ベロタクシー
22日に高齢者用電動カートについて書いた。同じく私は今まで情報としても、見たこともなかった乗り物をテレビの画面で発見(?)した。東京都渋谷区で取材していたものだが、名前をベロ(ヴェロ)タクシーと呼ぶ可愛らしい自転車(ラテン語で‘Velo’は自転車のことらしい)タクシーだ。
本当に可愛らしい(子どもに人気のポケモンカーよりはずっと可愛い)乗り物だ。減色法の三原色(YMC)加色法の三原色(BGR)のような単彩色で塗り上げられていて、並んで走ればまるで虹のようになるだろう。勿論自転車だから動力は人間が漕ぐペダルによる推進力を利用する。前輪は1つ、後輪が2つの3輪車タイプ。取材は乗り物の紹介ではなく、何種類か取り上げた職業の月給をタレント達が当て合う番組の中での紹介であった。因に、その運転手は28歳の女性で、月30万円を稼いでいるとのこと。彼女に取材する前に比較材料として、中年の男性タクシー運転手の月給を知らせたが、彼は35万であった。タクシー運転手の厳しい労働条件はしられているが、一方、彼女のベロタクシーの方は1日に4〜5時間(6時間の日もある)、1週間4〜5日出勤とのこと。
タクシーの運転手が馬鹿らしくなるような収入を得ているわけだが、だからといって自転車タクシーではトライアスロンのような長距離は走れない。そもそもこのベロタクシー、1997年にドイツで開発され、早くも2002年4月、京都市で日本最初の運行を開始していたらしい。2004年のアテネオリンピックでも運行しているから、現地に行った人の中には今さら何を驚いているんだ、という人もいるだろう。
可愛らしいことを強調したが、デザインが優れている。真横から見ると、椎の実のようなボディをしていて、走行時の空気抵抗を軽減する形状となっている。万一自動車などと接触した場合にも運転手や乗客を保護できるよう客席一体型のボディが、頑強なスチール製のシャシーフレームに載せられている。環境問題には常に先進国のドイツの開発したものだけあって、車体を含めて100%のリサイクルが可能、廃車時の環境負荷も少なくするように考慮されているという。
坂道には電動アシストがついており、負荷の調節はバイクのスロットルのように右手のグリップで、油圧式のディスクブレーキで安全に減速・停止が可能。ベロタクシーは自転車なので法律上は誰でも運行できる。が、車道を乗客を乗せて走るという性格上、ドライバーは普通自動車運転免許証もしくは自動2輪免許の所持、道路交通法の遵守が必須要件となる。自転車、つまり軽車輌にあたり道路の左側端を走行し、交差点においては二段階右折で右折を行なう。
京都市は従来は烏丸通、四条通、寺町通、御池通に囲まれた地区に限られていたが、京都府道路交通規則の改正に伴って2007年4月1日から基本運行区域を新風館を中心にした半径3km圏に拡大して運行を始めた。現在国内ではほぼ20都市で運行されているようだ。
ただ、自治体によっては公安委員会によって定められる細則により、ベロタクシーの運行が妨げられている地区の少なくない。問題になってくるのは自転車の定義で、「自転車の乗車人員」項目で「二輪または三輪の自転車」において運転者以外の乗車(小児を除く)の例外や特例を認めていない県が多く、ドライバーのみの走行しかできない。京都を始め、仙台市や横浜市など粘り強い交渉で改正された地域もあるが、「交通渋滞を起す」「事故が起きる」などで理解が得られないケースもあるようだ。
ベロタクシーが都市を走ることは、環境に対する啓蒙活動としての1面を持ち合わせている。環境に優しいイメージや、環境保護活動としての趣旨に賛同してスポンサーとなる企業も出ている。環境の点に重きをおいて環境NPOとして運営を行なっているケース(京都市、奈良市、松本市、喜多方市、倉敷市、長崎・伊王島、福岡市、熊本市など)もある。
長距離や緊急時、或いは混雑する道路などでは通常のタクシーを使えばよい。渋谷の場合初乗り運賃は大人で500メートル300円、100メートル超過するごとに50円とか。ただ、デメリットもある。車輌の特性上、風雨の強い日の運行は取り止めになることもあるようだ。
後部座席は2人掛けも可能のようだから、広域に亘らない観光地などでは喜ばれよう。また、ちょっとしたお使いなどクリーンな乗り物として都道府県公安委員会の細則の改正も睨んで、交通が煩雑でない道路を走ることができるようになれば、可愛らしい乗り物で、街も明るくなるだろうに。
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