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2008年2月26日 (火)

「踏み絵」とにかく踏んでは見せたが

私の読みでは予想外だった。アメリカへの気兼ねから、恐らくウェリントン会議でも、踏み絵を踏んで禁止条約賛成の意思表示をすることはないと見ていたのだが、取り敢えずは踏んだようだ。

毎日新聞(2/23、24、25)から
「オスロ・プロセス」の「クラスター爆弾ウェリントン会議」で、日本政府は22日、今年中に禁止条約を作るとの「政治宣言」に署名した。日本はこれまで常に態度を留保してきたが、初めて禁止条約賛成の意思を打ち出した。取り敢えず署名した背景には、禁止に向かって加速する国際社会に対し、これ以上のらりくらりの消極的な姿勢は見せられないことと、国内的には世論が高まるのを恐れる政府が「先手」を打っておく必要を感じたからだろう。

「不発弾による人道上の問題は認識していた」。町村官房長官は22日の会見で署名の理由を説明、従来の立場に変わりはないと強調した。署名が今後の会議参加の踏み絵であることを読んでいた。宣言は禁止対象を示しておらず、外務・防衛省で協議を重ね、英独仏とも繰り返し連絡を取った。

政府は、オスロ・プロセスとは別に、米露中が参加する特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)締約国会議を重視して、1月の専門家会合で、「部分禁止」を表明したが進展はなかった。また、昨年2月には08年の条約作りを目指す「オスロ宣言」への態度を留保して「後ろ向き」と批判されていた。今回は「国際社会の流れが出来上がり、世論に押されて賛成に廻る最悪の外交だけはしたくない」(外務省幹部)との判断があった。現地代表団筋では「(他国と同じ)タイミングで署名できてよかった」と安堵しているという。ただ、政府は禁止対象が拡大することを警戒しており、(日本は〈取り敢えず〉踏み絵は踏んだが、全面禁止ではないためだ)「次回の会議で条約の内容についてきちんと議論する」としている。

会議では「想像以上に多くの国が賛成した。日本も加わったことは喜ばしい」。議長国ニュージーランドの外交官は興奮を隠さなかった。しかし、日本が賛成するまでには、高性能の爆弾を禁止対象から外す「部分禁止」を求める国との綿密な裏での調整があったようだ。「部分禁止派」約20カ国が毎日のように開いた「全面禁止派」への対抗のための密談だ。各国はこの場で政治宣言への対応を話し合っていた。「署名しないことは非常に大きな政治的なリスクとなる」(参加国)や、欧州各国の世論はクラスター爆弾に厳しく「後ろ向きと取られる行動は取りにくい」(同)など。とりもなおさず全面禁止を認めたくない部分禁止派各国は、取り敢えず署名だけはしておいて、後は日本を含めた部分禁止派が足並みを揃えれば、「全面禁止派」から主導権を奪い返せるとの思惑が見えてくる。

クラスター爆弾の中には、不発弾になった場合に自動的に爆発する「自爆装置つき」の改良型や、攻撃目標を認識して爆発する「目標識別」能力のある最新型がある。独仏などは「自爆装置だけでは不十分だが、さらに目標識別能力まで備えた最新型は例外とするべきだ」と主張を揃え始めている。従来、例外なく爆弾を禁止すべきだとしていたノルウェーも「最新型が軍事目標と民間施設を区別できるなら市民の被害は出ない」と容認を示唆し始めている。外交筋は「次回の会議では、自爆装置と目標識別能力の双方を備えた爆弾が禁止対象外として扱われるのではないか」とみている。

だが、日本は今回「自爆装置つきの改良型であれば禁止対象外にする」と主張。目標識別能力が備わっていなくても禁止しない考えを示した。日本は英独仏が爆弾のうち一部だけを禁止する「部分禁止派」で同じ立場と主張してきたが、このような考えを主張する国は殆どなく、非政府組織は「日本は最悪」と酷評している。

有志国で今年中の禁止条約締結を目指す「オスロ・プロセス」には、同爆弾を大量に保有する米国は参加していない。日本は「条約非加盟の同盟国」がクラスター爆弾を使うことを黙認できるようにする条約修正案を提出した。その後の非公式協議では、米国の同盟国から日本提案を支持する声が相次いだという。各国代表は議場で決して「米国」という言葉を使わない。しかし「非加盟同盟国」が米国を指すのは明白なことだ。

米国は、会議開幕3日前の15日、「すべての不発弾被害の中でクラスター爆弾が原因となる割合は小さい」と自国に都合の良い情報を載せた文書を各国メディアに配布して、国際世論の工作にも乗り出していた。文書は「クラスター爆弾禁止キャンペーンは、不発弾問題全般に取り組むのではなく、一つのタイプの爆弾に汚名を着せようと試みるものだ」と禁止運動をあからさまに批判する内容のものだ。

これに対しNGO「クラスター爆弾連合」(CMC)」は「米国が(同盟国を通じ)爆弾を使い続けられるように条約を骨抜きにしようとしている」と米国寄りの日英など9カ国を名指しで批判した。

在ニュージーランド米大使館は「クラスター爆弾の如何なる禁止措置にも反対する。クラスター爆弾を犯罪視することで、同盟国との軍事作戦が阻害される」との声明を発表し、オスロ・プロセスへの強い警戒心を露にした。

とはいえ、会議では、オスロ・プロセスを主導してきたノルウェーやニュージーランドだけでなく、同爆弾を大量に持つ英独仏や、イタリアなどが政治宣言に署名をし、閉幕した。

オスロ・プロセスは5月にアイルランド・ダブリンで開く会議で条約の合意を目指すことになる。今回の政治宣言は、そのダブリン会議への参加の条件であった。主要国が署名したことで、条約締結にいっそうの現実味が出てきたと見てもいいだろう。

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