大容量(アップル)かワンセグ(ソニー)か
膨大な数の楽曲を手軽に持ち運ぶことができる携帯音楽プレーヤー。若い世代を中心に便利さが受け、急速に普及している。
《当初、カセットテープを録音媒体にしたソニーのウォークマンが一世を風靡した。男も女も頭からすっぽりとヘッドホンをかぶり、通勤電車に限らず乗り物の中はヘッドホンから漏れる耳障りなシャカシャカした音で溢れた。聞いている本人には心地よい音なのだろうが、洩れる音を聞かされる周りの人間には堪ったものではなかった。(その当時、神経を逆なでされるような洩れてくる音に耐えられず、何人の人間に注意をしただろう。今思い返せば怪我もせず、刃傷沙汰にもならず、よく無事で生き延びたものだと思える。)
技術革新はアナログからディジタルに移り、短命に終わったCDやMDを通過して、メモリー、ハードディスクの大容量ディスクの時代に突入した。携帯電話と同じでメーカーは複合商品として多機能を売りにし、若者のハートを摘もうとしている。》
ところが、いざ売り場に行くと、さまざまな長所をアピールする商品が並び、選択に困る人が多く出ているという。現時点でトップのアップルと、追い掛けるソニーの人気商品を比較した表がある。
アップル ソニー
商品名 iPod ウォークマン
型名 iPod nano 8GB NW-A916
特徴 簡単操作 ワンセグ対応
容量 8ギガバイト 4ギガバイト
重さ・縦x横 49g・69.8x52.3ミリ 74g・86.0x47.2ミリ
電池持続時間
(音楽再生) 24時間 36時間
実売価格 2万3500円前後 2万8900円前後
(毎日新聞07/12/16)から
現在の携帯音楽プレーヤーは、従来のCDプレーヤーやMDプレーヤーよりははるかに小型で軽い上、何千、何万という曲を記録できる。インターネット経由でアルバム収録曲を1曲ずつ購入できるのも特徴だ。
その元祖となったのがアップルの「iPod」(アイポッド)。大容量の内臓ディスク、洗練されたデザインや使い易さに加え、インターネットの音楽配信を受けるのに必要なソフト「iTunes」(アイチューンズ)の利便性もあり、大ヒット商品となった。累計販売台数は世界で1億台を突破し、その勢いは衰え知らずの活況だ。
表の「iPod nano」は、04年の発売と同時に携帯音楽プレーヤーに火をつけた「iPod mini」の後継機種になる。9月に発売された新モデルは、映画やミュージックビデオなど動画の視聴も可能になった。使い勝手は更に良くなり、アルバムジャケットを次々とめくるようにして楽曲を探すことができる。画面の明るさも従来製品より65%向上し、小さな字でも一段と見やすくなっている。
《対するソニーは、グループ内の音楽会社との兼ね合いで、インターネット上に違法コピーがますます出回ることになり、CDの売上げに影響する、との考えから楽曲のネット配信に慎重であったが、iPodが大ヒットすると、アップルの一人勝ちに指を咥えて見ておられず、さっさと方針転換。音楽を外出先で聞くスタイルを産み出した「ウォークマン」ブランドを前面に押し出し、急遽巻き返しに出ている。》
「ウォークマン NW-A916」は、携帯音楽プレーヤーで初めてワンセグ(携帯端末向けの地上ディジタル放送)チューナーを搭載している。最長で約25時間、ワンセグ放送を録画できる。パソコンを使わないでCDやMDのプレーヤーから直接楽曲を録音する機能もあり、パソコンを持っていない人には便利。ソニー独自の技術で周囲の騒音を4分の1に抑え、騒々しい場所でもはっきりとおとが聞こえるという。プレーヤーの音や大きさには大差ない。容量、操作の楽しさにこだわるならiPod、ワンセグの視聴や直接録音に重点を置くならウォークマンと言えそうだという。
《何千、何万という楽曲が収録できることのメリットは何だろう。数を増やすことに生き甲斐を持つ人、自慢したい人なら話は別だ。世の中にそれほど録音して重ねて聞きたい歌い手は、よほどの身贔屓でないといるもんじゃない。泡沫歌手や泡沫ミュージシャンの類いを収録しても、ディスクを無駄に消費するだけだ。
私がカセットテープに録音(第1号)を始めたのは1972年12月30日、カールベーム指揮するベルリンフィルによるシューベルトの交響曲第2番変ロ長調からだ。爾来35年間約700巻をライブラリーとして繰り返し聞いている。その後録音媒体はCD(音質の劣悪なMDでの録音はしたことがない)に移ってつづいているが、テープにあったヒスノイズやレコードのスクラッチノイズがないのだけはCDが優るが、音質ははるかにアナログのテープが良い。現代の若者たちは、音質にこだわらない人たちが増え、感覚的なものは間違いなく欧米化されてきた。音楽には音質を求めなくてもよい、はやりの何が歌われているかが大事、といった感覚だ。写真で言えば綺麗な写真でなくても誰が写っているかで価値がきまるのだ。音楽もまた然りだ。
携帯音楽プレーヤーも携帯電話と同じ道を辿るのだろう。ごちゃごちゃとあれこれくっつけて複合商品となり、話が交わせれば元々の用は達成できた筈の携帯電話が、「軒を貸して母屋を取られ」て電話機能付きのゲーム機に変質したように、携帯プレーヤーもまた、あれこれ付きの音楽プレーヤーになることだろう。》
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