中高年詐欺被害というけれど
人生わずか50年の私たち昭和一桁世代には、中高年といえば30代〜40代だが、日本人男性の平均寿命79歳となった現在では50代〜60代となるだろう。このいい加減人生の機微も思慮分別も身についたはずの中高年が、甘い誘いの勧誘に、まんまと嵌って泣きを見る詐欺に引っ掛かっている。
毎日新聞(2/7)から
中高年者を狙った求人詐欺事件で、警視庁に逮捕された東京都豊島区の雑貨販売会社「三共システム」元社長、田島滝三郎容疑者(69)らは、再就職が難しい中高年の弱味につけ込み、互助会費などを払えば役員に採用するという手口で詐欺を繰り返す「常習者」だった。定職欲しさに言われるまま高級車を購入させられた被害者もおり、やりきれない怒りが広がっている。
《普通ならこのような誘いに引っ掛かるわけがないと思う。私なら絶対に引っ掛からない。何故か、そんなおいしい話がある、と思うのがおかしい、先ず疑う。幾ら就職をあせっているからって、「幹部募集」や‘役員に採用する’などの甘い言葉に乗せられるとは信じ難い。応募者は、わけあっての再就職でないと、その年齢になって就職先を探すことはない。私の世代では、定年年齢を60歳に上げる大企業はあったが、日本の多くの企業の定年年齢は55歳であった。
この時代、関連企業への再就職の流れもあったが、再就職先が「幹部」であったり、役員であったりするのは、大抵元の企業でもそれなりの地位を確立していた人で、再就職先が小規模であったりする場合には確かに優位性があった。その他には、天下り人事も当時から存在していた。
今回、詐欺に会ったといわれる中高年者たちの前歴が全く判らないが、多額の出資をしているようだ。元々蓄えがあったのか、前の企業からの退職金なんだろうか。》
横浜市の50代前半の男性は05年7月、全国紙の求人欄(『幹部社員募集」)を見て入社した3日後、役員から「会社で使う車を購入するので名義を貸して」と求められた。約450万円のベンツを購入するサインをする。後日「会社に予定の入金がなかった。消費者金融に行ってくれ」と言われ、自宅を担保に500万円を借りた。
《「幹部」がそれほど甘い餌なのか。凡そ1000万円の出資だ。彼は新たな再就職先を見つけたが、今も月17万円のローンを抱えている。「自宅が担保に入っているので、堪えるしかない」と話していると言う。甘い決断をした自分を恨むしかない。子どもが何人いようと、ローンが何年残っていようが、単なる家庭の事情だ。他にも2、3の例が上げられているが、同じことだ。うまい話に乗った己の自業自得だ。》
昨年12月3日の毎日新聞記事に、継続雇用時の賃金水準についての希望と見通しを聞いたアンケート結果のまとめが載っている。改正高齢者雇用安定法の施行(06年4月1日)で、企業に65歳までの雇用確保が義務づけられた。間もなく60歳を迎える人々は、“新たな仕事”にどんな条件で働きたいと思っているのか。57〜59歳の正社員に実施したアンケート結果(労働政策研究・研修機構:従業員300人以上の民間企業を対象に実施し、2671人から回答を得た)。
私たち世代の定年制変革時代、定年延長後の賃金水準は現時点までと比べ、約6〜7割りの賃金が取り沙汰されていた。現在も最低限希望する水準として現在の賃金の6〜7割程度が最も高く(33・9%)次いで8〜9割が(23・1%)続いて、現在とほぼ同額(15・7%)、現在の賃金より多くを望むものも0・7%いる。
60歳になり、継続雇用を選んだ男性(営業、外回り)は、月収は4割ダウンしたという。仕事の内容はそれまでと殆ど変らない。「仕事が変らないのに4割も減るのは納得できない」とぼやく。2人の息子のうち1人は大学に入ったばかりで、家のローンも残っているので辞められない事情もあり、別の仕事も探すつもりという。
おしなべて欲が深すぎる。「仕事が変らないのに」は本人の問題だ。企業は情け容赦ない、定年制、継続雇用制度がある以上人件費の問題は企業にとって生存を左右する。確かに、60歳と、60と1日歳とは全くと言えるほど変らない。或いは60歳と60と1ヶ月歳も変らないだろう。しかし、60歳と61、62歳では明らかに差は生まれる。それを現状の8〜9割、いや、現状よりも多く、などとは企業に取っては世迷いごとになる。
このような思考状態で就職先を探そうとするから「幹部に」や‘役員に’にまんまと引っ掛かるのだ。詐欺を試み、誘う方はそんな旨い話に乗ってくるような人間は、最初から幹部や役員に不適当と簡単に見極める。幹部や役員には相応しくない人間だ、企業幹部や役員が、その程度のからくりも見抜けないでは会社は任せられない、ということになる。
田島容疑者は88年と94年にも、詐欺容疑で逮捕され、有罪判決を受けた。新聞広告を出し、中高年者から「互助会」「共済会」名目で虎の子の退職金などを騙し取る手口だった。警視庁はこれまでに、レーダー格の田島容疑者を含む6人を逮捕し、全容解明を進めているという。
騙したやつは許せないが、「幹部」や「役員」などの名ばかりの権威に踊らされないよう、自分をしっかり見つめて欲しい。現在テレビで雁首並べて平身低頭、人を騙して謝っているのはそれこそ名実ともに幹部や役員たちだ。彼らは人を騙すことこそすれ、騙されることは滅多にないのだ。高望みせず、身の程知ることこそ大事なことだ。
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