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2007年10月 2日 (火)

息子・娘が高齢の親を虐待

『高齢者虐待』、というものの、その内実は子による親への虐待が半数を占める実態が明らかになった。メディアは子による虐待を副題(半数が息子・娘)に書いているがそのような生易しいことではない。

高齢者への蔑視は生活苦に喘ぐ若者たちが、通常に高齢者社会への緒施策からくる被害者意識として抱いていることは、日常の言説でも十分に読み取ることができる。卑近な例では、この老人のブログにも、「独断と偏見」のブログであることを謳っているにも拘わらず、それも理解できないで、口を極めての罵りのコメント(早く死ね、死ね、を100以上も書き連ねて来るものがいる)をよこす若者もいる。

敗戦後、目上を敬う(これも時代錯誤と罵られそうだが)心や礼儀、道徳は麗しい日本人の心からは疾うに消え失せた。敗戦の責任を背負って荒んだ心で日本の土を踏んだ帰還兵たち、戦争が終わったことを歓びながらも国を護り切れなかった帰還兵の受け入れに、何らかの抵抗を持って迎えることになった国民の多くの人たち。そのような人たちが敗戦後の渾沌とした日本を、手探りしながら復興に向けて脇目も振らずに必死になって働いてきた。だが、そのことが大事なものを次の世代に伝えることができなかったことの責任を負ってもいるのだ。

敗戦で、戦前には日本を訪れた多くの外国人が異口同音に口にした、日本人の優しさ、遜譲の精神を何処かに置き忘れることになった。西洋に追いつくことを目標にした戦前の日本の教育は、一気に世界に類のない高水準を誇っていた。幼い子どもたちにも理解できる平易な‘修身’という名で人としての基本や、社会生活に必要なルールを学んだ。親や年長者を敬うことは小さい頃から教えられた。人に迷惑を掛けないこと、困っている人には親切にすることなども親による家庭教育や躾で自然に身についた。

問題は、教育勅語や青少年学徒に賜わりたる勅語というものがあった。特に男はみな、大きくなったら天皇陛下のため、御国のために戦うんだということが柱になっていた。敗戦は、その教育勅語の否定、教育の否定、神を否定し、権威を否定し、日本の歴史を否定して再出発した。封建制度の上で安泰であった男尊女卑は崩れ、家族制度が崩壊した。

これから先は何度も取り上げているが、親を捨てることで成り立っている現在の婚姻のあり方が、一層の拍車を掛けて親・子・孫で成り立つはずの家族の団欒が失われ、親子の愛情は希薄なものになっていった。それをもう一つ決定付ける要因に、高齢化社会の問題が加わったのだ。早くから核家族を営み、親の家へは年に1度か2度顔を見せ、手土産で無沙汰を誤魔化す。愛情の交換などできるはずもない。そのようにして年とともに親は疎外されて行く。親は息子や娘に老後の面倒を看てもらいたいと思っても、口に出して話し合いができるような心のつながりは疾うになくなっている。子は頭もぼけ、身体も弱くなってきびきびと動けなくなった親は足手纏いになるだけの存在に変わっているのだ。年老いた親への虐待が始まる。親が子に継がせる財産や遺産があれば話は別だ。

毎日新聞(9/22)から
家族や親族による65歳以上の高齢者への虐待が全国で昨年度1万2575件に上ることが21日、厚生労働省が行なった高齢者を対象とした虐待調査(速報値)で分かった。昨年4月施行の高齢者虐待防止法*に基づく初の調査になる。家族・親族による虐待では、8割以上は同居の家族からで、被害者の約6割は介護が必要な認知症の高齢者だった。在宅介護の難しさが家族を追いつめ、虐待に発展していく実態が浮かんだ。

 *高齢者防止法 ‥ 05年11月に議員立法で成立。施設従事者に虐待を発見した場合の通報を義務づけ、家庭内の虐待でも通報や早期発見の努力義務を課した。命に危険が及ぶ恐れがある場合、市長村長に立ち入り調査の権限を与えている。厚生労働省が毎年度、都道府県から件数と対応報告を受け公表することを決めている。

家族から虐待を受けた高齢者は、女性が77%と多く、80歳以上が約5割を占める。67%が要介護認定を受けており、認知症の判定では62%が介護が必要な「日常生活自立度2」以上だった。

虐待をしていたのは、半数が息子(37%)と娘(14%)で、配偶者は19%。身体的虐待が64%と最も多く、排泄の失敗を責めるなどの心理的虐待が36%。お金を渡さないといった経済的虐待や介護放棄も2割以上あった。虐待に気づいて市町村の窓口に通報したのは、ヘルパーなどが4割以上を占め、本人からの相談は12%にとどまる。

発覚後の市町村の対応では、介護施設や病院への入所・入院などで家族と分離したケースは36%。4割近くは「助言・指導」や「見守り」しかしていなかった。調査は施設内での虐待についても行なわれ、53件の虐待が確認されたという。

老年精神医学を研究している松本一生・大阪人間科学大教授の話「気をつけなければならないのは、悪意はないのに精神的に追いつめられた介護者の虐待もあることだ。重要なのは犯人探しではなく、追いつめられた介護者を社会がどう支援するかということだ」と述べた。

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