子育て(スウェーデンの):改題
毎日新聞(1/30)から
『この10年ほどで、出生率1・5から1・85まで回復したスウェーデン。そこには、父親たちがいきいきと育児を楽しむ姿があった。かの国の「男女共同」の現場をリポートする。』
福祉国家スウェーデンを取り上げるとき、決まってこの国の重い税制度が頬かむりされて、表層に浮かぶ現象だけを羨ましげにレポートする。しかし、この国で生きる人、働く人たちは、日本とは較べようもなく高い税金を納めている。消費税にしろ、所得税にしろだ。その結果が預貯金がゼロでも老後の生活に困らないシステムがつくられているのだが、日本の消費者、労働者にそれが耐えられるか。
表でわかるように、スウェーデンの労働者たちが決して恵まれた環境にないことが理解されるだろう。
<レポート要約>
そのような中で、スウェーデンの父親の育児参加の多さを実感できる場所を訪ねた。ストックホルム市中心街にある子どものための図書館。乳母車の乳児に離乳食を与える父親など、父子2人の姿が目立つ。来場者全体の3割程度が父の子連れだった。「パパ、パパ」とはしゃぐ近くで父親(37)が携帯電話で仕事の打ち合わせをしている。時々、3歳の娘とここに来る。インタビューを終えると、本棚の周りを娘と鬼ごっこを始めた。
スウェーデンで最高部数の夕刊紙「アフトンブラーデット」に子育てについて書き、自身も育児休業を取った男性記者(32)は、「父親が育児休業を取るのは、2、3年前までは違和感があったけれども、今は、ストックホルムでは普通になった。公園で子連れの父親どうしが会うと、映画や車など趣味の話になって、父親の交流の場になっているよ」。
音楽番組テレビ局チーフのボウ・トールップさん(32)は、娘のオリビアちゃん(2)が13ヶ月の時から5ヶ月間の育児休業を取った。「エキサイティングだった。世界観が変った」と興奮気味に話した。14ヶ月の育児休業を取った妻のエマさん(35)は、「娘の夜泣きで眠られず、ストレスになり、つらかった」が、夫が育児をしてくれて落ちついた。「父親が育児をするのは良いこと。娘が両親から愛されていると実感できると思うし、彼女の安心感につながるとおもう」と話した。
《この父親は5ヶ月間の育児休業を取っているが、現在、日本の父親の育児休業は、1、2週間から精々1、2ヶ月で休暇の程度の気休めのもので、自分自身の骨休めを兼ねた育児のお手伝いで終わっているのが実情だろう。これならわざわざ会社を休んでまで手伝いなどしない方が良い。私の世代の育児には、紙オムツのような便利なものはなかった。赤ちゃんの排便の度に、手洗いをしていた。紙オムツのある現在では天国のような楽しい子育てが可能の筈だ。当時は電気洗濯機があっても一槽式で、乾燥は手絞りかローラーを手回しして絞っていた。眠る間もない忙しさの中で、子育ては休暇など取らなくてもしてきた。産院から戻ると首の座らない乳児の湯浴みは私の担当だった。帰宅時間はまちまちであったが、首が座らなくて怖がる妻に代わって欠かさず続けた。育児休業を取らなくても男が分担してできる育児は幾つもある。》
スウェーデンでは70年代、女性の社会進出が顕著になり、出生率は70年1・9から、80年1・7と減り続けた。政府は74年、180日の休業に所得保障をする育児休業制度を始め、数年おきに休業日数を増やしたが、減少傾向は止まらなかった。このため、95年、育休制度に所得の8割保障と「450日休業(休暇が認められる期間)のうち1ヶ月は父親が取るべきだ」と付記した。それ以降父親の育休取得率は伸び、97年に10%になった。それでも出生率は改善せず、99年と00年は過去最低の1・5を記録した。政府は更に02年、育児休業を480日*に増やし、「うち2ヶ月は父親が取るべきだ」とした。この結果、06年には父親の育休取得率が2割を超え、呼応するように、出生率も06年に1・85まで回復した。因に、日本での男性の育休取得率は0・5%である。
* 現在は480日について、所得の最大80%が国の予算から支払われる。
《育児休業中の所得の保障について、羨ましそうに書いているが、これも高い租税を国に納めているからで、スウェーデンの足元にも及ばない税金で済ませている日本では、手当てを寄越せと言う方が無理だ。世界のブランドの集まる日本、贅沢に慣れた日本人の生活、この国の現状で、それに見合った休業保障、育児手当てを出せる道理はない。》
一方、スウェーデンでは社会的性差を排除する働き掛けも進めている。
夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考えについての調査では
賛成 反対
男性 女性 男性 女性
スウェーデン 8.9 4.0 88.2 93.2(02年)
日 本 50.7 39.8 46.2 56.9(07年)
(単位 %)*リポーターは女、男の順で書いているが、多くの慣例に従って私は、男、女の順で書いた。
リポーターは最後に次のように結んでいる。
スウェーデンでも高い休業保障て父親の育休取得は増えたが、それでも出生率は回復せず、父親の育休が普通になった頃から出生率が回復した。日本のように、出産一時金や児童手当を増やすようなやり方で、働く女性が子を産みたくなるとは思えない。仕事と子育ての両立には、夫と社会のサポートが必要で、父親が育休を取るのが当たり前の社会になり、夫婦で子どもを育てる環境が整わなければ、出生率(06年で1・32)の回復は望めないと思う、と。
参照 出生率の低下と少子化 05/12/24
男性の育児休業 07/04/30
消費税上げ?% 07/10/21
児童手当2万1000円欲しい 07/11/20
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント