいなほうがいい。「美人」を目指しているわけです。
《なんだかユニセックスの世界か、ギリシャ神話の両性具有の神ヘルマフロディトスが思い浮かぶが、ただただ気味悪い考え方だ。男性も女性から選ばれるために化粧をするんだそうだ。まるでアマゾネスの時代に遡った女性の男狩りの様相で凄まじいご説明だ。果てはその化粧が、会社の同僚や仲間からも評価されたいという意識が強い、そうでないと、自分自身納得いかないのでは、とまでおっしゃっている。》
情報が広がっていることも影響している。以前なら多くの人にとって知る機会がなかったために「知らない」で済ませられたし、「知らない人」同士のコミュニティーの中で生きていくことも可能だった。それがいつの間にか、情報を持っていることが当たり前になった。
知らないと遅れているという空気です。合わない行動をするといじめられちゃう、なんてこともある。必然的に、ある程度は最先端のおしゃれな人に合わせて生きていかなければ、と感じているのかもしれない。おしゃれをしないことが、KY(空気を読めない)につながるのだとしたら、嫌な雰囲気ですね。
《なんだ、最後ははやりの単語2文字に落ちつかせるための話だったのか。なぜそんなに「空気」にこだわるのか、なぜ空気に流されない自己の確立が説けないのか。どう見ても男性の眉毛の剃り落としは、女性の眉を剃った後の吊り上げて書く怒りの眉毛以上にみっともない。おしゃれなら、仕上がりは最低限、目に入っても不快感はないはずだが、現実の男性の眉は吐き気をもよおすほど見窄らしい。》
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