エスカレーター
今も、あちらこちらでエスカレーターの事故が起きている。東京都内だけでも年間1000件以上に上っている。バリアフリー法への対応もあって、鉄道など交通機関を中心に設置が急増している。通勤や通学、買い物などの外出時などエスカレーターに乗らない日はないだろう。このように身近な乗り物であるエスカレーターで、高齢者の事故が増えている。(日本エレベーター協会、技術部長・碓井宏秋氏、2005年12月現在)
1871年、シカゴは大火に見舞われた後、農畜産業から工業への移行に伴い都市化が進み、建築界では1880年から近代高層ビル(鉄骨)の建設ラッシュが始まった。エレベーターが実用化の段階に進み、エスカレーターは1893年シカゴ万博(正式には、世界コロンビア博覧会)の会場内に設置されたのが始まりとされている。日本には1914(大正3)年、東京・三越百貨店に設置されたのが第一号。2005年時点で日本国内のエレベーターの総数は約55万台、そのうちエスカレーターは約1割(6万台)。にも拘らず事故件数ではエレベーターのおよそ15倍にもなっている。
毎日新聞(11/26)から
同紙が取り上げたのは、最近発生したエスカレーターで体を挟まれたりする親の躾不足が原因の事故のことではない。元々歩くためのものではない乗り物を、歩いて昇り降りすることの危険について、問題として取り上げたものだ。
「エスカレーターでは歩かないでください」。横浜市営地下鉄は今秋から、全32駅構内に設置されたエスカレーターの乗り口にこんなポスターを掲示した。昇降客のために関東は右空け、関西は左空けがルールと思い込んでいる人も多いが、国土交通省によると、エスカレーターの構造はもともと、利用者が歩くことを想定していないという。
《こんなこと誰でも知っているはずと思う。特に乗降客の多い地下鉄駅のエスカレータの乗降口には「エスカレーターでは歩かないでください」の表示が必ず掲げられているからだ。また、百貨店やスーパーには「子どもは中央に、てすりにつかまって」が掲示されている上に、五月蝿いほど場内放送が注意を喚起している。「関東は右空け」「関西は左空け」も大体の話で京都駅は特には左も右も決まってはいないようだ。》
きっかけは横浜市交通局に寄せられた苦情だった。「エスカレーターに孫と手をつないで並んで立っていたら、後ろから来た男に『どけ、どけ』と言われ、孫が押された」「右側に乗ってしまった高齢者が左に避けることもできず、後ろから来た人に急かされ、歩かされていた」
交通局は5月から「エスカレーターでは歩かないで」と呼び掛け始めた。車内電光掲示板でも「エスカレーターは歩いたり走ったりすると大変危険です。手すりにつかまってご利用ください」と表示。9月からは乗り口にポスターも掲示した。それでも効果はあまり上がっていない。交通局担当者は「ラッシュ時などに右側を歩く人がまだ多い。継続することが大事なので、今後も続けて行く」と定着を目指す。
名古屋市営地下鉄は04年7月からエスカレーターでの歩行を禁止した。ポスターや車内放送、ホームの掲示板などで立ち止まるよう呼び掛けているが、歩く人はなくならない。地下鉄を利用する会社員(40)は「右側を歩いてはいけないの? 歩いている人をよく見るし・・」。04年11月の市議会では、市議が「右側一列をあけるのが慣例なのに、なぜ突然歩行禁止なのか」と疑問を投げかけたほどだ。
《私は地下鉄を利用して通勤していたが、エスカレーターには殆ど乗ったことがない。並列した階段がない場所では不可能だが、階段を歩くことは格好の足腰を鍛えられるトレーニングになるからだ。時に二段ずつ、時に駆け足で、必ずつま先立ちで昇っていた。一日平均4時間眠るのが精一杯のころで、のんびりジムに通える暇なんかなかった。第一線を退いてからは走ることはしないが、それでも現在でも妻同伴でない時はこの年齢で必ず歩く。》
東京消防庁の調査では、都内で05年度にエスカレーター事故に遭った人は1199人。発生場所は駅が702人で最も多く6割を占める。うち333人が65歳以上の高齢者だ。消防庁は「エスカレーターは歩くとバランスを崩しやすく、他の利用者と接触する恐れがある。歩くことは避けるべきだ」と指摘する。前出の碓井氏も、「近年、エスカレーター上の歩行が話題になっているが、歩行者との接触による事故も報告されている。エスカレーターでの歩行を<危険>と感じる高齢者は65歳〜74歳で56・8%、75歳以上で76・9%にも上る」と。
エスカレーター建築基準法施行令では「幅は1・1メートル以下」と規定している。国交省建築指導課は「最大でも2人分の横幅しかない。右か左の手すりを必ず使えるように考えられている」と説明すうr。ただ「有効な取り締り方法がない以上、法律などで禁止することは難しい。国民の合意が得られるかどうかが分らない」という。
このほか、JR東日本はアナウンスで「ご注意ください」と注意喚起している。東京メトロはステッカーで「歩行は思わぬ事故のもとになりますのでご注意ください」と呼び掛けている。東京都営地下鉄も「駆け上がるのは危険です」と掲示しているが、歩行禁止を強制できないのが現状のようだ。
歩行禁止に踏み切ることについて日本民営鉄道協会は「車内での携帯電話同様、歩行禁止についても利用者の機運が高まる必要がある」と語るだけ。
《事故はすでに幾つも起っている。事故が事件にならなければ効き目はないだろう。ここで、体験談を一つ。
通勤でない年齢になってからだが、妻同伴でエスカレーターに乗った時だ。通勤で通い慣れた乗り物だった。何時も階段を使っていたからエスカレーターを利用するのに言わずとも出来上がっている習慣があることを知らないまま、妻の横に並んで立っていた。途中通行のためのフロアがあり、踊り場風に二段につながっているエスカレーターだ。毎朝駆け足で昇っていた階段だった。一基は精々6、7メートルの二基続きだ。階段を挟んで両脇に上りと下りになっている。「ちょっと退いて」後ろから男の声だ。「ここは歩くところじゃない、歩くんだったら階段を上ればいい」私はつけんどんに返事していた。「皆んな歩いてるよ」「私は皆んなじゃない」それでも強引に男は私の横を通り抜けて昇った。
それで私が通さなければ事件になっていただろう。これは今から4、5年前の話だ。現在同じことをすれば「くそ爺い!」で、横腹を刺されているかも知れない。それほど東京の若い人間は殺気だっている。そのことがあってからだ、妻から「年なんだから、今に殺されるから、もう止めて欲しい」と頼み込まれた。それまでも何かにつけてマナー違反には口を出すことが多くあった。「降りる人が先だ!」電車やエレベーターで一喝したことも度々あったからだ。
日本民営鉄道協会がいう携帯電話のように、利用者の機運が高まるのを待っていては何百年経っても禁止に踏み切ることは不可能だろう。或いは法制化しても、破るのが好きな連中は、酒飲み運転も同じだが、後を断つことはないだろう。》
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
・T山県のステーションデパートにあるエスカレーターの横に『エスカレーターでの遊びは危険です』と書かれているポスターが貼ってありましたけど・・。
投稿: 赤森 | 2010年6月13日 (日) 14時18分