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2007年10月11日 (木)

学生「未加入者に不支給」確定 - 2 -

 全国9地裁に起された学生「無年金障害者*」訴訟では先月28日の初の最高裁判決で元学生側が敗訴しており、第3小法廷もこれを踏襲したかたちとなった。社会保障制度に関して国の裁量を幅広く認め、当時の国民年金法の規定も「著しく合理性を欠くとは言えず、不等な取り扱いとは言えない」と判断した。
 原告側は「20歳未満で障害を負ったら未加入でも支給され、20歳過ぎだと不支給なのは不平等」などと主張していたものである。

 * 無年金障害者 ‥ 国民年金未加入時に重い障害を負い、障害基礎年金(一般では月額8万2508円)を支給されていない人。
 1) 制度改正で強制加入になる前に障害を負った学生(推計4000人)や専業主婦(同2万人)
 2) 国籍要件撤廃前に障害者となった在日外国人(同5000人)
 3) 加入義務がありながら未加入・未納だった人(同9万1000人)など
1)は、05年に創設された特別障害給付金(1級で月額5万円)による救済対象で、今年7月現在、学生3737人、主婦3656人が受給している。

9日の第3小法廷の判決以前、同じく20歳以上の学生の国民年金加入が任意だった91年以前に、未加入のまま重い障害を負った東京、千葉、新潟の元学生らが、障害基礎年金の支給などを国に求めた2件の訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(津野修裁判長)は先月28日、いずれも上告を棄却していた。「法の下の平等に反し違憲」との原告側主張に対し、判決は「国の広い裁量の範囲内で合憲**」と退けていた。原告逆転敗訴の2審・東京高裁判決が確定した。

 ** 82年の最高裁判例「国民年金のような社会保障制度でどのような立法をするかは国会の裁量に委ねられている。」

全国9地域に起された学生無年金障害者訴訟で初の最高裁の判決であった。社会保障制度に関して国の幅広い裁量を認めた従来の判例に沿った判断で、残る7訴訟でも元学生側の違憲主張は退けられる見通しになった。

原告側は、当時の国民年金法を巡り
 1)同じ未加入でも、20歳未満で障害を負ったら支給され、20歳過ぎだと不支給
 2)同じ20歳以上でも、学生以外は強制加入なので原則支給され、学生は任意加入が必要
などの規定は「平等に反する」と主張していた。

判決では1)について、所得保障***の必要性が高い20歳未満の障害者に限り、保険料負担なしに支給する例外的な制度である、と判断。
    2)でも、保険料負担や加入の必要性・実益などを考えて学生に判断を委ねた仕組み、だと指摘した。いずれも「著しく合理性を欠くとは言えず、原告側が主張する差異は、不当な差別的取扱いとは言えない」と結論づけた。

 *** 「所得保障」とは老齢者、疾病者、母子など労働力あるいは所得能力を失った人たちの、一定の生活水準を確保するために国が保障することを言う。

原告は東京、新潟両地裁に訴えた男性5人(48〜40歳)で、1審は04年、「不平等の救済措置を怠った立法不作為は違憲」と述べ、1人、700万〜500万円の賠償を国に命じたが、2審は05年、請求を棄却し、原告側が上告していた。

一方、請求棄却の広島高裁判決が、9日の最高裁でも元学生側の上告を棄却したことで、違憲判決が出た東京・新潟・広島の3地裁の原告はいずれも全員敗訴したことになった。

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