福岡「海の中道」飲酒運転事故で訴因変更を
2006年8月25日深夜、福岡県福岡市東区内の市道に架かる「海の中道大橋」で、走行中のRV車に対し、後方から猛スピードで乗用車が追突。RV車は歩道を乗り越えて橋の欄干を破壊して海に転落した。この事故でRV車に乗っていた家族5人のうち、幼児3人が溺死した事故の公判で、18日、福岡地裁が乗用車を運転していた今林大(ふとし)被告に対する危険運転致死傷罪の訴因変更を命じ、「懲役25年」の検察側求刑が一気に「7年半以下」に短くなる可能性が高まり大きな転換点を迎えた。福岡地裁は福岡地検に対し、業務上過失致死傷と道路交通法違反(酒気帯び運転)の罪を予備的訴因として追加するように命じたものだ。同地検は地裁の訴因変更命令にに対し、応じる方針を示した意見書を同地裁に提出した。年内にも正式な手続きを行なうことになる。
福岡地検の命令は、危険運転致死傷罪について「無罪」がでる可能性があるもので、被告の3人もの命を奪った刑事責任を問えなくなる可能性がある。検察側は危険運転致死傷罪と道交法違反の併合罪で最高懲役25年を求刑していたが、業務上過失致死傷罪(最高懲役5年)と酒気帯び、轢き逃げの併合罪が適用された場合、最高懲役は7年6月となる。
被告は事故後に大量の水を飲んでおり、アルコール検知時点でで出た数値は泥酔の状態であったとはいえないものであった。被告が泥酔状態であったかそうでなかったかが最大の争点になるが、事故発生当時の被告の状態が運転不能に近い泥酔状態にあったことを示す客観的証拠はないことから、同地裁は危険運転罪の適用除外(無罪)を避けるため、結審後にも拘わらず訴因の変更を命じたものとみられる。
諸沢英道・常盤大大学院教授(被害者学)の話。
飲酒の認識を検察が証明するのは難しい。それを厳密に求める危険運転致死傷罪の法の欠陥が表に出た最悪のケースになりかねない。3人の死が懲役7年半ではあまりにも軽い。
板倉宏・日大法科大学院教授(刑法)の話。
刑罰法規は厳格に解釈すべきだ。検察が酒気帯び以上の証明をできないのなら、業務上過失致死傷罪に認定を落とすのも仕方がない。危険運転致死傷罪は構成要件が難しい、と。
《これでは事故直後には自身動くことが可能なら、逃げることで時間を置いて何らかの方法で酔いを醒まし、取り調べには今林被告のように、居直りを決めれば周りの飲んべえたちが助け舟を出し、後は弁護士さまがうまく援護射撃をやってくれることになる。ますます轢き逃げが増えることになることが懸念される。たしかに、板倉の言うように、法律の解釈は厳格でなければならない。しかし、この事故では3人の命が失われている事実がある。どう考えても7年半の刑では軽すぎるとしか言いようがない。》
今年も余すところ幾日もない。警察庁は12月7日夜8時から8日朝5時にかけて全国3200カ所で、警察官約2万2000人を動員して一斉に飲酒運転取締りが行なわれた。
警察庁によると、この取締りでの全国の検挙件数は1万384件(逮捕者33人)。そのうち飲酒運転による取締りは、酒酔い運転4件(逮捕者2人)、酒気帯び運転786件(逮捕者14人)だった。飲酒運転による事故が社会問題化している中での全国一斉検問は、過去3回行なわれているが、それでも飲酒運転は減少傾向にあるとは言い切れない。飲酒運転の摘発総件数では、
初回 (10月27〜28日) 1053件
2回目(11月16〜17日) 757件
今回 (12月7〜8日) 790件 と増えている。
《如何に法を厳しくしようと、飲酒運転は途絶えるものではない。道行く車の運転手、片手に携帯は未だにしばしば目にする。狭い道路での片手ハンドルで右折左折は大きく膨らみ、対向車線の車の行く手を阻む。水物を飲みながら、物を食べながらの運転は幾らで目にする。お酒飲むな酒飲むなの御意見なれど、あーヨイヨイだ。酒飲みから酒は断つことは不可能だ。酒飲みが時と場所を弁えるなんて、考えられない。何時でも、どこでも、欲しい時には買えるものだから。飲酒運転がなくなることを願うなど夢か幻の願いごとだ、酒がこの世からなくならない限りに置いては。
そしてまた、裁判では世論を逆なでするような判決であろうと、勝てば良しとする弁護士は、正義を求める法の精神はお構いなしだ。法の弱いところを巧みに探し出す。
飲酒事故が全くなくならないにしても、これ以上悲惨な事故で悲しい思いをする人が生まれないためにも、現時点での呼気中のアルコール濃度の数値を一段と厳しく設定変更するなり、事故後に血中濃度を故意に下げる行為を行なった場合には、証拠隠滅罪を適用するなり、少なくとも1人でも人の命を奪った場合には、生涯運転免許を再取得させないことなどを考える必要があるのではないか。或いは飲酒の上では初めから集中力は散漫になることは分っていることから過失致死傷を認めない、危険運転致死傷とするなど逃れられない厳しさを求めるべきだ。
ますます飲酒の機会が増える年末年始だ、栃木県警の取締りでは11月以降の飲酒運転が急増しているという、どんなに厳しくしても、飲酒運転はなくなるものではない。年末年始に限らず、警視庁は頻繁な取締りを全国規模で続けるべきだろう。》
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コメント
この裁判を行った裁判官は、酒を飲んだ事がないのかな~と思います。
酒を飲んだ時間と酒の量がわかれば
今林被告に、時間どおり酒を飲ませて、テスト運転をさせれば危険か危険でなかったのか、すぐにわかると思いますが、こんなのは出来ないんですか?酒を飲んでもすぐには酔いませんし、少し時間がたって酔いのピークになり、時間とともに醒めるので、じっさいに飲ませて検証したほうが良いと思いますけど。
投稿: 永戸明夫 | 2008年3月 6日 (木) 12時44分
なるほど!そういう検証もありますよね。
まったく、裁判官の常識は世間の非常識というくらいズレているようですから、酒も飲んだ事がないのかもしれません(笑)
実際に運転させるのは多分許しが降りないでしょうが、ブレーキを踏む反応時間の差とか、色んな事ができるでしょうね。
でも気持ちとしては同じ場所で同じ条件で、裁判官を助手席に乗せて実証実験をやってもらいたい!
投稿: BEM | 2008年3月 8日 (土) 23時30分