すねかじり
新聞の19日に記事が載ってから、ブログには先を争うようにこぼれるほどの書き込みが続いている。
私の世代、昭和一桁が言う“すねかじり”とは、いっとき好んで口にされた“パラサイト”(parasite :親と同居し、基礎的生活条件を親に依存している状態)の意味合いが強い。ぐうたら、穀潰(ごくつぶ)し、といったイメージだ。
しかし、今回の新聞の記事は結婚している夫婦についての調査のようだ。意味不明なのは、出産その他の祝い金やお年玉なども含まれてデータに含まれていることだ。親が孫の出産や、孫にお年玉、入学祝いを祝福するのは慣行、慣例のようなもので親に取っても子にとってもお互いに“すねかじり”とは解釈してもいないだろうし、“すねかじり”のデータとして包含するものではないだろう。
話題の調査は日本大学人口研究所(小川直宏所長)の「仕事と家族」。
これによると、結婚している人の約6割が過去1年間に自分の親や配偶者の親から経済的な支援を受けており、50代でも半数を超えることが分かったという。
07年4月から7月、無作為に抽出した全国の20〜59歳の男女9000人を対象に調査を行なった。4624人(51・4%)から有効回答を得た。親や配偶者の親から「経済的に支援してもらった」と回答したのは56・1%
20代夫婦 ・・・ 65・8%
30〜50代 ・・・ 5割を超え
50代 ・・・・・ 51・2%が支援を受けていた。
金額は12万円未満が64・3%と大半を占めたが、年60万円以上受け取った人も1割以上(11・3%)いた。
結婚後もなお、親が子どもにとって安全を保障してくれる役割を果たしている実態が浮き彫りになった、とは記者の表現だ。
結果について小川所長は「50代は収入が頭打ちになるなか冠婚葬祭など支出が増える。そのため、年金収入がある親世代から支援を受けることが多い。核家族化が進んでいても、なお家族間には相互扶助が働いていることがうかがえる」と指摘する。
《「核家族化が進んでいる」とは、子が親との同居を嫌い別所帯を設けることだ。「家つき、カーつき、婆あ抜き」が言われて久しい。戦後強くなった女性が中流意識が芽生え始めた頃、嫁に行くならと、その嫁ぎ先の家庭を皮肉ったものだ。今ならさしずめ人権侵害で騒動でも起こりそうな言葉だが、嫁姑問題から一緒に生活することを嫌う女性の心を表わすのに広く膾炙(かいしゃ)されるようになった。それでも結婚したい男性が、親を捨て、別に家庭を持つようになり、家庭の崩壊が始まった。当然マイホームの資金が必要になる。ローンも組まなければならない。女の側の要求はエスカレートし、3高(高学歴、高収入、高身長。それに「家」を引きずる長男も嫌われた)時代が続く。それにつれてどんどん男が弱くなって行った。
より豊かな中流を望むことから、女性の社会進出が目覚ましく、共稼ぎが当たり前になって行った。子どもは鍵っ子の時代を経て託児所という一時預かり所に放り込まれ、子育ては親に代わって他人が行なうものに変りつつある。女性の社会進出は男女雇用機会均等法など法を整えさせて行った。両親の家庭離れは子どもの家庭教育を疎かにさせ、親の愛情を知らない子どもが増えることになった。男はどんどん弱くなって行くことになった。
一方、共稼ぎで収入の増えた生活は、海外への旅行ブームを呼び、世界に冠たるブランド消費国になって、一応は「中流」を味わったがその途端にバブルが崩壊した。厳しい格差社会が訪れたが一度味わった「中流」は忘れられず、生活を落とすことが出来ないでいるのが親たちの現状だ。
泥水を啜るように生きて来た世代には我慢することが容易でも、「中流」に慣れた人間には生活を落とす貧乏は耐えられない。その中で親の“すねかじり”があった。うまい具合に世の中は格差社会で揺れている。政治が悪いんだ、世の中が悪いんだ、これに便乗しないほうはない。しかし一方で、親や配偶者の親に対して「経済援助した」と回答した人たちも36・6%いたことも事実だ。
私の世代は次のような考えが普通であった。「親の面倒を子が見るのは当然」だと。しかし今は「子の世話にはならない」という親が多い。そのような親子関係の中で今回の調査だ。返済を約束して親から一時用立てを受けることはあっても、祝い金(親の楽しみでもある)は別にして、親の“すねかじり”は良いこととは言えないだろう。》
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