東京大学
今日の夕刊に面白いニュースが載った。「東大力」をアップするために、保護者の年収が400万円を下回っているなら授業料を全額免除し、優秀な職員を卒業生から積極的に採用する方針のようだ。
何かにつけて格差社会が叫ばれ、教育においてさえその歪みを云々することが多いが、少子化が進み、どこの大学も学生の獲得には頭を悩ましているところだ。東大の試みは底辺層の頭脳を掬いあげるという意味では苦肉の策だろうが時宜を得ている。
東京大(小宮山宏学長)は「東大力アップ」のため、あの手この手を画策している。04年の学校法人化と少子化のあおりで国内の学生争奪が激化している上、世界トップクラスの大学との競争に生き残るためには優秀な職員や学生の確保が不可欠という東大側の戦略が背景にあるようだ。
来年度から、保護者の年収が400万円以下の学部学生の授業料を全額免除する。収入による明確な免除基準を設けたのは国立大では初めてで、08年度はこれまでより約1割多い360人前後の学生が全額免除の対象になるとみられる。
東大はこれまで、国の基準を踏襲し、授業料収入の5・8%内に免除額が収まるように授業料免除対象者を決めていた。学生は年収が幾らなら免除対象になるのか判断できなかったため、「明確な基準を示し入学前の不安を取り除きたい」と新制度を創設した。
学部生の年間授業料は53万5800円。06年度に全額免除された学部生は325人で、全体の約2・5%。新基準では対象者が1割増えると予想されている。学校側は数千万円の負担増が見込まれるが、経費節減などの自助努力でまかなうという。
東大が行なった学生生活実態調査によると、年収450万円の世帯の学生は約14%。また、年収200万〜400万円の世帯では、教育費が家計を圧迫しているという民間の調査もあり、400万円を基準に据えた。東大奨学厚生グループは「収入が少ないので東大受験を諦める、という人を減らしたかたかった。今後は他の国立大にも波及するかも知れない」と話す。
また、東大は04年の法人化後、職員の採用試験で東大生の積極採用を進めていいる。法人化以前は過去30年間で3人だけだったが、この4年間は05年1人、06年4人、07年16人、08年6人(予定)で計27人になる。08年の採用は28人で、内定段階ではうち14人が東大生だったが8人が辞退した。それでも6人が就職する見込みだという。
国立大学協会(東京都千代田区)によると、法人化前の国立大職員は国家公務員試験Ⅱ、Ⅲ種の合格者が採用されていたため、キャリア官僚を目指しⅠ種を受験することが多い東大出身者は殆どいなかったのだという。ところが東大は、法人化後の05年から、国立大の統一試験の他、独自試験を唯一実施している。第1次選考の書類審査では、「通訳」か「ビジネス会話」レベルの英語力、コンピューター関連の資格のほか、「東大卒見込みの者」が合格条件の一つとなっている。
今年採用された中の1人(男・26)は「教員や学生の人的資源や研究成果をお金に換算すると、東大は価値の総額は国内でも有数の企業だと考えた。利益の追求ではなく、未来の社会に貢献できる点も大きい」と就職理由を話した。
《世の中には、官僚制度のエスカレーターに乗って、税金を食いつぶす録でもない人間を製造する学校との認識で東大を見ているものもいる。「初心忘るべからず」の言葉は知っているようだが、初心の中身は何を思っているのだろう。
毎年発表される世界の大学のランキングで、
東大は2004年の14位があるが、おしなべて20位辺りで上下している。国内では最高学府として君臨するが、アカデミックでエスカレーターに乗るだけの融通の効かない人間を作るだけだ。それを裏付けるようなアンケートの結果もある。
朝日新聞の「大学ランキング」2006によると、
高校教師の権威に弱いレベルでは、進学指導ではどうしても1位の東大、2位の京大となるが、のびのび学んでいる大学では東大は6位、総合では1位が東北大学、2位に京大で、東大は5位となっている。また、学長からの評価ではやっぱりというべきか、1位東大、2位京大は月並みのことだが、キャリアの支援となると、東大も京大も10位内にはいない。
学科試験の点数だけは抜群でも、潰しの効かない人間は次の設問に対するアンケートによく現れている。
企業に入ってから、どれだけ、どの大学で学んできた人間が役立つか。企業の期待度だが、
1位 早稲田大 (文系)
2位 早稲田大 (理系)
3位 慶応義塾大(文系)
4位 京都大 (理系)
5位 東京工業大
6位 慶応義塾大(理系)
7位 一橋大
8位 大阪大 (理系)
9位 同志社大 (文系)
10位 京都大 (文系)
東大出は期待されていない。小宮山学長が目論む世界トップクラスの大学もいいが、勉強だけができる頭でっかちを拵えても企業では使えない。社会の役に立つ人間を作るほうが先決だと思うのだが。世界のトップ10入りする大学は、先ずは英語力があること、英語で論文が書けることで左右され、ノーベル賞とフィールズ賞(数学のノーベル賞)を受賞した卒業生の数、それらを受賞した教授の数、生命科学、医学、物理学、工学、社会科学で頻繁に引用される優秀研究者の数、ネイチャーとサイエンスに掲載された論文の数、SCI論文、上記の評価基準をそれぞれの教授陣の数で割った点数の合計、など6つの基準でそれぞれ高得点を得た大学だ。それぞれのウエイトではノーベル賞関連部門が総評価のほぼ30%を占める。
授業料全額免除もいいが、後に税金の無駄使いに長けた高級官僚を増やすことになるのだけは避けて欲しいものだ。》
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